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山田 武

偽善者と放映試合 その02



「"夢現返……しは止めといて――"転移眼"」


 いきなり切り札夢現返しを使うというのは、子供達への悪影響がある気がするので止めた(大人げないからな)。
 代わりに使った"転移眼"で場所を改め、高速で武具を取り出して戦闘態勢に入る。


『おーっと、メルスは武具の装備に成功したようだ~! ……フィレル、ドンマイ!』

『そうですね。アイリス様は、この後メルス様がどう動くと思われますか?』

『う~ん、まだまだ攻撃を溜めている眷属がいますしね~……ヒット&ウェイをして各個撃破を狙っていくのでは?』


 カメラを構えていたアンは、いつの間にか実況席を作ってそこへ座り、アイリスと共に解説を行っている。
 ……って、何やってるんだアイツらは。

 ここで、戦況を確認しよう。
 まず、先程俺に攻撃してきた者たち……アイリス以外の終焉の島で会った奴らである。

 どいつもこいつも強技を放ち、再びこちらの隙を伺いながらチャージを行っている。
 一部の奴らは、素の攻撃が凶技であったり休憩時間クールタイムが不必要であるため、別のグループに合流している。
 ……本当、どうやって勝ったの? 俺。

 次のグループを簡単に言うなれば、武器っ娘たちである。
 本来コピーできない俺の{感情}スキルの一部を受け継ぐ、俺によって創り上げられた彼女たちは、既に発射体制に入った攻撃を抑え込み、いつでも俺に放てるように照準を合わせていた。

 あとは最後のグループに、この島に来る前に出会ったハーレムを足せれば良かったのだが、多分この放映に関する何かに駆り出されているのだろう。
 今この場には、そのグループメンバーである少女たち……フーラとフーリしかいない。
 彼女たちはアイリスとアンの近くに居るので、恐らく戦闘には参加していない。


「(フーラ、フーリ。これって一体どういう状況なんだ?)」


 というわけで、彼女たちに念話を繋ぎ、今イベントの事情について訊いてみよう。


《あ、メルス様。簡単に言うとですね》
《……みんなへの近況報告》

「(みんなって言うと……国のみんなか?)」

《はい、その通りです》
《……みんな、メルスさまが心配》

「(そうだったのか……)」


 てっきり、俺が居なくても楽しく生きていると思ったんだがな。
 だって、政治の大半はリョク任せの放浪で放蕩の王様だぞ?
 一々気に掛ける方がレアじゃないか?


「(だけど、どうしてそれとこの集団リンチが関係あるんだ? 俺、完全にイジメられてるよな? この状況って普通、国民たちは心配してくれるよな?)」

《《…………》》


 ――あれ?
 どうして無言になるんだろう?


「(な、なぁおい。どうして何も言ってくれないんだ二人共? 心配してくれないのか? 国民たちって俺のこと、イジメられても良いような存在として扱ってるのか!?)」

《ち、違うんですよ! ……ほ、ほらアレですよアレ! 国行政に関することを、いつも眷属のみんなでやってますから――》
《……かかあ天下》

「(フーリ、どこで覚えたそんな知識)」

《……お母さん》


 そういえば……確かにそれっぽかったもんな二人の家は。
 お父さん……南無――。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 さて、やることも分かったし――楽しい楽しい喜劇ショーの始まりだな。


「――全武具っ娘に告げる! 今回は全員纏めて使うから、今すぐに攻撃を中止してこっちの武具に宿れ!」

『了解!』


 俺がそう宣言した途端に、全武具っ娘たちは攻撃を消して光となり、俺の体の中へと侵入していく。
 ……受け入れてくれない限りは不可能だけど、これをやると必要に応じて聖・魔武具や神器が取り出せるから便利なんだよ。


『これはズルい、チートだよ! 武具っ娘たち全員を働かせて、敵の戦力を一気に減らしつつも、自身の戦力を高めたーー!!』

『わたしも行った方が良いのでしょうか?』

『流石に勘弁してあげて! 封印されるぐらいに強者なみんなだけど、スキル補助が完璧な状態じゃあ、勝つ可能性が極端に減っちゃうから!』


 アンは俺の種族スキルの権化だからな。
 その気になれば、演算処理の代理を受け入れることも可能だ。
 なのでアンと接続した状態で演算処理の必要なスキルを発動すると、通常の何十倍もの性能を発揮してしまうぞ(形は違えど同じことができる眷属は、何人もいるがな)。


「(……ということだ。今回は解説に努めてくれよ。アン自身は視覚共有で戦況を観ていて良いからさ)」

『それでしたら、わたしは解説に専念させていただきましょう』


 アンも再び、アイリスと共に実況を始めていく。
 うん、強者たちが凄く冷たい眼でこっちを見ている。
 ……反則じゃないのに。


《マスター、僕たちはこっちの方が嬉しいから構わないけど、視聴者的に相手から力を奪うのはどうかと思うよ》

「(大丈夫だろ、これから始まる武具っ娘たちの無双プレイに比べれば……寛大なうちの国民たちなら、笑って許せるレベルだろ)」


 そうだ、きっとそうに違いない。
 誰も文句なんて言わないはずだ!
 ……大丈夫だよね?


「(一人か二人ずつぐらいで、やっていくからな。人化して突貫とか止めてくれよな)」

《お姉ちゃんが見てる、大丈夫》

「(そりゃ頼もしい。なら頼んだぞ、スー)」

《オールオッケー》


 それから少し打ち合わせをしてから、大きく息を吸い込み――叫ぶ。


「全国のみんな! これから王様がカッコイイ技を魅せてくよ~! こうご期待だ!」


 最初に使うのは指輪シー包丁ヤンだ。
 ――二人共、良いとこ魅せような。



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