AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と【魔獣王】因子



夢現空間 自室


 特殊フィールドは未だ見つからず、ただ時間だけが過ぎていく日々。
 俺はその時間を有意義に遣うために、ある情報を視聴していた。

 それは、映像として収められた、とある偉人の物語であった。
 人と人、人と異なる生命体とが手を取り合い、強大な敵に立ち向かう……そんな物語であった。


『――アニメ視聴を重要そうに言わなくても良いと思いますよ』

「ノックぐらいはして欲しいぞ。もし、俺が紙を持って下半身裸の状態で出くわしたら、『キャー! アンさんのエッチ!!』とか言わなければならんのだぞ」

『メルス様がしずちゃん側ですか。大丈夫ですよ、彼らは夫婦になるんですし、そういったことも早く経験しておいた方が良いかと』


 しずちゃんって呼び方は原作だけだろう。
 というか、愛を押し売りしてくるよなー。
 嬉しいっちゃ嬉しい……が、やはり理解がどうしてもできない。


「やけに勧めてくるな……。いつからそんなに積極的になったんだよ」

『さぁ、いつでしょうね。……ところで、一体何を観ているのですか?』


 はぐらかされてしまったようだ。
 今直ぐに問い質す必要があるってことでも無いし、別にいっか。


「精霊使いが剣舞するヤツだ。あれって、何で剣舞なんだ? 剣じゃ無い奴の方が断然多いだろうに……」

『そういうところに疑問を持っては駄目だと思いますよ』


 主人公は契約したどっちの精霊も剣になれるから良いけど、ヒロインは鞭とか槍とか弓とかで、剣じゃ無いヤツばっかりじゃん。


「ま、それは良いとして……アン、やっぱり俺が――というか条件を満たしてる俺自身が行かないと駄目か?」

『そうでしょうね。エナ様たちが行っても駄目だということは、メルス様自身で見つけ出さないと駄目ということでしょうし……』


 人海戦術は無駄だったか。
 眷属にも調査を頼んでいたのだが……一旦引き揚げさせよう。


「よし、それなら着替えて出掛ける準備をするぞ。アンは全員を、一度夢現空間に回収しておいてくれ」

『了解しました』


 アンは俺にお辞儀をすると、部屋から出てい……くことなく扉の前に立ちはだかった。


「……あの~、着替えできないんですけど」

『前に体験済みでしょう。今更何を恥ずかしがっているのですか?』

「はいはい」


 俺は目の前にモザイクを作り出してから、着替えを行っていく(刑の時もそうしていたんだからな)。


『……チッ』

「隠すつもりがないなら、そんなにわざとらしく舌打ちしないでくれよ」

『役得ぐらい良いじゃないですか』

「そもそもそんな役職は無い」


 結局アンは俺が着替え終わるまで、その場に待機していた。


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最果ての草原


 相も変わらず真っ黒な草原を見渡してみるが……特殊フィールドの場所が分かるとか、そういうご都合主義は無いみたいだ。


「……で、今日の監視役は誰だ?」

《ぼくとセイでやるよ!》

《お願いしますね、ご主人様》

「あぁ。グラとセイも何か気になる場所を見つけたら、いつでも言ってくれ」

《《了解》》


 二人にそう伝えてから、周囲を索敵する。
 うーん、結構居るみたいだな。
 強者に会えるのなら、とりあえずの準備運動も必要だし……新しい因子でも試すついでに殺ってみますか。

 さて、そう決めたんだし、どの因子を使うとしようか。
 色々あるから悩むんだよな~。

 ……これにするかな?
 俺はあるスキルを共有してから、スキル発動を念じる。

(――"因子注入・【魔獣王】")

 そして、クエラムの持つ因子を自身に注入してみると――


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【魔獣王】因子 10割のオーダーを確認

種族スキル(合成)の使用を許可
種族スキル(金剛)の使用を許可
種族スキル(斬爪撃)の使用を許可
種族スキル(肉体変質)の使用を許可
種族スキル(物魔激減)の使用を許可
種族スキル(吸引強化)の使用を許可
種族スキル(身体強化)の使用を許可
種族スキル(高速機動)の使用を許可

種族スキル(飛翔)の使用を許可
→(天翔)に統合されます

種族スキル(魔纏化)の使用を許可
→習得済みの(魔纏化)に統合されます

種族スキル(高速再生)の使用を許可
→【物体再成】に統合されます

種族スキル(異常耐性)の使用を許可
→【異常反転】に統合されます

……UP GRADE
(聖氣)(聖■の血脈)(聖■の加護)を確認

種族:【魔獣王】の一部を改変可能です
改変しますか? 〔YES〕/〔NO〕

〔NO〕が選択されました

一定量の経験を確認し、種族【魔獣王】複製後に再度確認します

因子を注入します――

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 因子を注入すると、体が作り変えられていく感覚が強くなる。

 暫くするとそれも治まり、力が体から溢れ出す感覚が現れる。

 かつて(龍化)を使った時のように視界が高くなり、四肢を付く状態がベストな状態に変化した。

 自身の腕を見てみると、クエラムのような毛色に変化していた……掌を返せば肉球までバッチリだ。
 ただ、クエラムとしての部分しか注入できなかったのか、竜の尾や悪魔の翼は生えていない。


 しっかし、さっきの質問はなんだ?
 竜人因子の時のこともあったから、とりあえずクエラムから共有しておいたスキルが反応してくれたんだが……。
 最近は事前に確認してくれるようになったので、随分と親切設計になったなーとは思っていたが……遂に二択になったな。
 俺の予想が正しければ、クエラムの元の種族が分かる筈だが……。


「ま、とりあえず今は……経験値を稼いでみるか(――人化)」


 体を人の形に収めて、"収納空間"からセイとグラの本体を取り出す。
 ……やっぱり、二挺拳銃は男のロマンだ。

 折角カッコイイ黒色なので装備の色を黒で統一してから、草原での狩りを始めた。



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