AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と開催予告



 夢現空間 修練場


「……ぶっちゃけ、そろそろネタも尽きてきたわけだ」


 いや、“再生せし闘争の追憶おべんきょう”の話だぞ。
 前回魔物の群れを出したことから、分かっていた者もいるかもしれないが……何を必要としているかが、分からなくなってきた。


「と、いうわけで適当な相手と適当な感じで練習をしたい……俺はそういったはずだぞ」

「駄目か、ご主人?」

「いや、戦うこと自体は構わないんだが──数が、多すぎるだろ」


 暇人を、と募集したので数人で収まると考えていたんだが……その数が、数十を超えてしまうという事態に陥った。
 要は暇人じゃなくとも無理矢理暇な時間を作り、この場に馳せ参じたというわけだ。


「まあ、ほとんど自主的に働いてた奴だから何もツッコめないけどさ。なんか俺、ここまで人を寄せること言ったっけ?」

「『新作デザートをやる』とか言ってたわよね? 魔王様のアレって、大人気なんだからみんな来るわよ」


 リッカの台詞から記憶を辿る……ああ、たしかにそんなことを言った気がする。
 おやつのフォロワーは、俺のレパートリーの節操さも相まってかなりいるんだよ。


「じゃあ、デザートは今配るから、戦う気が無い奴は帰る……ってのも駄目か」

「せっかく集まったわけですし……いっそのこと、アレを決めてみては?」

「アレ? 眷属最強決定戦ぐらいしか浮かばないけど……アマルとかがいないぞ」

「居ても勝てませんよ。彼らは団体戦に置いておくとして、今回は個人の部を開くということで」


 知らぬ間に雑魚扱いをされるアマルたち。

 まあ、圧倒的パワーのソウとか嵌め技のアリィとかが居るからな。
 世界じゃトップ10とかに入っても、この場所だとかなり下だろう。


「それじゃあ条件──個人戦か団体戦、参加できるのはどっちか。団体戦の参加人数は最低二人、最大で四人までオッケーだ」

「となると、メルス様は団体戦の参加権を失うことになりますね」


 ……遠回しにボッチだと言われた。

 俺がこういうときに誰かを指定すると揉めるし、たしかに仕方ないんだけどさ。
 さっき挙げたソウとアリィ、それにプラス誰かを用意すれば優勝は間違いなしか。


「それと、人数に応じて能力補正を用意しておくよ。環境に関するデメリットは無し、メリットは有りだがその補正とは関係ない倍率での補正になる」

「はい! そのルールは絶対ですか!」

「イイ質問だぞ、ユラル。対戦者同士で決めればルールの一時停止も追加も可能だ。それと、あとで裏技が見つかったら見つかり次第修正となる……この意味、分かるよな?」


 息を呑む者や、すぐに思案に入る者など反応は眷属それぞれだ。

 要するに、一度限りのチートは許されるというわけである。
 それを突くか、正々堂々と勝利を重ねていくか……それは眷属次第だ。


「先に言っておくけど、俺はあの手この手で勝利を得るつもりだ。お前ら相手に正々堂々とかやってたら、間違いなく死ぬわ」

「おいおい、それをお前が言うのかよ。全員束ねてる主様がよ」


 顔にからかう気満々です、と書いてあるような黒森人カナタからのちょっかい。
 もちろん、反撃させてもらおう。


「黙らっしゃい。そういう台詞セリフを言うのは、こっそり育成しているスライムを処分してからの方がいいぞ」

「な、なぜバレた! ……じゃなくて、それとこれとは別の話だろ!」

「俺や眷属を騙せても、コアさんが騙されるわけないだろう。というか、いちおうは第二の主は俺だからな。さすがにあのスライムの復活は他の眷属にも影響が出る。ちゃんと報告を受けたぞ」


 ギャーギャーとダンジョンコンビが揉め始めるのは放置しておく。
 ……騒いでいるのは小さい黒森人だけで、白い森人はうふふと笑っているだけだが。

 ただ復活させるだけなら良かったんだが、図書館の資料を元に強化を図ろうとしていたのはアウトだったな。
 コアさんにバレないよう、ダンジョンコア無しでできる強化方法だけを取っていたのは正解だったんだが……それ以上に、自分への執着へ気づかなかったのが失点だ。


「さて、そこのムッツリエロフは置いておくとして、問題がまだある」

「景品ですね」

「……いや、それも考えてたんだけど今は違う。そっちは後日、開催日にでも。今日個人戦をやるのも無しで。なんだか準備をするだけで一日掛かるぐらい、面白い祭りにしたくなった来たからさ」


 会場はダンジョンを使えばいいし、その気になればすぐにでも始められる。
 だが、それでは少々味気ない。
 エンター性を付加して、民たちも楽しめるイベントにしなければ。


「……全世界、参加ですか」

「ああ、内輪でやるよりもっとグローバルにした方がいいと思ってさ……ある意味ずっと内輪だけど。ガス抜きにもなるし、条件を満たせば参加可能ってことにしておこう」


 レンが良いパスをくれたので、ついでに説明をしておこう。


「一定以上のレベル、または能力値があれば参加オッケー。それか俺か数人の眷属が許せばオッケーにする。もちろん、参加前に確認させてもらうがな」

「……女性限定?」

「なんでそうなる。男女も年齢も関係ない。そこに参加するだけのナニカがあると思ったなら、それで充分だ。ソイツが参加後に参加したことを後悔しないように、ちゃんと面倒が見れるならだが」


 そうなると、ステータスを統一しないといけないかな?
 パワー・イズ・ベストなソウですら技術を身に着けているわけだし、別に困らないといえば困らないんだよな。

 やれやれ、やることはいっぱいだな……。



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