AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と『覇導劉帝』 その01



「こりゃあまた凄い場所に置いてあるな~」

『まさに、崖の上の……ですね』


 特殊フィールドへの入り口は、雪山の頂上の付近に存在する崖の上にあった。

 ――文字通り、崖の上空100m付近に。


「ドゥル、空の上にある扉なんて、需要があるのか? 鍵穴があるなら排水溝のオジサンが鍵を取って来るし、ちゃんと扉の下に地面があるなら、勇者の盟友が行くと思うが……ただ扉が浮いているだけの状態で、誰があそこに行くんだろうな」

『それはもちろん、我が王です』

「……ああ、そういえばそうでしたね」


 俺、あんな意味も無い所に置かれた扉を目指していましたよ。

 扉へ向かう前に、俺は神眼を使用して扉の周囲を徹底的に調査しておく。
 結界は張られているのか、どんな効果があるのか、扉は何処に繋がっているのか、通った際に生じる影響は……等々。
 最後で油断した奴がロクな目に合わないのは、経験として学習済みだ。

 俺はそんな風にはならないように、ちゃんと調べておく。
 ……フ、フラグじゃないからな。


「結界は……。ドゥル、お前は一度腕輪の中で待機していてくれ」

『…………理由を、お聞かせ願えますか?』

「結界に、竜族に関係のある者しか通れないような設定が施されているみたいだ。それ以外の者が通過すると、一瞬で体中のありとあらゆる力を吸い取られる……識別型の結界みたいだな」


 つまり竜人や龍人や辰人、亜竜やドラゴンみたいな存在じゃないと、結界に殺されるってわけだ。
 ……ってことは、強者は竜か龍に関係する者――または逆にそれを殺す者か。

 ドゥルはそれからもう少し説得を重ねてみると、どうにか納得してくれた。
 腕輪の中に待機し、俺が危険な状態に陥ったら助けてくれる。


「……よし、準備ができたみたいだな。それじゃあ早速――"因子注入・龍人"」


 体の内側から全てを塗り潰していき、俺は龍人へと姿を変えていく。
 体の所々には色が変わる鱗が現れ、俺が人ではない存在に変貌したことを証明してくれる(ま、AFOで純粋な普人だったことって、一度も無いがな)。


「それじゃあ、上空100mに聳える扉までレッツゴー! (――"龍翼生成")」


 鱗同様に不可思議な色を放つ翼を背中から生やし、一気に空へと駆け上がる。


◆   □   ◆   □   ◆


「扉は……また行き先不明か。座標だけなら一応分かるが、結局次元が違うから意味が無いんだよな~」

《次元ですか?》

「そうそう、丁度修練場に置かれている扉と同じような感じだよ。ここの扉は……まあ、この先にいる強者を封じる為に創られた世界に繋がっているんだと思う」

《VRMMOだと思っていた世界に召喚されたと思いきや、今度は異世界転移ですか。我が王、少々盛り過ぎでは?》

「……盛り過ぎってなんだ。別に俺が貼りたくてそのタグを付けているわけじゃ無い。ただ流動的に生きている際に、そういうタグと出会っただけだよ……俺の記憶の本、今どれだけのタグが付いてるんだろうか」


 ちなみに、他の眷属達の伝記には『主人公Tueee』のタグが必ず付いている。
 実際置かれていた伝記を観て、俺もそう感じたわ。

 ……不思議なのは、俺の記憶の本に『唐変木』だの『朴念仁』だのというタグが付いていたことだ。
 確か、意味は先が分からず屋で後が気の利かない間抜けだったような……そう思われているなら、気を付けないとな。

 捧げる相手の居ない奉公なんて、それはただの独りよがり自慰行為ではないか。


 閑話休題ボッチじゃないよ


 扉には、次元を渡るための細工以外は何もされておらず、俺が押しただけで扉は簡単に開いてしまった。

 開かれたその先では――――。

 GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAA……(バタンッ)

「……ドゥル、俺の見間違いか? 扉の先に二対の翼を広げたカッコイイドラゴンが居た気がする」

《そこまで分かっているのに、誤解も何もないと思います》

「……いや、目が完全に逝ってたんだよね、そのドラゴン。完全に狂いに狂ってますって感じの目をしてたんだよ」

《まあ、ドラゴンの瞳まであの一瞬で。
 ……分かりましたからもう一度見てください。現実がそこで、我が王をお待ちしております》

「やっぱり開けなきゃd《駄目です》……開けますよ開けますよ」


 再び扉を開けると――。

 GURRRRRRRRRRRRRRRRRR……(バタンッ)

「ドゥル、私疲れてるのよ。扉を開いたら、デッカイ蛇みたいな眼しか見えなかったわ」

《完全にバレてますね。先程既に発見されていたと考えるのが妥当かと》

「……いや、ツッコんでくれよ。少し、寂しくなってくるだろう……」


 それは誰かに言うことであって、自分にいうことじゃ無い……とかあったでしょうに。


《我が王の言うことの八割は真実となりますので、否定する必要が御座いません》

「……残りの二割は?」

《……黙秘です》


 俺も今は置いておくとしよう。

 しかし、扉の前で待ち伏せされては困ってしまうな。
 探知や知覚系のスキルも次元を超えての調査はできないし、開けた先で一度でも粗相を仕出かしたら、あのドラゴンも俺を敵対者として認識して殺戮デストロイするだろう。
 ……つまり、選択肢が足りない!


「ドゥル、どうすれば良いと思う? いつまでもここに居るわけにはいかないし……」

『完全に扉に目が密着しているわけではありませんので、それをどうにか避けるのが良いかと……』

「そうだな、少し頑張るか(――"光化")」


 体を光の粒子へと変換し、再び扉へと挑んでいく。
 すると――。


「……あれ? いないな」


 俺は緊張の糸が切れた為か、扉の中へと無意識的に侵入してしまった。

 ――それが罠とも知らずに。


《我が王、上空から何かが来ます!》

「……マジかy――」


 その言葉の一雲耀うんよう後、扉へと光の柱が降り注いだ。



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