異世界転移~俺は人生を異世界、この世界でやり直す~
代償と覚醒
「さて、返事が遅れたな祠の主。いかにも俺は百薬の水を求める者だ。そいつはどこにあるんだ?」
そう言うが、祠の主は返答をしない。やっぱりただじゃ教えてくれないか。
「分かってる。何か代償がいるんだよな?」
「いかにも。百薬の水は神聖にして生きた人間が本来得るべきものではない」
これには返答するんだな……ずいぶんと厚かましい祠の主だ。しかし生きた人間っていうのはなんか引っかかるな。ということは……。
「ほしいのは俺の命ってことか?」
「否。人間の命などというものに価値は無い」
あの言い方から察するにそういうことなんだろうと訊ねてみたが、祠の主はそれを否定してきた。ちょっと理解できないな。
「じゃあ一体何を求めてる?」
「我が欲するは汝の持ちし深層魔術。」
まさかのワードだ。
「……深層魔術?」
あまりにも意外な答えだったので再度聞き返す。
「然り」
肯定か。しかし深層魔術が代償だと? どういう事なのかまったく分からんな。
「なんでまた深層魔術なんだよ」
ダイレクトに質問をぶつけると、祠の主は言葉を続けた。
「深層魔術とは人ならざる神の使者。各々は霊魂と等しき影。この祠はかような者どもを解き放ち清適を与えるのを大義とするのだ」
ちょっと意味がよく分からないな……後半とかすっかり頭から抜け落ちたんですけど。
「よく分からないけどまぁいい。つまり深層魔術をお前にやれば百薬の水がどこにあるか教えてくれるんだな?」
「然り」
恐らくこいつに深層魔術を与えたらもう俺は創造を使えなくなるだろう。それが何を意味するのか、少なからずこの世界で生きていくのに難易度は上がるかもしれない。でもそんな事はとるに足らない事だ。元々命など捨てるつもりで来ていた。生きる選択をもらえるだけでも十分ってもんだ。迷うことは無い。ティミーを助けるために俺は創造を捨てる。
「分かった。深層魔術と引き換えだ」
「良かろう」
すると、目の前に彫られていた像が急に青白い光を帯びだした。
瞬間、世界が真っ暗になったかと思うと、俺の周りは無数の光る点が覆い尽くす。その光景はまるで宇宙のようだ。その中で、一際明るく光る点があった。
   それを何を思うでもなく見ていると、そこからこちらへ何かが近づいてきていた。
それは虎。白銀に輝くその身体は何やら心を落ち着かせる。
間もなく虎は俺を突き抜け通り過ぎると、辺りはいつの間にか宇宙のような景色から元の洞穴に戻っていた。しかし先ほどとは違い目の前に彫られていた像は無くなり、代わりに空間ができていて大きめの水たまりがあった。水は若干光を帯びていて、どこからか湧き出しているのだろうか? その中心ではぐつぐつと煮えたぎるように泡が現れたり消えたりしている。
その様子からすぐに百薬の水だと確信し、そそくさとハイリからもらった小瓶にその水を注ぎみ、ポケットの中にいれた。
さて、あとはティミーにこれを飲ませるだけだ。ハイリもあの岩場でとっくにゴーレムを片付けて待っているだろう。
岩場の近くまで戻ると予想以上に敵は強かったらしい、激しい音がしていた。
すぐさま岩場まで駆けつけると、ハイリが三体のゴーレムと対峙していた。ハイリはその三体を相手に何やら魔術を放つと全員粉々に砕け散る。
どうやらやったらしい。元々八体くらいはいたというのに流石ハイリというべきだ。ただ少し違和感を感じたのは気のせいか?
