AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と日常会話



夢現空間 自室


 よく分からんことからはとりあえず目を逸らし、日常に戻ることにした……っというかあれ? そもそも今の俺の状況って、日常という枠の中に収まっているんだろうか……。


《確かに、メルス様の今の状況、まさにデスゲームに閉じ込められた主人公そのものじゃないですか》


 思考を読まれているとかはもういつものことだからか、独り言がアンとの会話になることにも慣れてしまったな。


「そんなものなのか? 斧だろうが弓だろうがソードスキルと言ってたあの世界だって、一人でわざわざボス戦をしている奴なんてのは、一人も居なかった……ってワケじゃ無いのか」

《主人公、最後にGMと闘いましたしね》


 あの時点から心意システムがあったんだろうな……主人公よりヒロインが先に発動できて、麻痺状態でも動いていたのに、あそこのシーンには誰もツッコまなかったよな。


「アン、リアの時に少しだけ訊いたけど、この世界じゃ心意システム的なやつはできないのか? 心意の刃とか……ちょっとかっこよくないか?」

《普通に(掌握)でやってください。メルス様の現在の思考能力でしたら、それぐらいのこと……容易くできますよ》

「思考能力って言っても、お前達の1/100程度しか無いじゃないか。あと、それなら"不可視の手"でも良くないか?」

《そのわたしたちの思考能力も、メルス様の持つスキルのお蔭ですよ。その方法が嫌というワケではありませんが、リスクが無いと言うワケではありませんし、何より……いえ、何でもありません》

「……やけに『ありません』が多かったな。
 あと思考能力をフルに使えている時点で、お前たちの方が優れているからな。最近は俺のスキルって限界になるものが増えていることから、限界に近付いていることは明白な事実だしな」


 CS停止ならまだしも、Limit終了にはもう可能性が無いだろう。
 なんせLimit限界なんだからな。
 (限界突破)のスキルを取っても限界に達することに疑問を覚えるが、新たに才能の限界の突破を可能とするスキルを創れば……俺ももう少し独りで闘えるのかな?


《――それならわたしたちは、そのスキルを創らない方が宜しそうですね》

「え~、そっちの方に行っちゃう~? てっきり俺が求めているなら……的なことを言ってくれることを信じていたんだがな~」

《デロ甘タイムは終了です。それをやったらメルス様が、今以上にわたしたちに頼ることが無くなりますしね》

「……いつもいつも同じことを言って言われてを繰り返して、変わろうとしても変わらない。毎度毎度の王道パターンになりつつあるこの展開、いい加減【憤怒】怒りしたくならないか? 【傲慢】バカ【怠惰】間抜けな俺が変わる可能性なんて、俺でも信じられないぐらい低いと思うぞ」


 ミシェルの話を聞いて、少し思ったことがあった。
 全くLvの上がっていない【拈華微笑】……あれって俺の感情がミシェルの言っていた状態になっているから、Lvが上がらないんじゃないかな~って。

 かつてティンスに言ったように、俺はコミ障として名を馳せていた(?)。
 それが今や、眷属を従えた(多分)ハーレムさんですよ。
 どんな匠に相談すれば、ここまでビフォーアフターになるんでしょうね……って疑問の答えもまた、あのスキルが関わってるんだろうさ。

 {感情}。
 何故かCSしているが、今でも俺の持つスキルの中で最も異質で謎に溢れるスキルだ。
 だって鑑定が殆ど効かないし、直ぐLvアップしちゃう元凶だし……とにかく異常なスキルなんだよ!


《……話は逸れていますが、確かにわたしたちもメルス様のそのスキルには、幾つか気になる部分があります》

「お! やっぱり分かってくれるか。本当に今更なんだけどな。俺が普通にログインしてた頃からの相棒――いや、相スキルなんだけど、妙に謎が多くて心配になるんだよ……って思いたいのに、それについて深く考えたことがないんだよな~」

《思考誘導でも受けているのでは?》

「ないない。それならお前たちが絶対に気付いているだろうからないない」

《わたしたちにも不可能はありますので、あまり過信していただくのは……》

「まぁまぁ、信じたいから信じているんだ。俺がそう考えているとだけ理解してくれ」


 信じる者は救われる――よく宗教とかでありそうな言葉だが、この世界ではそれがスキルや加護という形で実際に見えるからな~。
 この言葉の信用性も上がるってもんだ。

 ……ってそれは関係無いな。
 思いが力になる例も幾つか知っているし。
 眷属たちに尽くすと決めたからには、まずは信じるところから始めることが大切だ。

 ……でも、相手がそれを否定しているのに無理やりできるということは、強要に入ってしまうかな?
 それならやっぱり止めた方が……。


《早いですよ、考えが折れるのが。……そこまで言っていただけるのはとてもありがたいことです。わたしたちはこれからも、精一杯メルス様に仕えていく所存です》

「嬉しいことを言ってくれるな。一体何を話していたのか結局分からないぐらいに話が逸れちまったが、その言葉を聞けただけで、今回の会話は充実したものになったな」

《そうですね》


 全く……そんなほのぼのとした日常が、暫らくは続いて欲しいと【希望】し願っているよ。



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