AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と育成イベント終盤戦 その04
≪試合終了! 勝者──ナース選手!≫
歓声と共にブーイングが上げられる。
だがその片方は、ナースに向けられているものではない。
次々とアイテムが俺の下へ飛来する。
そのすべてを風精霊に弾いてもらい、ナースが来るのを待つ。
『けいやくしゃー!』
「ああ、よくやったな」
『うんー!』
「これで残るは準決勝と決勝だ。だが、相手は強者揃い……本気を見せるときだな」
おー! という勇ましい返事を聴く。
ここまでナースは快進撃を繰り広げ、ちょうど二回戦を勝利したところだ。
球体の精霊ということもあって、一回戦は油断されて……二回戦は魔力にのみ対策が施された。
しかし、上級精霊であるナースにそんな付け焼刃の策が通じるわけもなく。
どちらの試合も勝利し、見事準決勝へ進出することが確定した。
『だいじょうぶー?』
「なんのことだ?」
『それー』
「…………」
今も降り注ぐアイテムの数々。
誰かが用意しているのかと疑問を思うほどに、ずっと落とされているのだ。
理由はとっくに理解していた。
ならば、俺は俺らしくあろうじゃないか。
語彙力だけでなくポージングに関する情報もあまりない俺なので、いつものように大袈裟に両手を広げると──
「ふははははっ! 精霊も倒せぬ雑魚が、ずいぶんと驕ったものだ! 所詮は祈念者、信念も覚悟も持たぬ低俗な人形……神の奴隷ごときが俺の道を阻むなど烏滸がましいわ!!」
清々しいほどのブーイング。
ナースに向けられていた歓声は、今や俺を罵る熱いラブコールになっている。
具体例を挙げるなら、ナースを解放しろ系の発言とかがあるな。
『だいじょうぶー?』
「気にするでない。貴様の契約者だぞ?」
『うんー……』
俺たちの会話が盗聴や読唇される心配は、予め防いであるので問題ない。
厨二病乙、といった発言も減ってきた。
この調子で勝ち進んでいけば、そのうち新しい二つ名を得ることもできるだろう。
「ナースよ、休息に向かおうか」
『うんー!』
投擲スキルで投げてくる奴も居るな。
結界が受けるダメージからそんなことを考えながら、俺たちは控え室に向かっていく。
◆ □ ◆ □ ◆
「まだ進化はせぬか」
『…………』
「構わぬ。結果がどうあれ、貴様は確実に強者との戦闘経験を積んでいる。あとは理想の形を定めるのみ……今のままでも充分に強いが、聖霊は確実に別の形が必要だ」
『うぅー』
ユラルは生まれた時からあの姿だったらしいし、ドゥルは人形に組み込んだので実際はどうか分からない。
だが精霊って、少なくとも上位の精霊って丸い球体のままじゃないだろう?
精霊王とかがただの球体です、と言われて大衆はそれを崇めたくなるか? いや、そうはならないだろう。
今の時代、スライムだって人化している。
そんな中、すでに人型などの特殊な姿を確立している精霊が今さら球体?
いちおうでも俺は【色欲】にして【傲慢】なる者──否が応でも変化はしてもらおう。
「どうなりたい、といった姿はないのか?」
『……たいよー』
「今と同じままでも成れる。もっと他に、理想の姿などだ」
『うーん……』
待てど待てども、ナースから明確な返答は聞こえてこなかった。
すでにナースは俺の契約者、そのことに苛立ちを感じることはない。
だがしかし、少しだけ寂しくなる。
「貴様には望むべき姿がないのか」
『…………うんー』
絞り出すような声が伝わってきた。
何がそうさせるのか、それは分からない。
だが思いだせば、その理由もどこかで教えてくれていたかもしれないと思う。
「貴様は何も思わない下級精霊だった。そんな貴様を拾ったのだが……今なお貴様には、当時の自分が照らし合うわけか」
『うんー』
「やはりか。さまざまなものを見せてきたつもりだったが、それでは貴様を変えるには足らなかったのだな」
太陽、というより日の出には満足してくれていたようだが。
あれと他の共通点を探した方がいいか?
