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山田 武

偽善者と『最弱最強』 その12



《いや~、夏戦争のあの盛り上がりも理解できるってもんだよ!》

「(あぁ、あの連続でコールしていく感じ……控えめに言って最高だったな!)」


 第四回戦――『花札』を終えた俺たちの感想は、そんな感じだった。
 花札――別名『花かるた』――は1組48枚のカードを使用して行うゲームだ。

 人数によって行うゲームが異なる場合もあり、2人の今回は、『こいこい』を行った。

 ルールは簡単、場に出された8枚のカードと同じ種類のカードを出して、入手する。
 次に山札からカードをドローして、場にまた同じ種類が無いかを確かめる。
 ……この時、同じカードがあったならば、それもまた入手できるが、無かったならそのカードは場に置いてターン終了だ。

 ここからが大事だ。
 カードを取れた場合、『こいこい』と言うことでもう一度ドローできる。
 そうやって再びドローして、また場にあるカードを集めていく。

 そのターンに集めたカードによって、役というコンボが発動する。
 ……これ、ポイント制のゲームだからな。

 最終的にポイントの高い方が勝利だ。
 ……本当は相手の役をどれだけ防ぐか、とか、役のポイントについて、とか説明しなければならないが……もう終わったし。

 今回のゲーム……『こいこい』コールが楽しかったとだけ記しておこう。


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「……なあ、もう大人しく眷属になれよ。今ならとっておきの飲むカントリーもくれてやるからさ」

『そ、そんな飲み物一つに、アリィが釣られると思っているの?』

「……なら、その手を外してくれないか? 要らないなら仕舞うから」

『い、要らないなんて言って無いでしょ! 本当にこれがアリィの口に合うのか、毒見をしないといけないんだし……』


 お嬢さん、それは最後まで飲んだり食ったりする人の常套句ですよ。
 結局、アリィは俺が諦めるまで手を離さずにいたので、ただでさえ貴重なドリンク版を入手できましたとさ。


「……それじゃあ、最後のゲームをやるか」

『……アリィもちゃんと分かってはいる。もう負けたんだって。×××されたり、×まされたりするんだって……』

「おい、風評被害は止めろ」

《そうだそうだ! そんな気がメルスにあるなら、クーたちは苦労しない!》

「(クーさんは何を言ってるの!? もうちょっとマシな批判の仕方は無かったのかい!?)」

『でも……眷属って、そういうものなんじゃないの?』

「(そういえば、業務内容しか説明してなかったな)……いいか、眷属ってのは……」


 カクカクシカジカ マルマルヘマヘマ


『……ハーレム?』

「いや、男もいるからな」

『え゛っ!? メルスって、そっちの気もあったの?!』

「ないない(……TSしたなら、別に構わないけど)」


 全く、なんでそうなるんだ。
 確かに、基本的に女性しか集めてないけどさ、ちゃんとアマルみたいなも眷属にしたんだからな。


「とにかく、眷属ってのは家族だ。足りないものを補ったり、必要なものを求めたりする関係だ……多分」

『……なんで多分って付けたの? かなり心配になるんだけど』

「少なくとも、創設者はそう思っているってわけだ。後から入って来た者がどう考えてくれるかまでは、別に考えていないからな」


 かつて崇高な目的で創られたグループも、創設時初期のメンバーがいなくなり形骸化してしまえば少しずつ狂っていくだろう。

 ま、俺が存命の間は大丈夫だろうと思うけどな。


 閑話休題いつ死ぬんだろう


「それにしても意外だな~。アリィ、ちゃんと負けたって分かってたんだな。俺はてっきりまだ不正がーとか、降伏~とか言うと思ってたんだが……」

『4回も圧倒的な差を見せつけられて……どうやったら勝てると思うの? もう凄過ぎて反骨精神も折れるよ』

「そ、そうなのか……」


 やっべーよ。
 それやったの、俺じゃ無くてクーだから。
 バレたらまた反骨精神が復活しちまうよ。

 ……ま、バレたら説明するとしよう。


「……うん、最後の5回戦目ももう決まってるのか?」

『それが……その、きてきまして……』


 ……ちょっと休憩を挟んでいるとはいえ、ぶっ続けでカードゲームばっかりだしな。
 しかも全部負けともなれば……そうもなるのか。


「なら、最後はババ抜き――それも、3枚しか使わない奴をやろうか。それならすぐ終わるしな」

『……面白いの?』


 まあ、直ぐに終わるってことから、そういう質問があることは分かっていたさ。


「話は最後まで聴けって。これには、相手の裏をどこまで読んで、どこまで隠せるかの対決だ。相手に騙され相手を騙す……ちょっとブラックな内容っぽいが、面白くないか?」

『そんなことは全然感じないけど……まあ、別に良いと思うよ』

「それじゃあ、俺がジョーカーを持つ方で、アリィは1枚しか持ってない側な。アリィ次第ですぐに終れるぞ」

『ふふん、その余裕。一瞬で叩き折ってあげるんだから』


 と、いうわけで、第五回戦スタートだ。


◆   □   ◆   □   ◆

『じゃあ、アリィから行くね』

「……(ジョーカーを上にして持つ)」

『むむっ(普通ならこっちを引いて欲しいんだから……これがジョーカーのはず。だけど敢えて、そこに欲しいカードを置いて誘導している? どっち? どっちなの?)』

「ふっ、果たしてアリィに分かるかな?」

◆   □   ◆   □   ◆


 この後アリィは下のカードを選び、今回初の勝利を手に入れた。



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