AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者なしのダンジョンイベント その05
「――というワケで主様は現在、殺戮ゴーレムに殴られた傷を癒しております」
「……どんな冒険をしているのよ」
「それに関しては私も同感です。聖霊と契約して眠り姫を起こして魔獣の封印の解き、更には学者をスカウト……最後は別としても、普通はそんなことできませんからね」
「……学者も普通の人には無理よ」
イアは自分の主が理不尽の塊であることを再認識した。
何をどうやったら、そのような状態に陥るのかが全く分からない。
幾ら強すぎるプレイヤーだとしても、運営のこの対応は何かがおかしい。
強過ぎるならば能力を制限すればいいし、わざわざ隔離する必要は無い。
(なら……どうしてメルスは……)
メルス――彼女たちが主従関係を結ぶとその者は、色々な部分がズレていた……。
みんながレイドイベントで苦戦しないように――と、レイドボスを勝手に倒したり。
街が消されるなら奪えばいいじゃない! という思考の元――国家を一つ転移させ。
リア充と非リアが争うなら、争いを止めてみるか――と両軍の大半を殲滅したり。
……とにかく、やることが大胆であった。
(まぁでも、メルスなら隔離もされるか)
先程まで心配していたイアも、彼がしてきたという所業を返り見るだけで、この対応になるぐらい彼は……色々とやってきた。
闘技大会で舐めプした挙句、対戦者が持つ固有スキルを全て習得したり、捕らわれて奴隷にされた村人たちを勝手に強奪して自国の民にしたり、戦闘職に就いたプレイヤーの大半が挑んでやっと倒したエリアボス……の強化版を単独で討伐したり。
プレイヤーたちが知らない情報もあるが、プレイヤーたちの間で囁かれる七不思議の一つ――『謎の無双プレイヤー』とは彼のことであった。
ちなみにだが、レンはメルスが知ったある情報――称号『召喚されし異界の魂』に関しては何も教えていない。
それを知ったプレイヤーたちがどう扱われるかが不明なため、眷属たちに情報漏洩が禁止されていたからである。
もし、イアがそれを知ったなら……彼女の考えも少しは変わっていただろう。
「――さて、準備も完了しました。
皆さん、コアの周りに集まってください」
レンの言葉に、この場にいる全員が動く。
「……全員集まりましたね。
では、ダンジョン改変を始めます」
ゴゴゴ……!
地面が激しく揺れ動き、周りの様子が激変していく。
無骨だった洞窟は整備され、みるみる内に拡張される。
「これは凄い……」
シャインのこの言葉には、プレイヤーたちも同感である。
今まで居た場所が全く異なる物へと造り変わっているのだ。
どれだけの力があればそのようなことができるのだろうか。
現在、ダンジョンの地形は土で出来た洞窟から、巨大な大木の一部へと変化していた。
彼女たちが今いる部分はその大木の頂点に存在する部分で、とても太い枝の中に隠された部屋だったりする。
――ゴゴゴ、ゴゴ、ゴ、ゴ…………
だんだんと揺れが治まっていく。
「……フゥ、終了しました。先程の洞窟型のダンジョンと、主様の考えたダンジョンを入れ替えました」
「え? これ、アイツが考えたダンジョンなの?」
「そうですよ。ここは(主様にとっては)上級者向けダンジョン――"偽・世界樹の迷宮"で御座います」
「世界樹って……私には、ただのログハウスにしか見えないのだけれど」
アルカが言うように、彼女たちの周りはただのログハウスでしかない。
――それはもちろん、外を見ていないから気付いていないだけである。
「では、一度外を見てみれば分かるかと」
レンはそんな彼女達に向けてそう言い、外の景色を見せようとする。
彼女たちも外がどうなったかは気になっていたため、外へ出てみると――。
「な、なにこれー!?」
ファンファン……ファンファン……
何処からともなく、珍百景に登録されそうな物を見つけた時に流れて来そうな音楽が聞えてくる。
彼女たちはそんなことにも気付かずに、その驚くべき光景を見つめている。
……ファン……ファン……ファーーン!!
彼女たちの視線の先にあったのは、満天に広がる星々と世界樹と称される巨大な樹木。
この時初めて、彼女たちは自分の居る場所について、本当の意味で知ったのである。
ファーン……ファーン……ファーーン!!
ちなみにだが、先程から流れているこの音楽もまた、メルスが用意した物である。
初めてここに来た者が出口に行った時のみ発動するように設定した魔道具。
それによって、これは流れている(設定で無駄に苦労したことについては、内緒だ)。
「ここは……宇宙?」
「星……見えるわね」
「綺麗……」
「さすがご主人様だ!」
「……ハァ、まったく……」
「凄ーい!」
六人はそれぞれ別々の意見を言いつつも、同じく景色に感動をしていた。
そこにレンがやって来て、先程の説明の続きを行う。
「"偽・世界樹の迷宮"はそのあまりの高さから、雲を突き抜ける高さとなりました。
階層としては三層構成となっています」
「三層? 少なくない?」
「……貴女たちは、ユグドラシルと呼ばれる世界樹をご存知ですか?」
「えぇ、北欧神話に伝わる木でしょ?」
「これは、それを模したダンジョンです」
「……あぁ、攻略は無理ね」
「俺も理解した。このダンジョンには、九つの世界が存在する……そうですよね?」
「イア、シャイン……正解です」
ユグドラシルとは、九つの世界を内包す存存在とされ、日本では宇宙樹とも呼ばれる程の大きさを持つ。
その広大さ故に、ユグドラシルは三層に分けられている。
このダンジョンはそれを再現しながら作成されたため、三層しかないのである。
「――というワケですので、このダンジョンが踏破される可能性は絶対にありません。
ですから貴女たちには、他のダンジョンの踏破をしてもらいます。お願いしますね」
この言葉に彼女たちは、肯定の意を示すことしかできなかった。
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