AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と迷いの森 その03



迷いの森 森人の隠れ里


 移動の様子はプライバシーの関係もあってカットしたが、俺たちは遂にイアスの一族が住むという地へと辿り着いた。
 俺にはプライバシーが無いというのに、どうして会ったばかりの奴にはプライバシーが働くのだろうか。不思議だよ。


「なぁなぁカナタさんや」

『どうしたんだい、メルスさんや』

「俺、ツリーハウスなんて初めて見たよ」

『……『偽・世界樹の迷宮』とやらにあるのはどうしたんだよ』

「アレは住むための場所じゃ無い。だけど、ここは本当に使っているんだぞ。……嗚呼、これこそ正にファンタジーだな」


 森人たちの住居は、巨樹の上に造られていた……いや、存在したの方が良いのか?

 原理は恐らく(木魔法)だろうか――木の瘤が家の形をしているんだよ。
 そんな光景を目の前にして、ビックリしない奴が地球に居るなら呼び出してみたい。


『貴様ら、何をしている。早く長老様たちの元に行くぞ』

「はいはい、説明乙。ちょっとイアスたちの住む場所に驚いただけだよ」

『そうか? これが普通だと思うのだが』

『お前らにはそうかも知れねぇが、人の街で育ってきた俺らには分からねぇんだよ』

『そういうものか。ならば、しかと我らの素晴らしさを拝んで行くが良い』


 イアスが言った通り、俺達はこれからこの里の長老たちの元へ向かった。
 なんでも、里へ着た者は必ず長老たちに挨拶をしなければならないとのことだ。
 ……面倒だな。

 俺としては、カナタに全てを任せて観光に洒落込もうと目論んでいたのだが……完全にバレてました。
 死なば諸共的な感じで捕まってしまい、俺も行くことになったよ。


「しかし、お前らの種族は本当に視た目で差別でもするのか? 俺とカナタがちょっとイメチェンしただけで、真実を知っているお前以外はカナタに何もしてこないぞ」

『まぁ、普通そんなことする奴いないしな』

『……長老様たちの前では止めろよ』

「分かってるって」


 カナタを『穢れ』と言われ続けるのを、俺としては気に喰わないと感じるので、カナタと(ついでに)俺は魔道具を駆使して姿を偽っている。

 カナタは褐色の肌は日焼けを知らないような、一歩間違えれば病人と思えるほどに真っ白な肌を持つ森人に。
 そして俺は、通常時のカナタと同じ肌色と耳――つまりダークエルフ風にしてある。

 すると、どいつもこいつも俺の方を侮蔑の視線で見下ろしてくるのだ。
 <八感知覚>で確認していると、子供たちでも俺を侮辱しているのが聴き取れるな。

 逆に、カナタのことはかなり称賛しているようだな。
 肌色的に何かあるのか? その内調べてみよう。


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 さて、そんな長老たちへの挨拶が始まりますよ。
 里の中で最も大きい巨樹の瘤の元へ来たイアスは、何やら俺たちに離れるように指示してから中に入っていった。
 俺たちはそれをその家にある部屋の一つで待機して、戻って来るのを待っていたぞ。


『――許可が下りた。行くぞ、貴様ら』

「『はーい』」

『その前に、それを解け』

「あ、忘れてたな。カナタ」『あいよ』


 首に掛けていたネックレスを外すと、俺たちの姿はいつもと同様のものになる。
 周囲には俺たち以外の者はいないので、カナタにあの目が向けられることは無い。


「それじゃあ、早速頼むぞ」

『……あぁ』


 部屋から出た俺たちは、イアスの後ろを雛鳥のように追随していった。
 人払いでもしたのだろうか、先程俺を蔑んでいた者たちは一人もいなくなっていた。
 ……独裁スイッチとか、そういうヤツの所為じゃないよな?



 イアスが立ち止った場所は、とても大きな扉が聳え立つ所である。

 大きさは……3m程かな?
 色々な魔法を施された扉を、イアンは軽く押す。
 すると、そんな軽さとは裏腹に重厚な音を立てて扉が開いていく。


『よくぞやって来た、祈念者たちよ』


 そこには、若々しい数人のイケメンたちが円卓を囲んで座っていた。
 全員が全員、入って来た俺たちを虫を見るような目で見ており、不快感が沸々と込み上げてくる。

 ……クソッ。
 腹が立つから言わなかったが、俺が今日出会った森人の中に外見がいまいちな者は一人もいなかった。

 ――やっぱりエルフは、美形だよな。
 そんなイケメンたちの中で上座に座っていた者が、先程こちらに声を掛けてきたのだ。
 声までイケメンで腹立つわ~。


「ふむ。まずお前たち、こっちにいるカナタへ嫌悪感を垂れ流すのは止めろ」

『嫌悪感……か?』

「あぁあぁ、もうそんな臭い芝居はしなくていいから。目が全てを物語ってるし、カナタが視界に入った途端に反応しただろ?」


 また腹が立つな。
 俺は別にそういう目に慣れているから構わないけど……身内がそういう目で見られるってのは、ここまで怒れ【憤怒】することなんだな。

 俺が言っていることが、確証染みた何かを有していると判断したのだろう。
 代表の森人はため息を吐いてから、呟く。


『観察眼が優れているのだな』

「(観察眼)は優れていると思うぞ」


 あれは良いスキルだと思う……って、そんな話をする場合じゃないんだったな。


「――改めまして……初めまして、森人の諸君。俺の名前はメルス、警告と契約をしに来た祈念者の一人だ」
『同じく、カナタだ』

『警告? それに……契約だと?』


 その通り、そう言った筈なんだがな。
 聴き取れなかったのか?

 なら、何度でも言ってやるだけだ。
 周囲を軽く見渡してから、大きく息を吸って――。


「聞こえなかったのか? 俺がお前らに伝えに来たのは、これまでの所業への警告と、その贖罪を乞うための契約に関してだ」



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