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山田 武

偽善者と元英雄の選択 後篇



夢現空間 礼拝堂


 自己嫌悪に入っている間も時間は過ぎ、再び彼らの体に変化が起こった。

 体の震えが治まると、今まで俺が流していた(聖氣)が体に溶け込む感覚が感じ取れる。

 そして、それと同時に俺から流れるそれをより多く吸収しようと、糸を通じどんどん吸引していく力が籠められていくのが掴めた。


(俺に加護をくれている奴らよ、もし力を貸せるって言うのなら、こいつらを……祝福してやってくれ!)


 この時の俺は、偽善者としても、俺本人素の自分としてもそう思っていた。

 聖氣など、本来偽善など行おうとする者には宿らない。
 俺が現在扱っているのは借り物の力だ……扱える量には限界がある。

 人間は自身に限界を――壁を感じた時、幾つかのパターンの内の一つの行動を取る――

 限界を超える為に自身を磨き、立ちはだかる壁を越えていく。

 自身はもうそれ以上に行くことができないと諦め、ただ壁を見つめる。 

 そして、自身にはできないが頼ればできると考え、誰かを――何かを頼り、諦めながらも壁へ挑む、そんな【矛盾】を抱えた行動。

 ――自分は一を選びたい……そう思っていても、実際に選べるのは二か三だ。

 幾らこの世界がステータスやスキルという個人無双ができる世界であろうとも、無理なものは無理だ。
 ……それこそ、俺が階段をエスカレーターで上るくらいに。

 地球でもこの世界でも、神頼みという言葉がある。
 自身らが頼る中で、最も力を持った存在に願い請う――それが神頼みである。

 しかし、神という存在が加護によって明確に分かるこの世界では、重みも信頼も全く異なる。

 何が言いたいのかというと――。

 ピコーン
《祝福:(■■■の寵愛)を授かりました》

 ――あまり祈りすぎるなということだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
祝福:(■■■の寵愛)

説明:対象の成長速度が高まる
また、スキル習得時の消費SPが-1される

自身が創り上げたアイテムや運命を共にする者が持つ祝福を授かることができる

〔魂の質が上昇し、◇◇時に記憶の保持が可能となる
 正の魔素全てへの適性が上昇する
 また、■■■から常に観られる〕

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 祝福を視ると、思いもしないような記載がされていた。
 ……というより、普通は思わないだろう、そんなこと。

((え? アイテムや運命を共にする者? ……おいおい、どれだけいると思ってるんだ、そんな奴らをさ!!)


 それを察した時、当然のように――。

 ピコーン ピコーン ピコーン ピコーン……

《加護:(虫神の加護)を授かりました》
《加護:(蟲神の加護)を授かりました》
《加護:(火神の加護)を授かりました》
《加護:(炎神の加護)を授かりました》
《加護:(鬼神の加護)を授かりました》
《加護:(光神の加護)を授かりました》
《加護:(煌神の加護)を授かりました》
《加護:(普人神の加護)を授かりました》
《加護:(水神の加護)を授かりました》
《加護:(氷神の加護)を授かりました》
《加護:(蜘蛛神の加護)を授かりました》
《加護:(粘体神の加護)を授かりました》
《加護:(武神の加護)を授かりました》
《加護:(戦神の加護)を授かりました》
《加護:(死神の加護)を授かりました》
《加護:(暗殺神の加護)を授かりました》
《加護:(銃神の加護)を授かりました》
《加護:(隠神の加護)を授かりました》
《加護:(音神の加護)を授かりました》
《加護:(狩猟神の加護)を授かりました》
《加護:(獣人神の加護)を授かりました》
《加護:(魔人神の加護)を授かりました》
《加護:(冥神の加護)を授かりました》
《加護:(精霊神の加護)を授かりました》
《加護:(聖霊神の加護)を授かりました》
《加護:(夢魔神の加護)を授かりました》
《加護:(龍神の加護)を授かりました》
《加護:(聖■の加護)を授かりました》
《加護:(剣神の加護)を授かりました》
《加護:(月鎖神の加護)を授かりました》
《加護:(死霊神の加護)を授かりました》
《加護:(骨神の加護)を授かりました》
《加護:(探求神の加護)を授かりました》
《加護:(研究神の加護)を授かりました》
《加護:(闇神の加護)を授かりました》
《祝福:(■■■の注目)を授かりました》

 ピコーン

《統合祝福:(神々の加護)を授かりました
 神より授かった加護は、一部を除き全てがこちらに格納されます》


 ――人は真に驚いた時、何もできぬまま立ち尽くすことになる。
 現在の俺が正にそれであり、糸に(聖氣)を流すことしかできない状態にあった。

 ……というか、ゾンビさん達を祝福して欲しいと願った筈なのに、どうして俺が祝福されているのだろうか。
 神様達はしっかり、ゾンビさん達に祝福をくれたのかな?


 彼らの方を見てみると、色々と変化が発生していた。

 少し闇色が混ざっていた髪色は、純白の光が闇色を梳かしていき、鮮やかな物へと変化していく。
 装備している武具も、くすみが取れ、聖なる力が今にも感じ取れそうだ。 
 そして何より、彼らの体の周りに白いオーラが溢れ出し、身を包みだしている。


 どうやら神様がなんとかしてくれたみたいだな。
 そう考えた俺は、そろそろ限界であった(聖氣)の発動を終了し、糸を仕舞う。

 そして、安全な場所にこっそり空間ごと隔離しておいた彼らの魂を運んで、スッと彼らの胸の部分に置いておく。

 ズズズズッ

 すると彼らの魂は器となる肉体に戻り、定着を行っていく。

 それを確認した後、彼らの復活の為に一つの魔法を発動させると、体力の限界からなのか気絶をする俺であった。


「――(禁忌魔法)"完全パーフェクト・蘇生リザレクション"!!」



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