AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と赤色の世界 その07
「よし、これで最後っと」
解除の術式を逆算して編み出し、発動する封印結界をまた止めていく。
段々と複雑な術式になっていたのだが、最後ら辺なんて解くのに思考の九割を使っても暫く掛かる程面倒なヤツだった。
俺、一応思考を何千倍にも加速できる筈だけどな~。
本当、自分の無能さを感じたよ。
まぁそうした苦労もあって、扉の周囲に展開されていた封印の術式は全て無くなった。
残されたのは未だに海の上に浮かぶ扉と、その扉に直接刻まれた封印だけである。
「さて、それじゃあお目当てのご対面に……あ、やっぱり駄目か」
扉にもまた強力……いや、凶悪な封印が施されており、扉は押しても引いても開くことは無かった(観音開きの扉だぞ)。
「どうしようか……開かないし~」
そもそも、開いたら開いたで炎の海がこの中に居る奴に襲い掛かるし、扉は扉で解除に聖炎龍の死が必要だし……面倒だな~。
「死はさっき消滅した分体を……あ、消滅したか。なら、死のデータを聖炎龍のものに改竄すれば……チッ、やっぱり無理かよ。ならば、扉の魔法陣を無理矢理壊す……とそれはそれで魔法が発動する? ロクなことにならないことが確定してるじゃねぇか」
どれもこれも始める前から失敗するし、一体どうすれば良いんだ?
扉自体に効果は無いからいつも通りの人形作戦はできないし、転移は扉の先の座標が分からないからか、そういう対策がされているからか失敗する。
何故、強者の封印よりも面倒なことになってるんだろう。
あれはあれで、神が用意したということで神器級の封印具になっていたから、擬人化に必要な格があった。
だがしかし、この扉にはあんまり格が無いみたいだから……無理だな。
「なら……強引に突破するか」
極限まで身体能力を高め、更に敏捷力を特化させて準備を行う。
武器も聖銃と魔銃を抜いて構える。
このまま全てを喰らい尽くして中の奴に会おう、と思ったんだが……。
「駄目だっ! ……このままだと絶対に怒られる!」
よくよく考えたら、強行の愚策なんてやったらお説教ルート間違いなしじゃないか。
ティルを強制送還しておいて、結果がぶっつけ本番の漢開錠?
嗚呼、それは酷く強力な死亡フラグだよ。
せめて彼女達を一人でも連れて来ていれば問題無かったと思うが、俺はあくまで独断を愛し、孤独に愛された男だ。
なんとしても、これ以上は自力でやらなければならない。
――あ、孤独じゃないからな!
◆ □ ◆ □ ◆
再び初期の状態に戻り、ゆっくりと思案を行う。
余裕もできたので、現座は周囲に巨大な結界を生成した。
その為魔物たちが再び来襲しても、かなりの時間が稼げるだろう。
「…………」
さて、本当にどうするべきか。
扉に仕掛けられた封印は、聖炎龍本体を殺すことで解除される。
それが成される前に扉が開かれた場合、攻撃魔法と灼熱の炎が扉の中に雪崩れ込む……という解析結果が出ている。
先程の愚直な考えで突っ込むと、恐らくそうした仕掛けが俺ではなく封印された奴に襲い掛かる為――キャンセルだ。
速度特化で対象の元まで向かい、そこで魔法と海を相手取ろうと思ってたんだけどな。
電撃の最強お兄様だって、クリムゾンのプリンスの攻撃全てを捌けなかったワケだし、俺もどうせそうなっていたと考えれば……止めて正解だったな。
うーん、本当は聖炎龍の殺害が最も早い条件の達成法なんだけど、俺はそれをする気は無い。
多分、それこそが聖炎龍が考えた俺の限界なんだろうし、そこに考えが終着するのはあまりよろしくないしな。
あくまで誰も不幸にならない最適解を求められるのが、AFOの良いところであった。
それなのに、それに肖ってきた俺がそれを否定するのは……ちょっとな。
――何か、鍵になる情報は無いのか?
「えっと……魂、奉納、接続、解放……魄、代理、変わり身、分身……あ、いけそうだ」
現在、俺と聖炎龍は(契約魔法)によって魂が接続されている状態にある。
ならそこから魂魄に関する情報を読み取って、鍵を創り出せば……あ、意外とあっさりできるもんだな。
「それ、開錠っと」
創り出された鍵に、死に関する情報を混ぜたデータを封印に送ると――あっさりと封印は解かれてしまう……。
い、今までの苦労が一瞬で。
何故だろうか、報われた筈なのに全く報われた気がしないのは。
折角の異世界、封印された扉を解除するのにこんな虚しい方法を取った主人公はいるんだろうか?
俺はモブの一般ピーポーだから、別に自由ではあるんだが……せめて錬成とか何かを集めるとか、それでも無くても力づくでやるでも良いからさ~。
――もう少し、マシな方法は無かったのだろうか。
「……ま、行けば報われるかな?」
ここでどれだけ考えていても、結局何も変わらないワケだし……とりあえず、扉の中に進むことにしようか。
扉からは強烈な魔力の奔流が放たれ、結局炎の海は中へと侵入することはできずにいるようだ……。
いや、魔法を防げなかったと思うから別に良いんだけどさ。
本当、今回は予想通りに行かないことだらけだな。
そうため息を吐き、扉を潜っていった。
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