「ハイリ!」
「来るな!」
ハイリの元に行こうと名前を呼ぶと、思い切り拒まれてしまった。
ふと砕け散ったゴーレムの跡を見ると、その岩の破片は宙に浮くと、急速に一か所にどんどん集まり、先ほどよりもかなり大きいゴーレムへと姿を変えた。そしてこれを見て違和感の正体が分かった、先ほどの三体のゴーレム、最初のよりもでかかったんだ。恐らく今のように復活してそうなったのだろう。
「アキ、水は!」
訊かれたのでポケットから小瓶を取り出し、それを上に掲げてちゃんと持っていることを知らせる。
「分かった! 早く行け! ここはまかせろ!」
ハイリならいける。今度は素直に言うことに従うことにし、ゴーレムからは距離を保ちながら元来たであろう道まで走っていく。
しかしふと鳴り響いた地響きの音にその足を止められる。
先ほどの所を振り返ってみると、ハイリが岩にたたきつけられるところだった。かなりボロボロになっていることから大きな威力の攻撃を当てられたと思われる。
たまらずゴーレムの背後まで走ると、短剣を構え一発クーゲルをお見舞いした。
効果は無かったようだがゴーレムの気がこちらにいったようだ。大きな体をこちらへと向けようとしている。
「アキ何してんだ!」
ゴーレムの向こうからハイリが叫ぶ声が聞こえる。
「ハイリこそ、そんな身体で何がまかせろだ! 友達がこんなになってほっとけるか!」
「こんなもんただのかすり傷だから大丈夫だ!」
「いいからちょっと黙れ!」
ついつい最後はえらそうに命令してしまった。でも確かにハイリの言う通り、何をしてるんだかな俺は。
とはいえあんなあられもない姿の女の子をほっとくわけにはいかないよな? いや待てよ、これだとなんか語弊を生むかもしれないが別にそういう意味じゃないからな、服がちょっと破れてエロいとかそんなこと一切思ってない! そもそもハイリは元々露出度が高かったわけだしもう慣れてたよ! ……そうだよ、最初は若干エロい目で見てましたよごめんなさい!
まぁそんなことはどうでもいい。ハイリも言ってた通り、やっぱり炎じゃ相性が悪そうだな……クーゲルもまったく効いてい無さそうだし。勿論創造も無い。さてどうするか。短剣もあるけどあまり使えそうにないしな……。
一瞬変な事を考えもしつつも、しっかりと状況を見極めているところに、ゴーレムの大きな拳が俺の上に振りかざされた。
「やべ」
後方へステップしてそれを避けると、今度は正面から拳が飛んできたのでなんとか身体を横へずらしそれを凌ぐといそいそと間合いを取る。
避けれてよかった……火事場の馬鹿力と言うやつか、それか昔卓球とかチャンバラとかけっこうガチ勢だったおかげで反射神経は鍛えられていたか? 身体小さいし、後者の可能性は低い気もするけど。
まぁそんな事はどうでもいい、今は目の前の敵だよな。
「フェルドゾイレ!」
魔術を使い反撃を試みる。火柱はゴーレムの足元から上手い具合に立ってくれたがやはり効果は無しのようだ。
そうこうしてる間にもゴーレムは次の攻撃を仕掛けんとこちらの方を見る。
待てよこっちを見てる? そういやこいつの目はどうなってるんだろう。そこならもしかしたらダメージを与えられるかもしれない。しかも律儀にその目は光ってるし良い的だ。どうやら一つ目らしいし。
「クーゲル!」
目に向けて放つとゴーレムの顔付近に煙が立ち込め、より一層目の位置が分かりやすく光り、そこへ向けて持っていた短剣を投げると見事に命中させることができた。よし、高二病こじらせてあまり流行らないダーツでもやってみようと猛練習した黒歴史のかいがあったぞ!
「ガァァァアアアア」
突如、図太い音が耳をつんざく。
どうやら効果抜群だったようだ。
だが安心した一瞬の隙だった。ゴーレムは甲高い雄叫びをあげながら、事もあろうかハイリの元へ猛追、その厳かな拳を振り上げる。
「まずい!」
ゴーレムと言えば頭が悪いもんだよな……だとしても視力を失っただけで俺の場所も特定できない程とは!
