AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と処女航海 後篇
俺も本当は酔いやすい体質なんだが、そこは{夢現反転}の効果で有効的に。
本来なら『意識希薄』や『思考負荷』などが付くのだけれど、逆に意識はスッキリとしているし思考も簡単に回っている。
余りすぎているので、少々別のことに使い潰しているぐらいだ。
「ますたーは酔わないんだね」
「不思議と酔わないんです。乗り物の中で読書やゲームを続けていたからでしょうか?」
「それで酔う人は、いつまでも変わらずに酔うからね」
むしろ、景色を見る方がいいし。
だから酔い組は、全員果てしない海をジッと眺めている。
決して、そんなやり方で治るほど酔いは甘くないのだ。
「──それじゃあ、わたしも行ってきます」
「はーい、行ってらっしゃーい」
大砲の元へ向かったので、魔物を撃ち殺すつもりなんだろう。
海蛇は旨いからな、あとで蒲焼にして食べてもらう予定だ。
「さて、どうしよっかな?」
酔い組を治すのもいいが、まだ習得していなさそうなので放置。
レベリングをしている者はそれぞれ集中しているので、邪魔をするわけにはいかない。
「──“幻影結界”“召喚・眷属”」
なので眷属を召喚してみることにした。
条件に暇な奴と絞りを入れてあるので、同じく暇な奴が呼ばれることだろう。
もちろん、『月の乙女』の者たちに美女が召喚されるところを見せたくはないので、最初は幻影で誤魔化しておく。
「……うわ、外れが出た」
「んっ……さすが主様。儂が好む最良な台詞での歓迎とは」
「まあ、それはいいや。今すぐ帰るか変身魔法で仔龍の姿になるのを受け入れるかさっさと選べ──時間切れだ、返還だ」
「一秒と無かったではないか……。無論、後者を選ぼう」
「チッ……じゃあそれで」
コイツの性癖、いい加減治らないかな?
ある程度落ち着くこともあるのだが、今回は求めていた顔だったので罵っておいた。
了承を得るとすぐに魔法を行使する。
イメージはイアと会った頃の幼龍。
ぬいぐるみぐらいの大きさだから、見せても揉めることはないだろう。
「ほら、これでできたぞ。会話をするなら念話か古龍語にしてくれ」
『ならばこっちじゃ』
「(俺はこっちで。一々切り替えてるとどこかで間違えそうだしな)」
『ぐっ、さすが主様。儂の気持ちを弄ぶのが上手いのう』
「(変なことを言うな。それより暇潰しにつきあってもらおうぞ)」
幻影を解除してソウを撫で始める。
さすがにここで逆鱗をしつこく叩く、などという行為はしない。
優しく丁寧に、鱗の向きに合わせて魔力を籠めて撫でる。
「(……なんか物足りなさそうだな)」
『なんというか、髄に届いていないという感覚じゃのう』
「(……ああ、そういうことか)」
原因はすぐに分かった。
なので撫では一度中止にして、先にそれをどうにかしていく。
『…………んんっ』
「(ほれほれ、ここがいいのか? ん? 嫌なら別の場所にするぞ)」
『も、もう少し、強く……ううぅ……』
「(はいよ、電気も少し混ぜるぞ)」
『た、頼む……強く、強く押してくれ……』
弱点看破と魔視眼を使い、指腹で押していくマッサージだ。
これからはプラスで雷属性を纏い、筋肉を和らげていく。
『ああっ……これだ、これがイイっ!』
「(おいおい、こんなんで満足するのか? まだまだお前を楽しませるためにたっぷりと用意してあんだぞ)」
『ま、まだあるのか……んぅっ!』
「(振動マッサージってのがあるんだよ)」
他には空気圧とかもあったっけ?
とにかく方法は盛り沢山。
ソウが満足するまでやり続けてみようか。
目の前には虚脱したソウが倒れている。
荒い息を整えるように吐いてグッタリと倒れ込むその姿は、疲労困憊と言えよう。
「メル、その子は?」
「ちょっと遊んでたんだけど、疲れて休んでるんだよ」
『ふっ……、遊ぶは遊ぶでも……弄ぶではないのか?』
「(黙れドM龍。最後のDX、もう一回やってもいいんだぞ?)」
『…………』
うん、性感看破はやりすぎたな。
解し終えた後に試してみたんだけど、シャインのとき以上の効能が出てしまったよ。
再び別の意味で荒い息を吐くソウ。
それを無視してクラーレと会話を行う。
「ますたー、レベリングは終わったの?」
「レベルは5上がったで、とりあえず別のことをしてみようかと」
「そっか。なら、シガンと代わってきたらどうかな? 操縦は色んなことに使えるし、覚えておいた方が便利だよ」
「そうですか……。なら、やってみますか」
上げとけば龍にも乗れるからな。
馬や機械……まあ、乗り物ならなんでもイケると思う。
『主様、儂に乗ればすぐに操縦など上がると思うが──』
「(お前がここにいることを、神に教えてやる義理は無い。それに、さすがに上がりすぎて違和感を感じるだろ。何事もほどほどが一番なんだよ)」
世界最強のドラゴンに乗れば、そりゃあ簡単に上がるだろう。
『ふむ……そういうものか』
「(ま、今は俺に撫でられることだけ考えていればいいさ。そのために呼んだんだ)」
『では、そうさせてもらおうかのう』
軽く目を瞑るソウ。
居心地良さそうにリラックスしているその体を、再びゆっくりと撫でていった。
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