AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とスライム因子
暗い。おかしいな~m確かに真っ白な光の先に進んだ筈なんだけどな~。
俺は今、真っ暗な世界に再び戻っていた。本当に何故だろうか、そんなことを考えていると――
《メルス様、お目覚めですか?》
念話を使ったのか、アンの声が頭の中に響いてきた。
「(おう、アンか)」
《おう、アンか。……じゃありませんよ!!
メルス様が一体何をしたか分かったいるのですか!?》
「(えぇ? いきなりどうしたんだよ。俺も何でこうなったかを凄く聞きたかったんだが……)」
《自覚が無いなら教えましょう。メルス様、貴方は脳を酷使しすぎて、血溜まりができる程失血していました》
《血液が体から出過ぎて失血死をしかけていたので、(適応)を行いました》
《その結果、血液の不要な種族――スライムの因子が注入され、メルス様は現在、スライム状態になっています》
……あぁ、めのまえがまっくらになっているのはその所為か。大魔王なスライムも、最初はこんな感じだったらしいしな。
確かに、視界は一寸先すら闇に包まれているが、【六感知覚】を発動すると、闇が一気に晴れて周りの状況が掴めるようになった……のだが――。
「(……で、俺はどうして、お前に膝枕をされているんだ?)」
《…………黙秘でお願いします》
「(そ、そうか……)」
そういえば、言えないことは言わなくても良いとか言ったな、前に。
俺としては嬉しいから別に良いけどな。
「(なら良いけど。ところで、俺はいつまでこの状態でいればいいんだ? 別に問題が無いならすぐに解除するけど)」
《え? あ、えぇ、意識が戻ったなら、もう大丈夫でしょう。どうぞご自由に》
アンから許可も出たので、因子を解除して元に戻ろうとしたのだが――。
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一定以上の経験量を確認
種族スキル(スライム)の作成を試みます
……成功しました
(溶解)は(スライム)に統合されます
(吸収)は(スライム)に統合されます
(圧縮)は(スライム)に統合されます
(分裂)は(スライム)に統合されます
(擬態)は(スライム)に統合されます
(血液不用)は(スライム)に統合されます
(痛覚無効)は(スライム)に統合されます
(殴打無効)は(スライム)に統合されます
(刺突無効)は(スライム)に統合されます
(細胞強化)は(スライム)に統合されます
(細胞再生)は(スライム)に統合されます
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「(アン。俺、何かしたっけ? スライムが種族スキル化されているんだけど。これって、何かしないと経験が入らないよな?)」
むしろ、何もしないで意識がブラックアウトしていた筈だ。一体何故?
しかし、それが分からない主とは別に、答えをアンは推測していたらしい――
《恐らく、先程使われた【六感知覚】の影響でしょう。今のメルス様は周りの光景が認識できていますよね?》
「(そうだな、上を意識すればお前の可愛い顔が見えるぐらいには見えているぞ)」
《……げ、現在のメルス様は本来なら何も見えない状態の筈です。【六感知覚】で集めた情報を、擬似的に視覚として再現し、メルス様は周りを見ることができています》
お、反応したぞ。顔を見ると真っ白な肌が少し赤くなっている。手応えありだ。
《【六感知覚】の情報を処理するのに、(細胞強化)を使用したのでしょう。そのスキルは、細胞一つ一つを筋肉や脳細胞として扱えるようになるスキルらしいので》
「(……ってことは、そのスキルを使えば脳を酷使するということが無くなるのか)」
フニフニ プニョプニョ
俺がそう言うと、アンが無言で俺のスライムボディーを触り始めた。……あ、かなり気持ち良さそうだ。
「(おいおいどうしたんだよ。もしそれが可能なら、俺はもっと強くなれるんだぞ?)」
《……どうして、そこまでして強くなろうとするのですか?》
「(あ、それはn……)」
質問を質問で返されてしまった、少しおどけて返答をしようとも考えたが、その時に見たアンの顔がかなり真剣なものだったので、俺も真剣に答えることにした(でも、体は触られたままだぞ)。
「(……この島にいる強者に届く為という理由もあるが、一番は眷属の為だ)」
《わたし達の?》
「(多分だが、お前達はこれを聞いても拒むんだろう。でもそれでも一応言っておく。俺はお前達を守る気でいる)」
《…………》
「(こっちの世界の眷属は俺にとって家族だ。
お前達を守る為なら、俺は命を懸ける事も覚悟している。だが、今のままだと恐らく力が足りない。一騎当千の猛者や積羽沈舟な軍勢を相手に……俺は勝てる自信が無い。
だから力を蓄える為、まずは魔法に関する力を磨こうとしていたんだ)」
目指せ、尽くす系男子!
尽くす為には尽くすなりの覚悟が必要なのだと考えている俺なのだが、覚悟だけでは何もできない時がいづれ来るのだろう。
俺の家族を守る為に、力はどれだけあっても困る物では無いので、現在鍛錬中と言うわけなのだ。
だけど、そんな守る側の理屈は守られる側には通用しないみたいだな。
《メルス様は、分かって言っていますね? わたし達がそれを拒むことを。
当然ですよ、貴方の眷属にただ守られるだけで満足な者など、一人もいませんよ。
メルス様はただハーレムを築いていけば良いのです。わたし達にとってはメルス様を守り、強くする者が増えて、メルス様にとっては愛する者が増える……まさに一石二鳥なのですから》
何でだろう。途中までは凄いシリアスな話だった気がするのに、最後がハーレムを増やす話にすり替わっていた。
「(ど、どうしてそういう話になるんだ?)」
《……? 何か問題のある内容でしたでしょうか? どちらにとってもWinWinな話だったと思うのですが》
「(お、俺だって、手当たり次第に手を出している訳じゃ無いんだからな。本当に欲しいと思った女性に近付いているだけだ)」
こっちの世界の女性達が俺のストライクなゾーンすぎるからそう見えるだけで、今でも俺は【純潔】を取れるぐらいに桜桃なんだ。
百歩譲っても【強欲】に自分だけの女性にするので精一杯だ。
そう、それはまさしく――Yes,スカウト NO,タッチなのだ!
《……これを本気で言っているから、メルス様には困らせられるのです(ボソッ)》
「(何か言ったか?)」
《いえ、何でもありません。……とにかく、わたし達もメルス様の為に強くなろうと努めています。今はそれを分かってください》
最近、理解させられることが多い気がするな。だけど、良くあるよな――守られているだけでは無いヒロインって。
「(……前向きに検討しておくよ)」
《それ、絶対に分かる気ありませんよね》
「(…………)」
失礼な、本気でこれを言ってる政治家さんに謝りなさいっ!
俺は、そんなツッコミ満載のセリフに正しい反応をしたアンに、心の中でツッコンでいた。……ちなみに、そんな話をしながらもまだプニプニしているアンなのであった。
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