『──ナース選手! 準備の方をよろしくお願いします!』
だが、それも一旦中止のようだ。
扉越しに聞こえるスタッフの声が、間もなく準決勝のスタンバイを要求してきた。
「ナース、今はまだいい。俺も焦りすぎたのかもしれない」
『けいやくしゃー?』
「貴様はまだ子供だ。契約者として、そして親としても俺が面倒を見よう。だがその対価は、貴様自身の努力で支払ってもらおう。俺にはできぬことを、行うことでな」
『うぅー』
そういえば最近は、分からないと言うことが無くなってきたな。
できるだけ自分で俺の言葉を解釈しようと励み、それでも理解できなかった場合のみ小さく唸り声を上げる。
これもまた、成長なのだろうか。
ずっとナースを見てきたお父さんポジとしては、喜ばしい限りである。
「さぁ、次は誰が相手であろうな。どのような敵であれ、俺が居る限り貴様に敗北など決してありえぬ!」
『おー!』
「行くぞ! 貴様の優勝という未来を、その手に掴むため! 俺の望むべきものを、奪い取るために!」
『おーーー!!』
そんな感じでテンションを高めながら、俺たちは控え室を出て待機場所へ向かった。
歓声と共にブーイングが上げられる。
だがその片方は、ナースに向けられているものではない。
次々とアイテムが俺の下へ飛来する。
そのすべてを風精霊に弾いてもらい、ナースが来るのを待つ。
『けいやくしゃー!』
「ああ、よくやったな」
『うんー!』
「これで残るは準決勝と決勝だ。だが、相手は強者揃い……本気を見せるときだな」
おー! という勇ましい返事を聴く。
ここまでナースは快進撃を繰り広げ、ちょうど二回戦を勝利したところだ。
球体の精霊ということもあって、一回戦は油断されて……二回戦は魔力にのみ対策が施された。
しかし、上級精霊であるナースにそんな付け焼刃の策が通じるわけもなく。
どちらの試合も勝利し、見事準決勝へ進出することが確定した。
『だいじょうぶー?』
「なんのことだ?」
『それー』
「…………」
今も降り注ぐアイテムの数々。
誰かが用意しているのかと疑問を思うほどに、ずっと落とされているのだ。
理由はとっくに理解していた。
ならば、俺は俺らしくあろうじゃないか。
語彙力だけでなくポージングに関する情報もあまりない俺なので、いつものように大袈裟に両手を広げると──
「ふははははっ! 精霊も倒せぬ雑魚が、ずいぶんと驕ったものだ! 所詮は祈念者、信念も覚悟も持たぬ低俗な人形……神の奴隷ごときが俺の道を阻むなど烏滸がましいわ!!」
清々しいほどのブーイング。
ナースに向けられていた歓声は、今や俺を罵る熱いラブコールになっている。
具体例を挙げるなら、ナースを解放しろ系の発言とかがあるな。
『だいじょうぶー?』
「気にするでない。貴様の契約者だぞ?」
『うんー……』
俺たちの会話が盗聴や読唇される心配は、予め防いであるので問題ない。
厨二病乙、といった発言も減ってきた。
この調子で勝ち進んでいけば、そのうち新しい二つ名を得ることもできるだろう。
「ナースよ、休息に向かおうか」
『うんー!』
投擲スキルで投げてくる奴も居るな。
結界が受けるダメージからそんなことを考えながら、俺たちは控え室に向かっていく。
◆ □ ◆ □ ◆
「まだ進化はせぬか」
『…………』
「構わぬ。結果がどうあれ、貴様は確実に強者との戦闘経験を積んでいる。あとは理想の形を定めるのみ……今のままでも充分に強いが、聖霊は確実に別の形が必要だ」
『うぅー』
ユラルは生まれた時からあの姿だったらしいし、ドゥルは人形に組み込んだので実際はどうか分からない。
だが精霊って、少なくとも上位の精霊って丸い球体のままじゃないだろう?
精霊王とかがただの球体です、と言われて大衆はそれを崇めたくなるか? いや、そうはならないだろう。
今の時代、スライムだって人化している。
そんな中、すでに人型などの特殊な姿を確立している精霊が今さら球体?
いちおうでも俺は【色欲】にして【傲慢】なる者──否が応でも変化はしてもらおう。
「どうなりたい、といった姿はないのか?」
『……たいよー』
「今と同じままでも成れる。もっと他に、理想の姿などだ」
『うーん……』
待てど待てども、ナースから明確な返答は聞こえてこなかった。
すでにナースは俺の契約者、そのことに苛立ちを感じることはない。
だがしかし、少しだけ寂しくなる。
「貴様には望むべき姿がないのか」
『…………うんー』
絞り出すような声が伝わってきた。
何がそうさせるのか、それは分からない。
だが思いだせば、その理由もどこかで教えてくれていたかもしれないと思う。
「貴様は何も思わない下級精霊だった。そんな貴様を拾ったのだが……今なお貴様には、当時の自分が照らし合うわけか」
『うんー』
「やはりか。さまざまなものを見せてきたつもりだったが、それでは貴様を変えるには足らなかったのだな」
太陽、というより日の出には満足してくれていたようだが。
あれと他の共通点を探した方がいいか?
『──ナース選手! 準備の方をよろしくお願いします!』
だが、それも一旦中止のようだ。
扉越しに聞こえるスタッフの声が、間もなく準決勝のスタンバイを要求してきた。
「ナース、今はまだいい。俺も焦りすぎたのかもしれない」
『けいやくしゃー?』
「貴様はまだ子供だ。契約者として、そして親としても俺が面倒を見よう。だがその対価は、貴様自身の努力で支払ってもらおう。俺にはできぬことを、行うことでな」
『うぅー』
そういえば最近は、分からないと言うことが無くなってきたな。
できるだけ自分で俺の言葉を解釈しようと励み、それでも理解できなかった場合のみ小さく唸り声を上げる。
これもまた、成長なのだろうか。
ずっとナースを見てきたお父さんポジとしては、喜ばしい限りである。
「さぁ、次は誰が相手であろうな。どのような敵であれ、俺が居る限り貴様に敗北など決してありえぬ!」
『おー!』
「行くぞ! 貴様の優勝という未来を、その手に掴むため! 俺の望むべきものを、奪い取るために!」
『おーーー!!』
そんな感じでテンションを高めながら、俺たちは控え室を出て待機場所へ向かった。
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