AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と頭脳酷使
第一世界 天空の城
甘い花の香りが鼻腔を擽り、俺の瞼を自然な形で閉じようとする。
その衝動に抗うことなく、大きく息を吸って体の力を抜く。
「あー、頭脳労働しすぎた~!」
糖分が足りない! 甘い物が欲しい!
黄金の飴を取り出し、口に含む。
すると口内で甘さが弾け、疲れ切った頭を癒してくれる。
「ふひ~、やりすぎは禁物だな」
思考が正常に動くことを確認してから、ため息を吐く。
……そもそも、天才に頭脳で挑むなんてのが間違っていたんだ。
「けどいつか、やらなければいけないと思っていたんだ。今回は無しにできたが、いずれそうせざる負えなくなるんだ……眷属や国民たちから、命を預けられて行う戦争を」
それが嫌だからこそ、何重にも策を編んで拒んでいる。
しかしだからといって、いつまでも逃れられることでもない。
決断しなければならない──来たるべきその刻までに。
「──って、カッコ良く言えたら、俺もまだまだやっていけるんだけどな」
はい、茶番に付き合って頂きありがとうございます。
俺にシリアスは似合いませんし、これからも似合わせる予定はございません。
軍師を呼んだのは、俺に足りない力を補うためだ。
召喚獣を出すだけ出しといて、後から重ねて命ずるのは面倒臭い。
「そんな貴方にお薦め──いつでも働く軍師タイプの英霊様! 皆様ご家庭に一軍師! いかがですか?」
気分は某テレビ通販の社長さん。
声帯を弄って高めの声で発声する。
面倒事を押し付けるため、頭をフル回転させてスカウトに挑んだというわけだ。
結果的には、召喚した魔物の知識を豊富に有していたのでギリギリ勝てたが、もし互いに人を使ってアレをやっていたら……まあ、俺が負けていただろうな。
「俺に王の器なんてないし、そもそも人を動かすだけのカリスマも無い」
恐怖政治による圧政なら、いつでも好きな時に一度だけできるんだけどな。
国民にそんなことさせるわけにもいかないので、やる気はまったくないんだが。
「……さて、そろそろ頭も回ってきたし、活動を始めるとするか!」
マーキングをした対象の位置座標を読み取り、時空魔法で移動を行う。
さて、今日は何があるのやら。
◆ □ ◆ □ ◆
スロート
「次の町に行くの?」
移動した先はギルドの中。
隠れている真っ最中だった、ギルド『月の乙女』の皆様方の所であった。
何をするかが決まったタイミングで、どうやら来たようだ。
「ここから南に向かった所にある、サルワスという港町です」
{夢現記憶}にアクセスし、すぐさま情報を確認して視る。
……ふむふむ、海道を通った先にある場所で、海産物がいっぱい食べられると。
俺、魚より肉派なんだけど。
「また、海道の無料券が貰えたんだっけ?」
「はい、取り逃がしたことも含めて全て報告したんですけど、貰えました」
「レイドボスを追い払うってだけで、こっちの人から見ればありがたいことよ」
死に戻りが無い。
一度きりに人生を歩む自由民たちには、プレイヤーほどレベルの高い者は多くない。
今回彼女たちは、高レベルの者が大量に必要になる戦いを勝手にやってくれた上、追い払ってくれたというのだ。
呼ぶための金やアイテムを大量に用意する分の金を考えれば……まあ、無料券を渡すのは妥当なところだろう。
「まあ、それなら納得だね。今すぐに行く予定なの?」
「いえ、もう少しだけこの町を観光してからですね。メルもいっしょにどうですか?」
「うーん、もう結構行ってるからねー」
実はレミルとのデート以外にも、結構な頻度で町を歩かされた。
俺としては楽しかったが、別の場所でも良かったでは? というのが感想である。
「……そういえば、気になっているのだけれど。一つ、訊いてもいいかしら?」
「どうしたの、シガンお姉さん?」
「『赤ずきん』の本が行方不明になったって情報が掲示板にあったんだけど……メル、何か知ってるわよね」
「なんで、確定済みで話してるのかな?」
「私たちが失敗した後、そしてユウさんに渡した後で無くなったからよ」
そりゃあバレるよな。
ユウには自慢したんだが、外部に情報を漏らしていなかったようだ。
ナックルには連絡するように言ったので、まあアイツが火消しに回るだろう。
「あの本は、『ユニーク』のメンバーの一人が終わらせたから、今はそこのギルドハウスに置かれているよ」
「あれを……クリアしたんですね」
「具体的に誰か、訊いてない?」
「それは分からないよ。ユウに訊いてみれば分かるんじゃないの?」
