AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と忘れていた案件
夢現空間 自室
今さらだが、俺が放置している案件はいくつほどあるのだろうか。
時々忘れてしまうが、{夢現記憶}があるので思い返そうとすればすぐに思い出せる。
「プレイヤーの眷属の願い事は叶えたし、ギルドはスルーでよし。アッチ系の眷属の願いは回復すれば検討する。ずっと前に出会ったプレイヤーは俺を呼ばないし、裏関係からの連絡はまだない。あとは……聖炎龍を縛る契約とあの世界の選ばれし者たち、それに亜空間で呼んでいた声の主か?」
他にも結構あるが、まずはこれぐらいか。
いちおう対人関係のものだけを選出して思いだし、口に出して頭に認識させる。
……意外とあるようだ。
俺の今のコミュ力ならば、現実でもモブDからモブCにランクアップできるかもな。
「他には……赤の世界で国を建てて教会を調べ、いちおう別世界の探索。それに神の捜索とクソ女神が用意したクエストを破壊。……うちの世界の防衛強化と訓練もしばらく重ねていこうか」
これは眷属に協力を願う案件だ。
というより、眷属主導の元すでに一部は実行されている。
運営神の目を掻い潜るために隠蔽工作をしているので、多少時間がかかっているが……ある案件はそろそろ目途が立つらしい。
防衛強化と訓練は……うん、俺がやるか。
「あとは俺個人の問題。{感情}の侵蝕と原因である大神に関する情報。戦闘面なら新武技と魔法の開発、武技のなぞりもやって魔法の新しい使い方も使えるようにする。スキルの方もやらないとな……」
これは特に焦ってもいない。
焦らずとも、日々の積み重ねがいつかその成果を示してくれるからな。
最近精霊に関する検証を終え、そろそろ聖霊を入れておけるアイテムが完成しそうだ。
そうやって何かしら、時間を費やせて物事に励めば結果が出ている……現実とは大違いだよな。
「この世界で死んでも、俺は死なない。記憶が月に送られることも、復活に時間が掛かるということもない。一瞬で可能だ。あの邪神の使徒との戦いでよく分かったな」
クラーレが遭遇した熊や男、あれらは邪神の使徒であった。
(鑑定眼)で視ることはできなかったが、リオンがあとでそう教えてくれたので間違いないだろう。
クラーレを庇い、一度首を落とされた俺だが……(再生の焔)はバッチリと発動した。
残念ながら死ぬと強くなる効果は発動しなかったのだが、それでもしっかり蘇った。
──当然、(再生の焔)以外にもそのときは死亡対策を使っていたがな。
眷属は望まないが、死ねば発動するスキルや魔法は大量に存在する。
本当に必要なとき、俺は迷うことなくそれらを使うだろう。
「さて、この中からどれに着手しようか。浮かばないなら生産にすればいいし……はてさて、どうするべきか」
俺が遊びに行って邪魔にならない場所の中で、俺を必要としている場所……はないが、それでも暇潰しを探したいからな。
「……ま、散歩でもするか」
全く関係ない第三の選択を選び、俺は外の世界に転移した。
◆ □ ◆ □ ◆
始まりの町
何もないときは歩くのが一番だ。
意識を空っぽにしていても、歩くことはたいていの者には可能だしな。
日本人が多いので、譲り合い精神を発揮してフラフラしていても歩くことができる。
「――そしてそうでない者も、ちゃんといるのが現代日本である」
「あ゛? 何言ってんだよ、ガキが」
「気になさらないでください。貴方がたのような人が、プレイヤーとして認識されるのが少々不快だと言っただけです」
「! ……ふざけやがってこのガキ! こっちが黙って聞いてやりゃぁ、冷静ぶるのも大概にしやがれ!」
そもそも、今の俺は凶運であった。
あるときは強者に挑まれ、あるときは運営神に狙われ、あるときは大悪魔を呼びだす。
不幸、とは少し違うが戸惑うようなイベントが起きやすい体質となっている。
望まぬ展開に遭いやすい、と言えば真意の数割は伝えられるだろう。
面倒事でもよくある、荒くれ者との接触イベント……ハァ、厄介なもんだな。
仲良し三人組のプレイヤー、装備品に少し遠い場所で倒せる魔物の素材が使われているので少しはやれるのか。
ちょっと有り余った力を乱雑に振るって周囲の者に多大な迷惑をかけている。
俺が独りで殲滅しても良いが、それは少し目立つのか……。
「誰かー! 助けてくださーい!」
「ちょ、おまっ!」
「おいおい、どうしたどうした?」「ルールも守れない馬鹿が子供に絡んでんだよ」「小さいけど……プレイヤー? 寄ってたかって許せないわ」「よし、ちょっと行ってくる」
「――チッ、覚えてろよ!」
そんな捨て台詞を置いて、三人組はどこかへ消えていく。斥候職に就いたプレイヤーが追跡に向かったのですぐにバレるだろうが。
さて、近づいてくるプレイヤーに状況を話してアイツらを庇わないと。
「大丈夫だったかい、君?」
「あ、はい。助けていただきありがとうございます」
「同じプレイヤー、助け合うのは当然さ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。……あの人たち、この後どうなるんですか?」
「ん? 簡単だよ、掲示板に晒す。君みたいな子に被害が無いように、ああした奴は早めにマークしておいた方がいいからね」
「あ、あの! それは……止めてあげられませんか?」
「……どういうことだい?」
猜疑の目を向けてくるプレイヤー。
まあ、ただの子供じゃないことはここら辺でバレるだろうな。
別にそこは気にしない、どうせ皮を被った上にSSにも影響を及ぼす認識阻害を使っているしな。
「まだ何かされたわけじゃありませんし、それに……同じプレイヤーですから。まだ初犯だったなら、どうか許してあげてください」
「…………君がそういうのなら、そういうことにしようか。周りには、俺が伝えておくから任せてくれ」
「はい、ありがとうございます」
その後、若干の事情聴取を受けてから俺は解放される。誰も俺を認識しなくなったところで──連絡が届く。
【……餌三つ、確保しました……】
「(ああ、こっちもいちおう説得しておいた。ついでにスキルも使ったから誰もアイツらは気にしない。ただ優しい少年がいたという記憶しか残らないだろう)」
【……餌は、どうします……】
「(決まっているだろう。餌は餌になるためにあるんだからさ)」
【……畏まりました……】
さて、散歩を続けますか!
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