激しい地鳴りと共に、砂煙の中からハイリの身体が宙に放り出される。なんとかその落下先に滑り込みなんとか自分が下敷きになることで落下時の衝撃をやわらげる。
「大丈夫かハイリ!?」
「直接当たりはしなかったから問題無いぜ」
   そう言うとハイリは力無く笑う。
声を聞けてホッとしたのと同時に、そのボロボロになった彼女の姿を間近で見るとプツリと何かが切れた。
「許さねぇ」
脳裏を駆け巡るのは破壊衝動。絶対に殺さないといけないという強迫観念。
なりふり構わず一人暴れている奴に向かって突進していく。この内から魔力があふれ出る感じ、一体何事だ。
「おいアキ!?」
急に野性的に動いたからか、ハイリが戸惑ったように俺を呼ぶ。でも構わない。
間合いを詰めつつ、ゴーレムが振り回す拳を難なく避けると、今覚えている魔術でも一番強力と思われるものを出す。
「フェルモストロヴィロス!」
ゴーレムを覆い尽くすのは紺色に激しく輝く炎の渦。その炎は勢いよく唸り声をあげるとゴーレムを跡形もなく灰にした。
片付いたのを確認し、少し茫然とした様子のハイリのところまで駆け寄る。
そう言うが、祠の主は返答をしない。やっぱりただじゃ教えてくれないか。
「分かってる。何か代償がいるんだよな?」
「いかにも。百薬の水は神聖にして生きた人間が本来得るべきものではない」
これには返答するんだな……ずいぶんと厚かましい祠の主だ。しかし生きた人間っていうのはなんか引っかかるな。ということは……。
「ほしいのは俺の命ってことか?」
「否。人間の命などというものに価値は無い」
あの言い方から察するにそういうことなんだろうと訊ねてみたが、祠の主はそれを否定してきた。ちょっと理解できないな。
「じゃあ一体何を求めてる?」
「我が欲するは汝の持ちし深層魔術。」
まさかのワードだ。
「……深層魔術?」
あまりにも意外な答えだったので再度聞き返す。
「然り」
肯定か。しかし深層魔術が代償だと? どういう事なのかまったく分からんな。
「なんでまた深層魔術なんだよ」
ダイレクトに質問をぶつけると、祠の主は言葉を続けた。
「深層魔術とは人ならざる神の使者。各々は霊魂と等しき影。この祠はかような者どもを解き放ち清適を与えるのを大義とするのだ」
ちょっと意味がよく分からないな……後半とかすっかり頭から抜け落ちたんですけど。
「よく分からないけどまぁいい。つまり深層魔術をお前にやれば百薬の水がどこにあるか教えてくれるんだな?」
「然り」
恐らくこいつに深層魔術を与えたらもう俺は創造を使えなくなるだろう。それが何を意味するのか、少なからずこの世界で生きていくのに難易度は上がるかもしれない。でもそんな事はとるに足らない事だ。元々命など捨てるつもりで来ていた。生きる選択をもらえるだけでも十分ってもんだ。迷うことは無い。ティミーを助けるために俺は創造を捨てる。
「分かった。深層魔術と引き換えだ」
「良かろう」
すると、目の前に彫られていた像が急に青白い光を帯びだした。
瞬間、世界が真っ暗になったかと思うと、俺の周りは無数の光る点が覆い尽くす。その光景はまるで宇宙のようだ。その中で、一際明るく光る点があった。
   それを何を思うでもなく見ていると、そこからこちらへ何かが近づいてきていた。
それは虎。白銀に輝くその身体は何やら心を落ち着かせる。
間もなく虎は俺を突き抜け通り過ぎると、辺りはいつの間にか宇宙のような景色から元の洞穴に戻っていた。しかし先ほどとは違い目の前に彫られていた像は無くなり、代わりに空間ができていて大きめの水たまりがあった。水は若干光を帯びていて、どこからか湧き出しているのだろうか? その中心ではぐつぐつと煮えたぎるように泡が現れたり消えたりしている。
その様子からすぐに百薬の水だと確信し、そそくさとハイリからもらった小瓶にその水を注ぎみ、ポケットの中にいれた。
さて、あとはティミーにこれを飲ませるだけだ。ハイリもあの岩場でとっくにゴーレムを片付けて待っているだろう。
岩場の近くまで戻ると予想以上に敵は強かったらしい、激しい音がしていた。
すぐさま岩場まで駆けつけると、ハイリが三体のゴーレムと対峙していた。ハイリはその三体を相手に何やら魔術を放つと全員粉々に砕け散る。
どうやらやったらしい。元々八体くらいはいたというのに流石ハイリというべきだ。ただ少し違和感を感じたのは気のせいか?
