AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と情報収集 中篇
「うーん、まだ足りないや」
クラーレたちと逸れて活動しているのに、あんまり成果が無い。
ロクでもないからかいが起きる前に動いているんだから、さっさとこんなイベントは終わらせたいんだけど……。
「どうにも終わらない。どれだけ隠すのが巧いんだか、それともここいらの住民が愚直に動くのか……やれやれ、忙しいなー」
目的の場所にはたしかに人が居た。
これから動く算段を練り、どのようにして嫌がらせをしようかと企んでいたよ。
「誰も覚えていない。知っているのも例の人物が、頼んだ内容だけ」
なるほど、縛りプレーは本当に役立つ。
足りないものが具体的に把握でき、その力への渇望がより強く感じられる。
あらゆる状況に対応できるよう、そのうちすべての属性でいろんなことができるようにしておかないとな。
「う、うぅ……」
「あははっ、本当に誰も知らないのかな? 嘘つきは犯罪者だぞー?」
「し、知らない! 本当に誰も、アイツのことを覚えていないんだ!」
アピールするように、大声で叫ぶ代表者。
吐かせるために一番ダメージを減らしたからこそ、こいつだけ抵抗できるんだよ。
「ふーん。まあ、間違いないみたいだね。けどさぁ、別のことを忘れてないかな?」
「べ、別のこと……だと?」
「うん。どうして、襲うことを了承したのかな? 私は【傲慢】だからね。<正義>の名の下に、君を裁いてあげよう」
嗚呼、ここでゴーをカッコよく羽織れれば良かったのになー。
残念だが、聖・魔武具や神器も一部に縛りがかかっているのでそれはできない。
火属性で背後に演出を施し、戦隊ヒーローみたいに爆発を起こすのが限界だ。
「火炙りはもうやったからねー、次はもっと別のことをやってみようか」
「べ、別のことだと!?」
「代謝を過剰に高めれば、とっても苦しくなるんだってー。自分で試してみたい?」
「ひ、ひぃぃぃぃっ!」
とは言っても、ちゃんとエネルギーの問題に対処ができるなら平気なんだけどな。
脂肪が一瞬で消えてしまい、最悪ガリガリになる……魔法でやっている分、コントロールはちゃんとできるんだよ。
「うーん……早く教えてくれるなら、調整を努力しようと思えるんだけどなー。あっ、このままだと骨が見えるぐらいに、皮がすり減りそうかもねー」
「わ、分かった! 分かりました!」
「えっと、何が悪いのかな?」
「まま、まだ隠していたことがあります! だから、だから言いますのでどうか止めてください!」
さっきのも、油断させるためのブラフ。
クーを通じて技術を磨いていたお陰で、ある程度であれば見抜けるようになっている。
そんな男を吐かせるため、わざわざ脅しまでかけて下拵えをしたわけだ。
「内容によっては、ただスリムな体にするだけで済むかもねー。さてさて、どんなことが教えてもらえるのかな?」
悲鳴を上げる男を、俺はただ無機質な瞳のまま笑って眺める。
うんうん、ちょうどいい具合で恐慌状態に陥っているな。
さぁ、泣いて鳴いて啼いて哭け。
せめて亡くなる前に教えてくれよ。
◆ □ ◆ □ ◆
クラーレたち『月の乙女』は、ちょうど一グループに纏まっていた。
俺はそこへ赴き、ある報告を行う。
「──そんなわけで、ますたーたちに自由行動ができるようになったとお知らせするよ」
「また何かやらかしたんですね」
「なんのことだか分からないけど、私は悪いことはしてないよ」
そう、あくまで<正義>に準じた行動だ。
むしろ偽善らしく人を救えるわけで、説明すれば納得してもらえるかもしれない……当然、黙っておくけど。
「悪いこと、はしていないんですね。では、メルはいったい何をしていたんでしょう?」
「うーん、本当に知りたいのかなー?」
「……ロクなことじゃないんですね。ええ、気にしないほうが好さそうです」
「あれれ? てっきりますたーは、追及してくると思ってたのになー」
Sっ気があるクラーレだし、いつものように尋ねられると思っていたんだが……まあ、別にいいけどさ。
「聞いたって、教えてくれないじゃないですか。それなら無視して、言いたくなるのを待つ方が早いです」
「うーん、よく私を理解してるねー。そうだね、ますたーたちに自慢したくなったら教えてあげるよ」
「それがいつも突拍子もなくて、常識外れのものなんですよね……」
「ますたーといえども、なんだか失礼な台詞だよねー。さてさて、それよりも本題に入ることにしよっか」
これ以上このやり取りをしていても、なんだか俺の精神が傷つく気がしてきた。
話題を切り替えて、話す気が無かったことについても話すことにする。
「この町について、ますたーたちは何か思うことはあったかな? 問題になるような、少し変だと思ったこととかね」
「そうですね……視線が少し、気になりましたね。なんだか怯えているような、同情するような目でしたね」
「ふーん……まだそんなことをする人が残っていたんだね。ねえ、どこら辺にいたの?」
「何をする気ですか」
驚く様子もなく、淡々と訊ねてくる。
本当に、誰かに毒されちゃったのかな?
「……まあ、メルを止めようとしても止めれる人なんてここにはいません。場所は秘密ということで、許してください」
「はーい。なら、しょうがないかー」
訊きだすのは諦めよう。
おそらくだが、町のすべてがそうだったんだろうしな。
この町で情報を訊ける場所は、もう残り少ない……仕方ない、あそこに行ってみるか。
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