AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
04-51 撲滅イベント その29
──竜殺し。
俺がログイン初日に、エリアボスとして配置された亜竜を倒した結果得た称号。
未だにいっさいレベルを上げていない……いや、上げられていないスキルでもある。
大半のスキルは行動によって、経験値を得てレベルを上げることができる。
リーこと『神呪の指輪』は、その経験値を同系統のスキルに限り分配可能だ。
だが、竜殺しスキルはそれがかなり特殊。
レベルを上げる条件は名が示す通り、竜を殺すことのみ……ずいぶんとまあ、血に塗れたスキルである。
似たスキルとして強者殺しも持ってはいるが、別種のスキルとして判断されていた。
なのでレベルは初期値のまま、1で止まっている。
スキルの効果は竜系統の存在と相対したとき、威圧を常時展開可能というもの。
……こちらは偽善的には不要なので、普段からOFFにしてある。
そして能動的な効果は、竜系統の存在と戦闘時、攻撃力を強化するというモノ。
スキルレベルに応じ、0.03から約3倍ほどまで火力を加算できるのだ。
──だが、まだもう一つ能力がある。
竜との相対時に常時発動する効果として、条件付きの全能力値強化が存在するのだ。
その条件とは──竜を殺すこと、そして強化度合いは殺した竜に比例する。
亜竜は含まれないようで、残念ながら今の俺はそちらの効果はまったく使えない。
だが、幼いとはいえ純粋な竜であれば……条件を満たし、強化できるようになるかも。
そんな淡い期待が、あったのだろう。
単独で討伐しなければならないという条件もあるため、俺は眷族たちを呼ばずに独りで挑むのだった。
□ ◆ □ ◆ □
『ピュイッ、ピュイッ、ピュイッ!』
連続して息吹を吐き出し、俺の四肢を潰そうとする幼竜。
俺はそれを反射魔法で築いた盾にぶつけ、主である召喚士の竜人へ向ける。
「ふっ、おれが何回その息吹を受けたと思っている!」
「……虚しいな」
「う、うるさい! というか、こっちにぶつけようとするな!」
未だに『滅魔結界』を壊そうと頑張っていたので、隙だと思っていたんだけどな。
武技を使わず、軌道を逸らすようにして息吹を跳ね除けていた。
『ピュキュイッ!』
「遠距離がダメなら近距離化か……なら、こちらもそうしようか」
「ちょ、あな……っ!」
素が出かけた原因は、俺が『模倣玉』をとある武器に変化させたからだろう。
緑色の、ドラゴン系の敵にとても強い──『たのもしい剣』である。
「それ、ドラゴンスレイヤ──」
「皆まで言うでない。竜を討伐するといえばこれ、これと言えば竜を討伐するに相応しいだろう。しかし……やけにノリがいいな」
「っ…………」
しまった、みたいな反応をされてもな。
さらなる尋問を続けたいところだが、その反応だけでなんとなく察しが付いた。
「後回しでいいだろう。今は貴様だ、幼竜。手加減はしてやるから死ぬなよ?」
《──“峰打ち”、『超竜斬』》
イベントで視た武技と、装備固有の能力を同時に発動させる。
精気力が剣をカバーし、その内部で竜を殺すエネルギーが生成された。
ちなみにドラゴン……は、竜特化というスキルでダメージが+20%、そして今回の装備能力“超竜斬”を使うと素の攻撃力の4倍分のダメージを与えられる。
だが、それではオーバーキルとなるだろうし、一つ目の武技が効果を示す。
……っと、説明の前にまずは当てないと意味が無いか。
『キュイィイイ!』
「反射眼を使っている以上、視覚に収まった貴様に勝機は無いのだがな……」
攻撃を躱し、逆に剣の突きを掠らせる。
鱗の一枚を狙い、それ以外をいっさい傷つけずに行うそれは、我ながら神業だなぁ……と思ったりした。
そしてそれは、見事に成功。
俺の横を通り抜けた幼竜は、その後すぐにヘロヘロと地面に倒れ伏した。
「ルビー! ちょっと淫獣、あんたいったいルビーに何をしたの!?」
「口調はそのままでいいのか? 安心しろ、峰打ちにしておいた。召喚士の従魔は死なぬとはいえ、配慮ぐらいはする」
「……ッ! も、もういいわよ! こうなったら、アレを使うしか……」
ぶつぶつと何かの準備をする彼女。
なので、俺のしていることに気づかない。
何もない場所から取りだすのは、紐を編んで作られた──鎖。
幻想的な色を帯び、存在しないモノを組み込んだそれを……名と共に放つ。
「──『縛れ』、[グレイプニル]」
「な、なにこれ……ってグレイプニル!?」
「やはり分かるか。神を喰らう狼すらも律する、神話の産物。ふっ、スキルが使えないだろう? 相応の対価を支払ったからな」
「ムカつく……」
グレイプニルが? やれやれ、自分の知っている物にやられたのだ、しょうがないか。
自動追尾と気配感知機能があるので、一度ロックオンしたらどこまでも追いかけるぞ。
俺の仕事はシンプル、エネルギーを供給して合言葉である『縛れ』を言うだけ。
まあ、俺に捕縛の才能が無いことを確認済みなので、仕方ないのである。
「ちょっと、これを外──!」
「スキルの効果が切れた影響か? ずいぶんと見やすくなったものだ」
「っ……!」
「神すらも律する鎖と言っただろう? 縛られている限り、恐れる事態にはならない。さて、外せと言ったか? 確認するが──本当に良いのだな?」
言いづらそうな話にようやく辿り着く。
鑑定眼で覗いた際、彼女が抱える問題っぽい記述を見つけていた。
試練その三(笑)。
その内に秘めた真実を、打ち明けてもらおうか……。
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