シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第94話】ショーとの任務




 お風呂でショーくんに泣きついちゃって、みんなに何があったのか、ショーくんが何かしたのか、なんて問い詰められちゃって……。結局、ある程度の事は話して納得してもらえたから良かったけど……。でも、アリスにはお見通しだったみたいで、ショーくんと夜抜け出してお風呂に入ったあとに問いつめられた。何か隠してることがあるんでしょー、って。

 アリスにはなんとなーく、何でも話せちゃうんだよね。ちょっと心を読まれるというかお見通しされてる、って感じることもあるんだけど……。とにかく彼女には嘘の必要が無かった。彼女ならきっと、あの話をしても受け止めてくれるだろうと思えたから。



______。



 「で、実際のところ何があったのよ。サニーが泣くなんてよっぽどの事じゃない」

 「わたしそこまで泣かないってわけじゃないんだけど……。ちゃんと人間の血が通ってるんだよ?」

 「ごめんごめん。じゃ、話を聞かせて」

 「うん……」

 ちょっとしたこんなやりとりの後、テレパスによる会話に切り替えることにした。あんまり他の人に聞かれて嬉しい話でもないから。


______。


 エリーゼお姉様と学校生活を送っている中、今年の春から弟と妹が入学してきた。試験を目の前で見てたけど、こりゃとんでもないのが来たぞ、なんて思ってた。

 弟や妹たちの成長だったり日頃の様子だったりを嬉しそうに話すお姉様を見て、わたしもちょっと興味が湧いてた。いつだったか1人で任務に出てたショーくんが危ない目に遭ってる所を、偶然わたしたちが助けたこともあって、そのまま気分転換兼ねてお茶しに行って。そこで話してるうちに皆意気投合しちゃって、今度一緒に任務に行く約束までしちゃってた。

 ちゃんと面と向かって歳の近い男の人と話すのなんてショーくんが初めてだったのに。

 うーん……、今思えばなんでそんな約束しちゃったんだろうって、当時の自分の心に疑問を覚えるよね。

 あ、ごめんごめん。ショーくんとの任務についてだね。任務は簡単。簡単と言っちゃ依頼者には申し訳ないんだけど……。内容は暗号化された機密文書の輸送。暗記した暗号をテレパスで相手先に伝えれば任務完了ってわけね。

 で、その任務にショーくんを同行させたの。表向きにはショーくんに経験を積ませるため、護衛のため。本心としてはただ、ショーくんともっと話してみたかったから。だからこの任務を受けた、ってのもあるね。

 任務自体は何事も無く済んで、取引先のご好意で宿をとってもらって1泊することになったの。隣町といえど結構あるし、他人に頼むくらいの距離だからさ。

 そんなこんなで2人で街を散策してる時に事は起きるの。旅の疲れを癒しませんか、って謳い文句を出してる整体屋さんがあったの。ショーくんは訝しげにしてたんだけど……、無料お試しって言われて、わたしはショーくんの制止を振り切る形でそれを受けたの。ショーくんも結局は付き合ってくれたんだけどね。

 施術室に移った後も、施術者は女の人だったから特に変な感じはしなかったし、その点ではショーくんも少しホッとしてたんだよね。でも、そこで出された水が……ね。一服盛られちゃったってわけ。

 「ここまでは大丈夫?」

 「わたしは大丈夫。サニーも無理はしないで?」

 「うん、ありがと。平気だし、むしろ聞いてもらった方が少しは楽になるかもしれないから……、続けるね」

 どんくらい寝てたのかは分からないけど、目を覚ますと施術部屋とは完全に別の場所に運ばれてて、男の人たちに囲まれてた。

 わたしは手首、足首を縛られた上にくつわを付けられてるような格好で床に転がされてた。服はまだ脱がされてはいなかったけど。

 さすがに、失敗した、やっちゃったな、って思ったし後悔した。ショーくんに悪いことしちゃったなって。ショーくんは無事なのかなって、このままわたしはどうなるんだろうって、不安で仕方がなかった。

 誘拐、監禁、拘束された状態で男の人に囲まれてる以上、自分が次に何をされるかはなんとなく察しがついてた。どうにか時間を稼ごうとして会話をしてみると、暗号化された機密文書についての情報を狙っていたらしかった。あと聞かされたのは、男の方には毒を盛ったのだ、という事だった。

 わたしは悔しくて、情けなくて、恥ずかしくて、苦しくて、申し訳なくて、泣いた。そんなわたしを見て男の人たちはニヤリと笑って、拷問を始めようか、と、話せば解放してやる、と言った。

 でもわたしは暗号そのものを記憶して伝えただけで、それを解読していたわけじゃなかった。でもそんな話は信じてもらえるわけもなくて叩かれたり殴られたりした。それでもわたしはどうにも出来なくて、ただ黙ってた。

 そしたら今度は服を脱がされて下着だけ残された。他は破り捨てられたんだ。ショーくんと出掛けるってなって、気合を入れた下着だったから余計に恥ずかしくて死にたくなった。

 もうこのまま2度と誰にも会えないまま、死ぬまで侵され、冒され、犯され続けるんだと思ったらもう何も考えられなくなっちゃって。

 そしたら突然物凄い音がして……。

 「助けが来たんだ?」

 「うん。______ショーくんが来てくれたんだ」




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