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山田 武

偽善者と『魔勇者王』 その11



 機械の天使を捕食すると、いつもの連絡が頭の中で流れ始める――


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<封印>の解除の阻止に失敗
これにより、■■クエスト『勇魔王者』が消滅しました
『勇魔王者』が消滅したことにより、????の欠片は?????の元に移動します

~ERROR~

[不明]の『運命略奪者』が発動しました
これにより?????の元に行く予定だった????の欠片は、[不明]の元に移動します

運命改変が成功しました
機熾天使リュシフェルより、スキル(光装)を強奪しました

特殊条件達成
『堕導士』『明けの明星』を入手しました

『勇魔王者』の運命は[不明]の支配下に置かれ、運命神の管轄外となります
現在『勇魔王者』に掛けられた呪いの解除権は[不明]の元に移譲され、以降、自在に開封が可能となります

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 ――称号も貰えるんだな。
 空中に浮かんだまま、そんなことを思う。
 機械仕掛けの明けの明星を倒し、自分の持つ空間の中に封じ込めたワケだが、そいつがどうなったかは今となってはどうでも良い。


「なぁグラ、俺ちゃんとやれていたか? 俺が求めた理想の無双――何にも恐れず、不敵に目的を果たすキャラクターを」

《あんまりだったかな~》
《やはり、長文のセリフはカットするべきでしたね。ご主人様の素の部分が完全に出ていました》


 グラの提案、それは新しく考えたキャラクターの行動指針をなぞって俺が行動するという、病人の厨二心を擽るものだ。
 そして考えたキャラを元に動いてみたのだが……感想はあの有り様だ。


「……ハァ、やっぱり難しいものだな。前にやったファントムも、後から聞いたらそこまで似てないって言われたし、そもそも(演技)のスキルも他のスキル以上より成長速度が遅い俺が、一体どうやって迫真の演技を行うんだよ!」

《それなら、もう止める?》
《良いんですよ、別に何かをなぞって行動真似しなくても。僕たちにとって、ご主人様こそが主人公であって、他の人はただのモブです》


 セイさん、ちょっと怖いです。
 俺が主人公なら、他の主人公たちはもっとこう、概念じみた……神的なポジション? もしくは……って分からない。
 主人公を超える存在って奴がいるかどうか分からないが、俺が主人公であるならば、俺以外の生物の大半はその存在とやらに認定されること間違いなしであろう。


「セイ、それは家族補正だ。俺がちょっと何かやるだけで、『さすご主!』とか言ってしまう……それが家族補正だ」

《ちょっと違うと思うよ》
《確かに僕たちはご主人様を完全に肯定することもできますが、ご主人様がそれを望んでいないことぐらい分かっています。たまに一部の人がそれを行っているのは、ご主人様がいつかそれを否定しないような人になって欲しいという願いを籠めてのものですし……》

「……いや、初耳だが怖いなその意見」


 えっ、何?
 今以上に【傲慢】にならないと駄目なの?
 眷属たちの行動の裏には、そんな真っ黒な理由があったの?
 怖い、眷属が怖い。
 ……あ、怖い怖いと口にしていたら、眷属が眷属を持ってきてくれるかも知れないな。


「あぁ、眷属が怖い眷属が怖……って、本当に出て来たな」


 全部言い切る前に、俺の目の前には可愛い犬っ娘とクールな天騎士が出現していた。


『だって、褒めてくれるって言ったじゃん』

「確かに言ったな……」

『だから、みんなが見ているこのタイミングで、ぼくたちをナデナデしやがれ♪』

『し、しやがれ!』


 ぎ、ぎざカワユス! (――"神の手")


ナデナデタイム
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 現在、俺は五体投地をミシェルの前で行っている。
 頭は俺の反省の深さを示すように、首が直角に近い角度で降ろされているが故に穴ができてしまっていた。
 理由は……分かるだろう?


『……メルスって、本当にああいうことをする人だったんだね』

「そこは否定しない、否定しないがちょっと待ってくれ。ミシェルだって触ってみれば本当は分かるんだ」

『……確かに触ってみたい毛や羽だけど、二人をそんな状態にするまですることは無かったんじゃないの?』


 ミシェルは、俺の膝を枕代わりにして寝転ぶ二人を見てそう言ってくる。

 撫ですぎてー 絶頂改装 グラとセイ

 メルス心の(無季)俳句である。
 俳句の通り、撫で過ぎたら二人共ダウンしてしまった。
 だって、だって気持ち良かったんだもん。
 ちょっと調子に乗って、神の手を使ったってイイじゃないか!


『ごしゅじんさま~、モフモフして~』

『ふぅぁああ! そ、そんなに激しくっ!!』

『…………』


 こ、怖い。
 ミシェルの瞳が人を殺せるぐらいのものになってる。
 実際ステータスの封印も外されたから、威圧もかなり強化されているぞ。
 ……というかセイ、お前はまだ0歳だろうに、一体どんな夢を見ているんだよ。


『……やっぱり、メルスは笑わないね』

「ん? 結構楽しいぞ、このやりとりも」

『……メルスの顔は全然笑ってないよ。……というより、表面上でしか笑っていないようにしか見えない』

「……どういうことだ?」

『メルスの顔がちょっと残念なのはもういいとして、その顔はいつも色んな感情を見せている……だけど、その顔の中にメルスの本心からの感情が一つも無いの。メルス自身が表面に出てきている感情を本心からのものだと思っているから、普通は気付かないけど……見えちゃったから、それが』

「……えっと~、つまり、感情が表に出ていないってことか?」

『それとはちょっと違う。出てきているものが、メルス自身が本当に……100%思っていることかが分からないってこと』


 うーん、よう分からん。
 思っていることと俺の本心が別ってことなのか?


「まぁ、それが分からなくても問題は無いよな。多分スキルの影響だから」

『……うん、今のところはね』


 え゛、ちょ、その言い方は止めて!



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