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山田 武

偽善者と刑



メル・・様、起きてください。朝ですよ』

「……ん、んぅ? もう朝なの?」

『はい、ですから起きてください。着替えの方も用意してありますよ』

「自前があるから良い」


 俺はそう言って、昔自分で作った服(勿論RANK:S)を"収納空間"から取り出して着替える……のだが――


「――ねぇ、いつまでそこにいるの?」

『まぁまぁ、良いではありませんか』

「……貴女は逆に、見られても良いと思っているの?」

『前にも言いましたが、わたし達はメル様に好意を持っています。好きな人に体を見られて、何か問題がありますでしょうか。
 ……勿論恥じらいは大切なのですが、わたし達に全く手を出さないメル様には関係ありませんね』

「……そ、ソウデスネ」

『……ハァ、では着替えも終わったみたいですし、そろそろ居間に向かいましょうか』

「そうだね、逝こうかな」

『大丈夫です、とても似合ってますよ――そのワンピース』


 そう、今の俺の風貌を説明すると――
 髪は白黒混じりのロングヘアー。
 目は……何色なんだろうね、分からん。
 身長は大体120cm。
 華奢な体はギュッと抱きしめると折れてしまいそうな儚さを感じさせる。
 着ているのはキリスト教の聖職者が着るというアルバ、面倒だからキャソックは着ていない(昔、調べたことがあるんだよ)。


 そして、いつも俺を下から見守っていてくれた筈の息子は……お亡くなりになった。
 それは勿論、今の俺が少女だからである。


「……ねぇ、本当にこの状態じゃないと駄目なの?」

『はい、それが昨日の判決では無いですか。大人しく今日一日は、その格好のままでいてくださいね』


 そんなTSな今の姿は、俺が望んだことでは無い。
 昨日下された判決の結果であった。


『メルス様には明日一日中、少女になって貰います。そうでもしないと、反省しませんからね』


 ――とのことであった。
 でも、別にこれも気にすることじゃ無いんだけどな。
 前に少し言ったが、俺は【聖女】を試す為に女体化したことがある。
 その時にまぁ色々と試してみたのだが、特に恥じらいを感じることは無かった。
 ……いやまぁ、人並みの恥じらいは感じられるが、別に気にしないって感じだ。
 分かり辛い例えを挙げるなら……そう、女子が着替え中の教室で、平然と読書をしている男子ぐらいの感じだな。
 ……うん、とても分かり辛いな。


閑話休題実体験


『……と、言うワケでメル様です』

「今日一日、女の子として過ごします。メルと呼んでね。よろしくおねがいしまーす」

『『…………』』


 居間に入った時にそんな挨拶をしたのだが……眷属達の反応は、冷たいものだった。
 やっぱり俺なんかが女の子になっても、誰も嬉しくないよな……そうか、それこそが刑になっているのか。


 ちなみに、実際眷属達はこのような感じであった。


ティル
《ちょっと、何であんなに可愛いのよ!》

グー
《因子の時と同じなんじゃないかな? 性別が女性になったから、<畏怖嫌厭>が発動しなくなったとか……あっでも、今回はシーの魔法だから肉体が改変された訳じゃ無いのか》

シー
《た、多分、イメージの問題じゃないかな?  メルちゃんが考えた女の子のイメージをそのまま再現できたら、可愛い子になって当然だと思うよ》

セイ
《お嬢様はオタクですから、色んなキャラを知ってますし、イメージも簡単そうですね》

ヤン
《……カメラアプリが使えないんだけど》

アン
《わたしもメル様が着替えている最中に試したのですが、使えませんでした。
 恐らくメル様が事前に使えないよう、設定したのでしょう》

グラ
《おじょうさまはヨウイシュートーだね》

リー
《……勝ちました》

ギー
《リー、メルは機能性を重視して電車型にしたんだよ。多分だけど、普通に大きさを変えられると思うよ》

スー
《……リー、泣いちゃダメ》

ユラル
《メルルン、とっても可愛いね。結局あの子は誰をイメージして変身したんだろうね》

リア
《女として負けた気分だよ……特定するのは難しいと思うよ。メルは人の顔を認識するのが得意じゃないから》

クエラム
《……己もあぁした方が良いだろうか》


 眷属達が黙っていたのはメルスの風貌がかなりのものだった為、動揺していたからのようだ。
 実際二次元のキャラをイメージして創られたメルは、上の中ぐらいの容姿であり、眷属達と比べても変わらない、綺麗さと可愛さを兼ね揃えた。



 さて、挨拶も終わったし、いつも通りの活動を始めるとするか。
 ……偶にWifoneをこちらに向けている眷属もいたが、恐らくカメラを使おうとしていたと思われる。
 きっと俺を脅す為に記録しようとしていたのだろう……だが甘い。
 こんなこともあろうかと、事前にカメラ系の機能は全て封印しておいた。
 これで黒い歴史として残ることは防げたな……別に気にしないけど。


「さ、朝飯にしましょうか!」


 俺はそういって、朝○ックのメニューを居間のテーブルに並べる。
 別にいつもそれだけと言うワケでも無いのだが、今日はなんとなく無性に食べたかったので、それにしてみたぞ。


「てをあわせてくださいっ!」

 パンッ!

「おいしいちょうしょくいただきますっ!」

『『いただきますっ!!』』


 細かいことは、朝飯を食べた後考えよう。



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