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山田 武

偽善者と『不死魔王』 その07



SIDE ネロマンテ
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 いつからたがったというのだろうか、吾が今まで歩んできた道は。


 吾はある時、そこに発生した……理由など分からぬが、吾がそれを自覚した時にはそこに存在したのだ。

 そこは小さな穴の中であった。
 穴の中には大量の骨が散らばっており、その全てがバラバラな状態であった。
 そんな足の踏み場も無いような場所で、吾はただ立ち尽くしていた。

 自分はどんな姿なのだろうか。
 そう思った吾が見たのは、周り散らばる白い骨と違って禍々しい黒色の骨……そう、骨だけしか見えなかったのである。
 その時の吾は何も知らなかった為何も思うことは無かったのだが、今思うとそれは蠱毒であったのだろう。
 周りに散らばるスケルトン達を全て倒し、その経験を呪力として取り込んだ存在……それが吾だったのだと考えている。


 穴を抜けた吾が行ったのは、自身の力を確かめることだった。
 そして、最終的に吾は幾つかのことを学んだのだ……どれだけ驕った者であっても必ず最期を迎えることと、魂魄という概念についてだ。


 吾は自身の色からなのか、闇や呪系統の能力を扱うのに長けていた。
 その力を使うことで吾は驕れる者達を倒し続ける。

 吾がそんな能力の中でも、最も気に入ったのは死霊を操る――【死霊魔法】であった。

 自身が倒した相手や、辺りに落ちている死体達を操ることで、自身が動く必要無く勝利する。
 吾はその力を好み、使い続けていった。
 そのように戦い続け、再び驕った者を吾の軍勢に入れた時、ふと思ったのだ――。


(――そもそも、何故アンデッドは存在するのか)


 吾は長い時間を掛けてそれを知った。
 アンデッドとは、死体や霊体が負の魔素であるミヌスが溜まることでできる擬似的な魂魄に、動かされている状態の者の総称だ。
 ミヌスについては、全くという程分かることが無かった。
 吾も調べようとしたのだが、分かったのは死や呪を司ることと、それが邪属性と呼ばれる、吾でも扱えない力を持っていることだけであった。

 【死霊魔法】にはそんなミヌスの内、死に関する情報にのみ干渉する権限が与えられており、アンデッドを操ることが可能になっていたのだ。

 だが、吾が興味を持ったのはそんな解明不可能と思われるミヌスでは無い。
 ミヌスが溜まることによってできた魂魄という存在だ。

 魂魄は、全てのものが持つ個人の経験の全てだと吾は考える。
 それを調べる為吾は穴の周辺から離れ、大陸を一周し――最後には異なる大陸へと移動した。

 本来ならそんな崇高な存在、例え吾のようにミヌスを一部とはいえ扱える者であっても見ることができない筈だ。
 だが、吾の尽きることの無い探求心が、一つの能力を目覚めさせた。

       "魂魄眼"

 その眼は、あらゆるものの魂魄の輝きを視ることができた。
 吾はそれを手に入れ、使う度に叫んだ。

 あぁこの世界の強者達は、ここまで魂魄を輝かせれるのか、と歓喜を叫び。
 あぁ何故我の魂魄は、彼らと違い強い光を放たないのか、と嘆き叫んだ。

 長い旅を行う間に、吾は更なる情報を知っていった。
 魂魄はスキルを受け入れる為の器であり、その者の存在の格を表すものであった。
 魂魄が輝く者程、潜在的な力を大きく秘めた者であり、名の知れた強者であることが多かった……だが潜在的な力が大きい者を視ていると、普通の者と違う点が見受けられることがある。

 輝きも、全く同じというワケでは無い。
 若い者程その輝きは白く純粋で、様々な経験を積んだ者程様々な色を持っていた。

 潜在的な力が大きい者の大半は、白光を眩い程に放っているのだが……極偶に生まれたばかりの存在が、様々な経験を積んだような色を放っていることがあったのだ。

 それらの魂魄の持ち主は、過去の経験や知識を一部やそのまま持った状態で生まれてくることが実験の末、理解できた……だが、ここで再び吾は思った――。

(――吾が死んだ時、新たな吾は今の経験をはっきりと覚えているのか)

 その考えに至った吾には、身が凍る程の恐怖となんとしてもどうにかしなければという強迫観念が生まれていた……絶対に見つけなくては、吾が吾として転生する……その為の方法を。

 今となっては、ここが分かれ目だったのだろう。ここで別の選択を取っていれば、吾には違う道があったのだろう。
 だが今の吾は選択してしまった――他者を踏み躙ってでも、自身の目的を大成しようという……その選択を。


SIDE OUT

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 ――という考えがあったらしいな。

 俺はシャインにやったように、ネロマンテに"奪憶掌"を発動させて過去を覗いていた。
 ネロマンテが今までに行っていたのは、それはもう地球だったら即死刑と言われる位にはマッドな研究であったらしいな。

 魂魄の研究をするとして、それが見るだけで分かるものなのだろうか……答えは、多分否だ。
 戦場の中で強者の魂を漁り、姿を偽り転生者を探し、魂魄という未知の物を見つけ出す為に未知以外の部分を限り無く切除し、逆説的にそれを見つけ出そうとしたりと、色々なことをやっていたみたいだ(ネロマンテは転生者を見つけていた。それがこの世界の者が転生した者か、異世界転生者かどうかは分からないが、それでも転生者は実在していたぞ)。


『……う、うぅ』


 おっと、そろそろ目が覚めそうだな。
 俺は【謙譲】で記憶をネロマンテに戻してから、目覚める瞬間を待つことにする。



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