「ハイリ!」
「来るな!」
ハイリの元に行こうと名前を呼ぶと、思い切り拒まれてしまった。
ふと砕け散ったゴーレムの跡を見ると、その岩の破片は宙に浮くと、急速に一か所にどんどん集まり、先ほどよりもかなり大きいゴーレムへと姿を変えた。そしてこれを見て違和感の正体が分かった、先ほどの三体のゴーレム、最初のよりもでかかったんだ。恐らく今のように復活してそうなったのだろう。
「アキ、水は!」
訊かれたのでポケットから小瓶を取り出し、それを上に掲げてちゃんと持っていることを知らせる。
「分かった! 早く行け! ここはまかせろ!」
ハイリならいける。今度は素直に言うことに従うことにし、ゴーレムからは距離を保ちながら元来たであろう道まで走っていく。
しかしふと鳴り響いた地響きの音にその足を止められる。
先ほどの所を振り返ってみると、ハイリが岩にたたきつけられるところだった。かなりボロボロになっていることから大きな威力の攻撃を当てられたと思われる。
たまらずゴーレムの背後まで走ると、短剣を構え一発クーゲルをお見舞いした。
効果は無かったようだがゴーレムの気がこちらにいったようだ。大きな体をこちらへと向けようとしている。
「アキ何してんだ!」
ゴーレムの向こうからハイリが叫ぶ声が聞こえる。
「ハイリこそ、そんな身体で何がまかせろだ! 友達がこんなになってほっとけるか!」
「こんなもんただのかすり傷だから大丈夫だ!」
「いいからちょっと黙れ!」
ついつい最後はえらそうに命令してしまった。でも確かにハイリの言う通り、何をしてるんだかな俺は。
とはいえあんなあられもない姿の女の子をほっとくわけにはいかないよな? いや待てよ、これだとなんか語弊を生むかもしれないが別にそういう意味じゃないからな、服がちょっと破れてエロいとかそんなこと一切思ってない! そもそもハイリは元々露出度が高かったわけだしもう慣れてたよ! ……そうだよ、最初は若干エロい目で見てましたよごめんなさい!
まぁそんなことはどうでもいい。ハイリも言ってた通り、やっぱり炎じゃ相性が悪そうだな……クーゲルもまったく効いてい無さそうだし。勿論創造も無い。さてどうするか。短剣もあるけどあまり使えそうにないしな……。
一瞬変な事を考えもしつつも、しっかりと状況を見極めているところに、ゴーレムの大きな拳が俺の上に振りかざされた。
「やべ」
後方へステップしてそれを避けると、今度は正面から拳が飛んできたのでなんとか身体を横へずらしそれを凌ぐといそいそと間合いを取る。
避けれてよかった……火事場の馬鹿力と言うやつか、それか昔卓球とかチャンバラとかけっこうガチ勢だったおかげで反射神経は鍛えられていたか? 身体小さいし、後者の可能性は低い気もするけど。
まぁそんな事はどうでもいい、今は目の前の敵だよな。
「フェルドゾイレ!」
魔術を使い反撃を試みる。火柱はゴーレムの足元から上手い具合に立ってくれたがやはり効果は無しのようだ。
そうこうしてる間にもゴーレムは次の攻撃を仕掛けんとこちらの方を見る。
待てよこっちを見てる? そういやこいつの目はどうなってるんだろう。そこならもしかしたらダメージを与えられるかもしれない。しかも律儀にその目は光ってるし良い的だ。どうやら一つ目らしいし。
「クーゲル!」
目に向けて放つとゴーレムの顔付近に煙が立ち込め、より一層目の位置が分かりやすく光り、そこへ向けて持っていた短剣を投げると見事に命中させることができた。よし、高二病こじらせてあまり流行らないダーツでもやってみようと猛練習した黒歴史のかいがあったぞ!
「ガァァァアアアア」
突如、図太い音が耳をつんざく。
どうやら効果抜群だったようだ。
だが安心した一瞬の隙だった。ゴーレムは甲高い雄叫びをあげながら、事もあろうかハイリの元へ猛追、その厳かな拳を振り上げる。
「まずい!」
ゴーレムと言えば頭が悪いもんだよな……だとしても視力を失っただけで俺の場所も特定できない程とは!
激しい地鳴りと共に、砂煙の中からハイリの身体が宙に放り出される。なんとかその落下先に滑り込みなんとか自分が下敷きになることで落下時の衝撃をやわらげる。
「大丈夫かハイリ!?」
「直接当たりはしなかったから問題無いぜ」
   そう言うとハイリは力無く笑う。
声を聞けてホッとしたのと同時に、そのボロボロになった彼女の姿を間近で見るとプツリと何かが切れた。
「許さねぇ」
脳裏を駆け巡るのは破壊衝動。絶対に殺さないといけないという強迫観念。
なりふり構わず一人暴れている奴に向かって突進していく。この内から魔力があふれ出る感じ、一体何事だ。
「おいアキ!?」
急に野性的に動いたからか、ハイリが戸惑ったように俺を呼ぶ。でも構わない。
間合いを詰めつつ、ゴーレムが振り回す拳を難なく避けると、今覚えている魔術でも一番強力と思われるものを出す。
「フェルモストロヴィロス!」
ゴーレムを覆い尽くすのは紺色に激しく輝く炎の渦。その炎は勢いよく唸り声をあげるとゴーレムを跡形もなく灰にした。
片付いたのを確認し、少し茫然とした様子のハイリのところまで駆け寄る。
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