AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と一回戦第一試合 その04
二刀流の状態で、“斬々舞”を振るい続けるメルス。
これまでは使えなかった双剣系の武技も使用可能になるため、攻撃の幅はこれまでより格段に増える。
≪それにしてもアン様、“斬々舞”とやらに弱点は無いのですか? いくら繋げられるような武技しか使えないと言っても、アレでは終えた時が勝利となっていると言われても否定できませんよ≫
≪武技使用後の硬直、本来ならばそれが致命的な弱点とされます。繋げれば繋げるほど、失敗した時の反動が大きくなるということです……が、メルス様はそれすらキャンセルできますので、あまり意味はないかと≫
当初はチャルの能力でもあったそれをメルスが模倣したため、デメリットであったはずの武技使用後硬直も消滅してしまった。
……ただ、硬直の長さに応じて魔力か気力の消費が解消に必要なので、そう何度も使えるわけではない。
≪つまり! 本当にデメリットは存在しないというわけですね? ウィーゼル選手、どうして対応できているのでしょうか≫
≪彼女の職業で『大将軍』は、戦を先読みして自軍に勝利を齎すための補正が多く存在します。メルス様の未来眼同様、集めた情報から未来を演算できるというわけです≫
≪なるほど、メルス様の動きを視てどの武技が来るかを予測しているのですね≫
ウィーゼルはまさに、アナウンスが告げた通りの闘い方をしていた。
予測線が走り、予想されるメルスの攻撃の軌道を表示する。
そこから派生する武技の軌跡を記憶から呼び起こし、対応する武技を見つけだしてそれ相応の対処を行っていく。
「双剣になったらすぐに音を上げると思ってたんだが、存外粘るな」
「……そう簡単に、負けてなるものか」
だが、双剣になって以降ダメージを負うことが増えてきた。
剣で捌くことも間に合わず、回避行動を取る前に傷を付けられてしまうからだ。
「ほい、刺突剣」
「くっ」
「少々動きが超人染みてるから、あんまり好きじゃないんだけどな」
刺突剣の武技“前飛跳躍”と“後飛跳躍”が巧みに発動される。
発動ごとにメルスの体は前か後ろにフェンシングの構えをした状態でジャンプし、元居た場所から少し離れた場所に着地する。
それがあまりに唐突に起きるため、ウィーゼルは対処に追われていた。
「連続使用をすればするほど、少しずつだが失敗する確率が上がるんだよな。まあ、全部マニュアルでやればこそのリスクだな」
本来の用途では、それらを延々と使用することは無い。
あくまで移動用の武技で、それらには与ダメージが設定されていないからだ。
メルスもまたそれらを移動用の武技として使っているが、その不自然な構えのまま刺突系の武技を発動して上手く繋いでいる。
短剣や薙刀など、前を突くような動作のある武器はたくさんあるからだ。
≪おっと! ここでウィーゼル選手の持つ剣から凄まじいオーラが噴きあがります!≫
≪このままでは、メルス様のペースで闘い続ければいけない。それが危険だと感じ、切り札の一つを開いたのでしょう≫
ウィーゼルの握る剣は、亡国セッスランスで祀られていた宝剣である。
ただ戦い抜くことだけに特化したその宝剣は、振るわれ始めた頃は本当に何の装飾もされていない無骨な剣だった。
しかし、王としての面目などを家臣から何度も注意され、ようやく装飾品が鞘に施されるようになる。
……だが、それでもセッスランスの王たちの業は深い。
鞘に仕込んだ装飾もまた、戦闘に必要となるナニカを補うための効能が秘められた特殊な鉱石であるからだ。
「──“生き抜け”」
「え、何それ?」
「鞘に仕込まれた能力を解放した。私はそれにより、能力が飛躍的に向上する」
「うげっ、やば──!」
メルスの剣激に対応する速度が上がる。
ギリギリで噛み合わせていた剣はしっかりと芯を捉え、甲高い音を再び鳴らしていく。
また、鞘を介し剣に属性が付与される。
ウィーゼルの意思に合わせ、状況に応じた属性となっていく。
「けどまあ、負けるわけにはいかないんだよな。速度を上げるだけじゃ、たぶん対応されるだろう? なら、俺も切り札の一つを切っておいた方がいいか──“因子注入”」
すると、メルスの姿に変化が起きる。
白黒だった髪は輝く銀色に、耳は少し横に尖がり、瞳も髪と同様のものへ変色する。
体も少々華奢なものになり、骨格から……種族が変わったように作り変わっていく。
≪あ、アン様! あれはいったい!?≫
≪メルス様は外部から集めた因子を注入することで、己にその種族が持つ特性を付与することができるのです≫
≪そ、それであそこまで変わるのですか?≫
≪込み入った事情がございまして……因子をお使いになられたとき、なぜだか相貌まで変化してしまうのですよ≫
伝説級のスキルである<畏怖嫌厭>。
所持者の印象を極限まで貶め、その認識にまで干渉する呪いのようなスキルだ。
それを運営神によって強制的に付与されたメルスは、精神防御力や特殊なスキルを持たない者以外にはどういった理屈か恐れられ、嫌がられてしまう。
好感度、といった特殊なパロメーターも低いため、顔が気に食わないといった理由で絡まれてしまうこともあるぐらいだ。
しかし、(因子注入)や(異端種化)を使っている時のみ、その呪いのようなスキルの活動が停止する。
付与した際のやり方が雑だったのか、メルスという存在ではなく肉体を対象としたスキルとなっていたのだ。
そのため、他者の因子を取り込んでいる間は、いっさいの効果を示さない。
無効化が完璧でない者にとっては、メルスが突然変化したように見えただろう。
ただ、そのことを本人はまだ知らない。
彼は自身の容姿が劣っていると感じているし、事実現実の容姿はそう良くはない。
そう自分自身が捉えているからこそ、真実が見えていなかった。
そして、眷属たちもそれをわざわざ本人に告げることもない──容姿にのみ釣られるような者を、受け入れたくはなかったからだ。
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