シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第141話】北の幸(行間)




 「フッフッフ……」

 闇の中でそれは蠢く。眼が開かれ、白い歯が覗く。

 「ようやく……、ようやく……」

 小さな声で、しかしハッキリと意志の籠った声。誰一人として他が存在しない空間において、それは呟く。

 「何故、何故わたしがこんな目に遭わなくてはならなかったの……」

 『何故? どうして?』といった疑問ばかりが脳内を駆け巡る。自身が何か失敗をしたわけではないのに、何故こんなことになっているのかという想い、焦りが募る。

 「考えるだけ、……無駄か。…………、はぁ」

 こういったとき、必ずこんな結論にしか辿り着くことが出来ず、残るのは溜息とちょっとしたやるせなさ。
 そうして、思考を止めたそれは再び沈黙を貫く。

 「……………………」

 闇の中を規則正しい呼吸音だけが漂っていた。が、

 「(ぐぅ〜)」

 静寂はそう長くは続かなかったのだった。




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