AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と精霊実験
夢現空間 修練場
キャンペーン中は何もしない予定だったんだが……眷属の頑張りっぷりを見て【怠惰】が重い腰を上げた。
「ん、そっちは任せて」
「……いや、任せることでもないけどな」
普人族の少女が“不可視の手”の上で寝転がりながらそう言ってくる。
口癖で分かると思うが――その少女こそ、俺の【怠惰】な精神の権化『リープ』だ。
彼女が表に出ている限り、俺が【怠惰】な感情に支配されることはない。
そういった意味でも、今の俺はやる気に満ち溢れていると言える。
「ん、でもその分他の感情が出るからね」
「はいはい……思ったんだが、<美徳>の感情は出てこないのか?」
「ん、良い質問」
これまでの日々でもう<大罪>の感情は全て暴走したことがある。その都度瞳の色が変化していたらしく、特定も簡単だったそうだ。
だが、それでも<美徳>らしい行動を俺がしたことはないらしい……やっぱり、人間だからだろうか?
「ん、それは違う。ただ足りないだけ」
「足りない? 同調がか?」
「ん、その通り。<大罪>の感情とはある程度意識すれば繋げられる。けど、<美徳>は難易度が高い。今はまだ無理」
「よっしゃ、つまり可能性はあるのか。それなら期待大だな」
「ん、みんな待ってる」
毎度言われるこのセリフ。
解放できるのは二人で残りの者はまだ解放されていない。<大罪>ですらそれなのに、さらに難易度が高い<美徳>の人格も解放する必要がある。……というか俺の<美徳>な部分?
綺麗な剛田君のイメージしか湧かないや。
修業を始めてみました。
昔、ユラルと精霊についての話をしていたことを覚えているだろうか。
俺は精霊魔法をあまり使わない。
空間を創った際は自然を豊かにするために精霊を呼び込むのに使ったが、精霊を使役する魔法を行使したことは少ない。
――精霊を介して魔法を使うよりも直接魔法を使った方が早いからである。
そもそも精霊魔法とは本来、精霊と契約してこその魔法だ。
精霊と心を交わして絆を紡いで共に戦う。使役者が成長すれば精霊も成長するので行えることも大幅に増える。
また、上位魔法である妖精魔法。
オブリが使用するこの魔法は契約をしていない精霊を惹きつける効果がある。
大量の微精霊に力を借り、一体の精霊では行えないような威力を発揮させる。
ただ、妖精魔法で惹きつけられるのはあまり成長をしていない精霊──主に下級精霊のみなので、成長を遂げた精霊を介した精霊魔法とどちらが優れているか……と言われれば難しいところだ。
「ちなみに、聖霊魔法の場合はどんな精霊でも使役できるようになります。もちろん、他者と契約済みの精霊は無理だけどな」
「急にどうしたの?」
「ああ、ユラルか。ちょっと考え事をしていてな。精霊の件、準備できたか?」
「うん、この辺り一帯に集めてあるよ。視れば分かるよね?」
「……驚いた。今視たけどどうやってこんなに集めたんだよ」
瞳に精霊眼の力を宿すと視界いっぱいに光の玉が集まっている光景が視えた。
玉の一つ一つが精霊。大きさに大小はあるものの、下級精霊が大量に集結している。
中級精霊なら玉以外の姿を持っており上級精霊なら完全な人型を取れる。そして王級精霊――精霊王は自身の司る属性の精霊全てに対する命令権を持ち、聖霊ならば自身の属性でなくともある程度の命令権があるのだ。
「この空間、精霊の間もあったから。そこにいる精霊に頼んでみたの」
「そういえばあったっけ? 確かに(精霊神の加護)はあるから納得ものか」
たしか聖霊の間も在った気がするが、そちらには誰もいなかった。
だが、聖霊にとって居心地の良い場所だったので聖霊用のリラックス部屋として考えていたのを今思い出した(自分が聖霊になって試してみました)。
「……まあ、とりあえず実験ができることは分かった。どんどん始めようか」
「メルスン、何をやるの? いちおうでも聖霊だし、精霊に無茶をさせるなら防ぐつもりなんだけど」
「そりゃあ、籠めれるだけ魔力を与えてから擬似人格データを刷り込ませて人工上級精霊にしてみる……つもりだったけど、それは無理みたいだね」
「冗談でも、止めてね。ドゥルドゥルでギリギリなんだから」
武具聖霊のドゥル。
本来武具を司る聖霊など存在せず、自然界で出現することなどありえない。
ドゥルという腕輪に内包された人格が俺や眷属のために力を求めた結果――生まれたのが武具精霊である。
忘れられていると思うが、眷属もまたドゥルの腕輪を装備している。俺だけの専属ではなく、ちゃんと他の眷属の武具の準備もやってくれているぞ。
「はいはい、マッドな実験はネロとやりますよ。本当は普通に精霊魔法の限界、それと召喚型の精霊魔法をやりたかったんだが……それはいいよな?」
「後者はともかく、前者は心配だな……」
「精霊に過剰な魔力を籠める気はないさ。それよりも合成魔法とかができるかを試しておきたいんだよ」
「うーん……それなら、いい……のかな?」
心配されすぎてちょっと辛いです。
確かに創作物のネタをパクってちょっとヤバいことになったこともあるけどさ……。
まあ、とりあえずやってみようか。
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