AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と元英雄達 前篇



夢現空間 自室


「……ふわぁぁ」

『……ようやく目覚めましたか』

「アン、運んでくれたのか……というか鍵、閉めておいた筈なんだがな」

『メルス様お手製の、ピッキングアプリで開けました』


 ……あ~、あれか。
 魔法によって閉じられた物ならば、魔力の波動を解析して、それに対応した波動で解除の魔法を掛けられるようにプログラムしたものだったっけか?
 だが……もう少し設定を細かくした方が良いみたいだな(余談だが、ょぅι゛ょになった時も鍵はしてあったんだが、あの時はさほど気にしなかった……が、その日の夜を迎えてから思い出してかなりビビった。いつ侵入して来るかと考え、一睡しかできなかったぞ)。


「確か……"完全蘇生"を使って気絶したんだよな? あれって、かなりMP使うもんな」

『はい、一回100万ですからね。メルス様以外使える者は、もう伝説上の人物ですよ。おめでとうございます、そんな伝説の人々の仲間に加わりましたよ』


 ……しっかり調べておけば良かったな。
 とりあえず成功率100%で! って考えたからあの魔法にしたんだけど……(生死魔法)でも良かったのかもな。


「それで、ヒーローさん達はどうなった?」

『彼らは無事に目を覚ましましたので、今は客間に待機して貰っています』

「あっ、待たせちゃってるのか? なら、直ぐに行かないとな」


 待たせるのはいけないな……正直、リア充がどれだけ待たせても『気にしない』と言ってくるのが胸にクルのだ。

 アイツら、絶対リア充だろ?
 モブがリア充を待たせたともしバレたら、世界リア充協会――通称WRS――に生まれてきたことを後悔させられるかも知れない……。


「そういえば待たせると言えば……ネロの方はどうなったんだ?」

『…………では、客間に行きましょうか』

「え? 何か俺に言えないような事態に陥ったの! ネロに一体何が起こったんだよ!?」


 確か、ネロは講習会に送っていった筈だ。
 講習会は前にティルやクエラムも受けている筈だから、特殊なことはあまりしていないと思うんだが……。


「――ま、別にいっか。アン、またスキルを頼めるか? 今回の経験で色々と学べるものがあったから、できるだけ再現してほしい」

『分かりました。では、どういったスキルをご所望ですか?』

「えっと~、まず大切なのが――」


 俺は客間に向かって歩いている間、アンに新しく生み出すスキルについて説明をした。


『……では、眷属の全員で新作スキルについての話し合いをしてきますね』

「おうっ! 楽しみにしているぞ」


 そしてアンと別れた俺は、客間の前まで辿り着いた。
 最低限の礼儀としてノックをした後、俺は中へと入っていった――。

 コン コン コン コン

『どうぞ、お入りください』


 勿論、相手の返事を聴いてからだがな。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ヒーローさんはともかく、他の方達は一応初めましてだな。俺はメルス、ここの主を多分だがさせて貰っている」


 だってこのスキルを創ったの皆だから、本当にそう言って良いか分からないだろう?


『私はアマルです。これからは、気軽にそう呼んでくれても構いません』

『俺はウルスだ』『シャルよ』

『ワタシは女神コラーニに仕える信徒、ウェヌスと申します。メルスさん、ワタシ達を助けて頂きありがとうございます』

「い、いや、気にしなくて良い。俺はただ、自分がやりたいようにやっただけだしな」


 リア充の感謝は目に毒だ。
 その感謝の気持ちにまで、聖氣が籠められているんじゃないか? と疑いたくなる程の眩しさを持っているのだからボッチな俺には厳しいんだよ。


『メルスさん「メルスで良い」……メルス、貴方は私達に、何故ここまでしてくれたのですか? 偽善だけで、本来自身の魔力が切れるまで何かを行うような者はいません。魔力切れは、最悪死に至る物なのですから。メルスには大切にすべき方々がいるようですし、そういった行動は控えるべきでは?』


 マジで!? 知らなかった……。
 ま、そんな答えを求めているワケでは無いだろうし――。

「それは単に、俺の偽善がそこまでのことをしてでも成し得たいことであっただけだ。それに、少なくとも俺は自分の周りで起きた事柄ぐらいは、あの手この手を尽くしてみたいと思うんだよ」


 異世界系の主人公は、主人公らしく世界の命運でも賭けたりしながら、女性とイチャイチャしてハッピーエンドでも目指してもらいたいよ。
 俺みたいなモブは、そんな主人公が世界の命運を変えるのを黙って見ているのが一番なのだろう。
 俺にできるのは精々、そんなことだけだと思ってた。

 だけど、今の俺は少しだけ違う。
 絶対に守るべき存在ができたのだから……守られているイメージしか浮かんで来ないけど、きっとそうに違いない。

 ……うん、さっきの答えには全く意味の無い話だったな。
 どうしてって言われても、答え辛いんだ。
 やりたいからやった……そんな犯罪者みたいな答えで良いと思うぞ。


『……アマル、こいつは考え方が俺達とは根本的に違うぞ。多分だが、日本国民って奴だからだと思うがな』


 ……そういえば、さっきアンが言っていたような気がする。
 ――プレイヤーについて一部話したと。
 だから日本について知っているのか……だけど、それと考え方にどう違いがあるのか俺にはさっぱりだ。


『メルス、俺達と一回戦わねぇか?』


 ……こいつ、脳筋か?
 そんなことを考えていると、先程シャルと名乗った女子がウルスを止めに入る。


『ウルス……アンタねぇ』

『シャル。コイツは一度戦った方が分かる気がするんだ。言葉だけじゃ分からねぇ、コイツの本音が』

『だからって……!』


 俺に悪印象を残さないよう、止めてくれているのだが……確かに一理あるな。
 対話の為に創ってもらった【拈華微笑】は壊れているのか全く機能しないし、戦いの中で分かり合えるという、あれをやってみるとしよう。
 経験を積むのにもちょうど良いだろうし。


「良いぜ、戦おうか。今からちょうど良い場所に案内するから――ついて来い」

『……あぁ。アマル達も力を貸してくれ』

『…………分かりました。シャルもウェヌスも良いですか?』

『……ハァ、しょうがないわね』

『分かりました、同行しましょう』

「決まったみたいだな」


 そうして俺は、四人を連れて修練場へと移動していった。



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