AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と五回戦 その01
『お待たせしました! この闘いが、今闘技大会の覇者を決めるものとなる!
片や全てが謎な『譎詭変幻』、片や全てを真似る『物真似』。どちらもトリッキーな能力を以ってこの場に立っている。
不思議だらけなこの決勝を勝ち残り、優勝へと手を伸ばすのは――果たして一体どちらなのか!?』
舞台の上、予選以降立つことを忘れていた場所で、それを聞いていた。
相手が抽選時に見た男であるため、眷属では無く俺が相手をすることになったのだ。
眷属にはずっとローブを被ってもらっていたので、俺もまたそれを被れば替え玉に気付かれることは無い。
大会の本人確認は意外と簡単で、魔力の波動が同じならそれで十分だった。なのでそこを調整することで、眷属の誰が参加しても問題無くいられたぞ。
閑話休題
真似たスキルで認識を阻害しているのか、今の俺には、あの時に見たイラつく男が弱そうにしか感じ取れない。
しかし、コイツはユウたちをも倒してこの場に至っている。
ご丁寧にスキルを自慢しながら闘っていたので、あの時のセリフはそれを意味していたと理解できた。
『『譎詭変幻』ね……少なくとも、スキルでは無いみたいだな。ってことは自分で付けたのかよ、厨二も程々にしておいた方が良いんじゃねぇか? お前みたいなガキがその病気になるのは早過ぎるだろ』
「こ、これは……その、パーティーメンバーにそうしろって言われて……」
『へぇ……ま、どうでもいいんだけどな。ここまで来てるってことは、お前は強い。つまり強いスキルを持っているってことだろ? お前は俺にスキルを提供できて、俺は更に強くなれる。正にWinWinな関係だな』
……ナックル相手に思ったセリフだけれども、言われた言われたで腹が立つな。
ネタバラしにも程があるが、侵蝕されてるならこのお頭の悪さもなんとなく分かるな。
『物真似』と名乗るだけあるんだし、持っているならば【固有】スキルはコピー関係の物――チャルの劣化版みたいな感じだろう。
ユウたちのスキルを真似ていたが、100%の再現はできていなかったらしい。そこから劣化コピーなのか、処理落ちなのかでまた答えが分岐する……要解析だな。
ただし、あくまで対戦者のスキルしか使用していなかったとの情報がある。
そこから更に能力は絞れた。視認、接触、後は……技を受けることが発動条件だろう。
俺を見て<譎詭変幻>がスキルで無いと断定したことから、コピーできる能力は【固有】以下であることとコピーが選択式であることが予想できる。
先程のセリフから、まるであれば気付けたと思えるようなことを臭わせているからだ。
「(ま、ここまでのことを全て計算だけでやってるって言うなら……もうお手上げだが)」
《侵蝕度合いはかなり深刻かと……能力については現在究明中です》
「(あ、やっぱり? でも物真似ってかなり便利な気がするんだよな。融即とか奉納とか、結構深いんだろ?)」
《……危険です、融即とはつまり自己を別のナニカと繋げる行為です。自分であって自分で無い、別のナニカへとなろうとする為のものですから》
細かいことは理解していないが、要は一つに纏め上げると言うことだ。他人の能力も、姿も、存在も、一つに集めることを融即と呼ぶらしい。
間違っているかも知れないが、あくまで一般ピーポーの戯言だ。
あんまり気にしなくても構わないぞ。
ともあれ『物真似』の奴が厄介だが面白いスキルを持っていることが、分かったというワケである。
審判がやって来て、準備ができたかどうか尋ねる。
俺と『物真似』はどちらも肯定の言葉を発し、審判はその旨を大会の運営側に伝えた。
『――えー、両者の準備が整ったようですので、決勝戦を始めさせて貰います。
両者、構えを……』
『物真似』はその言葉に、腰に携えていた剣を引き抜く。
魔力が内包された黒塗りの剣だ……あ、しかも魔剣じゃん。
『物真似』との間にパスが繋がっており、魔力や氣力、生命力を循環させている。
能力は……やっぱり普通の状態じゃ弾かれるか。
(神氣)を使えば一発だが、できるだけ取っておきたいから止めておこう。
『どうした、お前も早く武器を出せよ』
「は、はい」
催促されたからには仕方が無い、俺もどんどん準備を行うか。
ローブの中をごそごそと探り、一番最初に引っ掛かった物を取り出す。
『……おい、素手で俺に勝つ気かよ』
「僕も男です、最後ぐらい自分の力で闘いたいんですよ」
『調子に乗りやがって!』
うん、舐めプです。
運任せでドゥルに武具を設置してもらっていたのだが、傍から見ると俺は何も持たずに軽く手を輪っか状にして構えているだけだ。
しかし、それは誤解でありちゃんと武具を装備しているのだが……それはまた、闘いが始まったら説明することにしよう。
そのことに気付いていない『物真似』は、今までのクール(笑)をかなぐり捨てて叫び出した。
情緒不安定、これは侵蝕の所為なのか本人の生まれつきの問題なのか……うん、こればかりはどうにも判断ができないな。
『では、運命の決勝戦――開始です!』
そんな事情も露知らず、俺達の準備が整ったと判断した大会の運営側が試合を始める。
……さて、どんな能力なんだろうな。
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