俺も、本当に誰がもっとも活躍したお蔭でクリアしたかは分からない。
自身の才に気づいた赤ずきんの少女か、自らの餓えに抗った狼人の男か、いろいろな場所で暴れ回った愚鈍な偽善者か。
一番の要因が誰か、と訊かれても回答できないからな。
「ま、今度見にいきなよ。ユウの許可があれば、ギルドに入れるんでしょ?」
「い、行っていいんですか?」
「それを決めるのは、私じゃなくてユウだけどね。連絡は取れるんだし、自分たちでやってみなよ」
そう教えると、なんだかやる気に溢れたクラーレの瞳が、キラキラと光るエフェクトを放ちだした気がする。
周りを見れば、全員が似たような感じで高揚しているんだが……『ユニーク』のギルドハウスってそんなに凄い所か?
前にユウが『師匠を用意してくれた建物の方が、居心地いい! ギルドハウスも今度は師匠が造ってよ!』とか言ってけど……。
ま、別にいっか。
困る案件は全部、便利屋任せにしておくのが正しいし。
「AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
201
-
2,400
-
-
1,392
-
1,160
-
-
1,798
-
1.8万
-
-
270
-
1,477
-
-
408
-
439
-
-
59
-
430
-
-
2.1万
-
7万
-
-
115
-
580
-
-
176
-
61
-
-
83
-
2,915
-
-
432
-
947
-
-
4,126
-
4,981
-
-
86
-
893
-
-
572
-
729
-
-
2,534
-
6,825
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
450
-
727
-
-
756
-
1,734
-
-
66
-
22
-
-
1,658
-
2,771
-
-
5,039
-
1万
-
-
2,178
-
7,299
-
-
147
-
215
-
-
428
-
2,018
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
2,799
-
1万
-
-
1,059
-
2,525
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
3,152
-
3,387
-
-
164
-
253
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
614
-
221
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
1,301
-
8,782
-
-
614
-
1,144
-
-
1,295
-
1,425
-
-
6,675
-
6,971
-
-
1,000
-
1,512
-
-
265
-
1,847
-
-
29
-
52
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
3万
-
4.9万
-
-
116
-
17
-
-
86
-
288
-
-
14
-
8
-
-
65
-
390
-
-
398
-
3,087
-
-
76
-
153
-
-
47
-
515
-
-
10
-
46
-
-
218
-
165
-
-
1,863
-
1,560
-
-
187
-
610
-
-
6
-
45
-
-
62
-
89
-
-
104
-
158
-
-
108
-
364
-
-
23
-
3
-
-
2,951
-
4,405
-
-
4
-
1
-
-
89
-
139
-
-
71
-
63
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
42
-
14
-
-
215
-
969
-
-
213
-
937
-
-
62
-
89
-
-
7,474
-
1.5万
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
33
-
48
-
-
27
-
2
-
-
4
-
4
-
-
3,548
-
5,228
「SF」の人気作品
-
-
1,798
-
1.8万
-
-
1,274
-
1.2万
-
-
477
-
3,004
-
-
452
-
98
-
-
432
-
947
-
-
432
-
816
-
-
415
-
688
-
-
369
-
994
-
-
362
-
192
コメント