AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と『魔獣之王』 その07
「とりあえず、これを」
『……え、な、なななっ!?』
先程までボーッとしていた鎖さんの足元に服を置いておく。
そして後ろを向いて、先程確認した鎖さんのステータスを思い出す――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ステータス
名前:ティルエ・リュキア・ハワード (女)
種族:獣人族 Lv20
職業:【獣剣聖姫】Lv20
 HP:1600/1600
 MP:360/360
 AP:920/920
 STR:1100
 VIT:800
 AGI:1300
 DEX:210
 INT:120
 LUC:40
スキル
(剣術)(短剣術)(大剣術)(双剣術)(獣剣術)
(刺突剣術)(片手剣術)(両手剣術)(飛剣術)
(曲剣術)(蛇腹剣術)(騎士剣術)(手刀術)
(聖剣術)(獣化)(人化)(俯瞰)(夜目)(遠視)
(視覚強化)(嗅覚強化)(聴覚強化)(気配察知)
(危険察知)(身体強化)(並列行動)(肉体制御)
(物理加速)(空間把握)(氣闘法)(縮地)(跳躍)
(疾駆)(統率)(見切り)(気配遮断)(空中制御)
(俊敏)(俊足)(韋駄天)(立体軌道)(斬撃強化)
(瞬歩)(切断強化)(瞑想)(回避)(礼儀作法)
(戦舞術)(生活魔法)(禁忌魔法)
固有
【獣剣聖姫】
\(聖氣)(ステータス補正:聖剣)
〔祝福〕
〔(獣人神の加護)(剣神の祝福)
(月鎖神の祝福)〕
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なんともまぁ……剣尽くめなスキル欄だったな。これもまた、一種の極みだよ。
人形から出てきた鎖さんは、腰に剣を一本拵えた状態で現れた……生まれたままの姿でだが。
身長は150ちょい位、髪は肩に掛かるぐらいの長さ。
シルバーがかった茶色の髪に、黄緑色の円形に収縮する瞳孔。
――そして、頭の上にピョコンと生えた猫耳。眷属にはいない種族の獣人さんでした。
ちなみにだが、俺が祝福したくないと強く願ったからか(不明の○○)はスキルに入っていないようだ。
さすがにそこら辺は、自由意思に任せておきたかったんだよ。
「なぁ、彼女のことを見た記憶はあるか?」
『……薄らとだが。己に立ち向かった来た獣人が、彼女のような姿だったと思う』
「やっぱり思い出してきたのか。思い出せないことがあったのは、あの靄が原因か」
『しかし、まだ全てを思い出せたワケでは無い。しっかりと確認せねば』
「そう、だな」
そんな会話をしながら、俺達は彼女が着替え終わるのを待っていた。
『――あれ? この服どうやって着るの?』
……"不可視の手"発動。
お着換え中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『……ふぅ、やっと着れたわ。でも、良いデザインね』
「そうか、なら今度ご要望の物を作るよ」
『って貴方が作ったの!?』
「ん? 何か問題でもあったか?」
『い、いえ、問題無いけど』
「……そうか」
彼女が俺の作った服を気に入ってくれて何よりだ。
ヴァレン何某さんの格好をパクったようなデザインなのだが、実際に職業に剣姫がついている彼女にはピッタリだったな。
そんなほのぼのとした会話を俺としていたのだが、ふと周りを確認すると、剣を抜刀して警戒状態に移りだした。
『ッ! 貴方は、あの時の!! そんな、どうして……確かにあの時封じた筈……って、どうして私も元に戻っているのよ!』
彼女はそう言って、何かに悩むような顔をし始めた……今更だな。
どうせなら目が覚めた時に、そのセリフを言おうよ。
「少し、待ってくれないか? 相手に戦闘をする意思が無いのは分かっているだろう?」
『それは……確かにそうみたいだけど。というか、貴方も誰なのよ』
「おっと、説明が遅れたな。俺はメルス、そちらの魔獣さんはクエラムだ」
『……メルス、初耳なのだが。己はクエラムと名乗ればいいのか?』
「どうせならタイミング良く言いたいと思ってさ……駄目か? その名前」
クエラムとは、ラテン語でキメラを表す言葉である。
安直だが、俺は良いと思ったんだ。
『いや、良いと思うぞ……クエラムか。本当に、己はそう名乗っていっても良いのか?』
「当たり前だろう……というか、名乗って貰わないと俺が困る」
『なら、仕方ないな』
魔獣さん――クエラムがフッと笑ってそう言う。……本当に笑っているのか、良く分からないけどな。
『……ねぇ、私のこと忘れて無い?』
「『……あっ』」
完全に彼女のこと、忘れていたな。
「……すまないな。反省してる」
『まったく、人の話はしっかりと聞くものよ……私の名前はティルエ。正式には、ティルエ・リュキア・ハワードよ。そんな堅苦しく呼んで貰う気は無いから、気安くティルとでも呼んでくれれば良いわ』
「そうか、よろしくなティル」
『よろしく頼むぞ、ティルエ』
……さて、ここからが本番だ。
「ティルも気になっていると思うけど、クエラムは正真正銘ティルの国を襲った魔獣だ。
……待って待って剣を抜かないで、そこら辺の部分も込みでしっかり説明するから」
それから俺は、ティルにこれまでにあったことを簡単に纏めて説明した。
この島には強者が封印されており、そこを巡っている俺が偶々ここに来てクエラムと関わったこと。
そして、そこで聞いたクエラムの話――
マッドなサイエンティストに捕まって洗脳されたこと。
洗脳によって操られた自我も持たないままに、ティルの国を襲ったこと。
そして、ティルによって封印されて気付けばここにいたこと。
俺と出会い、洗脳が解かれたこと。
――そういったことを、ティルへと話していった。
クエラムは全く悪くないというワケでは無いが、罪を背負うのは間違っていると思う。
だからせめて、その罪の意識を軽くしたいのだ。
そんな一心で、俺は彼女に説明を続けた。
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