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山田 武

04-23 撲滅イベント その01



 リア充と非リア充による、互いの撲滅を賭けて行われる──撲滅イベント。
 祈念者たちはそれぞれの派閥に属し、一時間という猶予を与えられ舞台へ転送された。

 そして、一時間が経過する。


 ピンポンパンポーン
≪さぁ、待たせたな両軍共々!
 ──リア充狩りの始まりだぜぇええ!!≫


 運ばれた遠く先に見つけたのは、狙うべきターゲットたち。
 たとえパーティーメンバーであろうと、今だけは正義の名の下に成敗できる。

「──諸君、今こそ時は来た! 憎きリア充どもは山の上に立て籠もり、パートナーと私たちをオカズ・・・にしゃれこんでいるだろう! 許されるだろうか……否、否である!」

「我らは血の結束を誓いし同志! 故に彼ら異端者に許される道理は無し! 武器を取って、力を示せ! 運営は私たちの味方、すなわち勝者は我らである!!」

『ウォオオオオオオオオオオオオッ!!』

 非リア充グループを指揮する女性により、彼らの意志は一つに纏め上げられていた。
 遥か高みに居るであろう怨敵に、磨き上げた力を振るおうとしている。

 すなわち──リア充死すべし、と。

「同志よ、同朋よ、盟友よ。目指すはリア充の住まう失楽園。私たちは絶対に勝つ、そして──奴らは晒し者だぁああああ!」

『ウォオオオオオオオオオオオオッ!!』

「行くぞ──全軍突撃ィイイイ!」

 非リア充グループは猛々しく突貫する。
 なぜ自分たちがこんな状況にあるのか、なぜ彼らはあのような場所に居るのか。

 その想いを原動力に、彼らはただひたすらに彼らの居る山目掛けて駆け抜ける。
 滅べリア充、死に晒せリア充ども! 彼らの意志は一つとなっていた。



  ◆   □   ◆   □   ◆



 ピンポンパンポーン
≪さぁ、待たせたな両軍共々!
 ──リア充狩りの始まりだぜぇええ!!≫

 同時刻、山頂にて。
 リア充グループもまた、平原から山へ向けて駆け上がってくる非リア充グループたちの姿を捕捉していた。

「なぁなぁ、本当に上手くいくのかな?」

「ったりめぇだろ。こっちのグループは天下の『ユニーク』様が指示してんだぞ? も候グループがアイツらの情報を事前に暴いていたのも、指示のお陰なんだからな」

「けど、七百だろ……そんなの相手に俺たち魔法グループがどうすりゃ──」

「あっ、それさっき千だって言ってたぞ。制限付きだが、スゲェ探知能力のあるスキルだかで分かったらしいぞ」

 攻撃魔法を担当する彼らは、非リアグループへの先制攻撃を行うための準備を行う。
 どのタイミングで攻撃をすればいいか、それらはとある祈念者によって暴かれている。

 本当に成功するのか、心配をする彼らはこの後グループの代表者の指示を受けて、非リアグループに向けて攻撃を放つ。

「──あんたたち、合図が来たら一番遠くに届く魔法を使いなさい! 支援魔法で射程が伸びるから、大抵のものは届くわ!」

 代表者である金髪ツインテールの少女──【思考詠唱】スキルを持つアルカ。
 彼女は[ウィスパー]で指示を受けたこのタイミングで、魔法を放つように告げる。

 率先して魔法の構築を始め、空に展開するは数重を超える大規模な魔法。
 他の祈念者たちが同等の魔法を構築しようとすると、その数は五つにも満たない。

 それを可能とするのが【思考詠唱】。
 魔法発動に際し生じるすべての処理を、脳内だけで済ませることで大幅に構築時間を省略するスキルだ。

 彼女の場合、スペックの高さとスキルの恩恵によって脳の処理効率を上げて同時に発動できる魔法を数を増やしていた。

 アルカこそが、全祈念者の中でもっとも上手く強く魔法を使える。
 それが祈念者にとっての常識になるほど、彼女の腕は卓越していた。



 祈念者たちは魔法を待機状態にして、合図が来るのを待つ。
 そして一度、非リアグループを見下ろしていた彼らの背後で爆発が起こる。

「──まだ撃つんじゃないわよ。ここで撃とうとしたら、魔法は消すから手柄が無くなると思いなさい」

 一度目の合図は支援魔法の合図。
 それによって、その系統に属する魔法を使う者たちがいっせいに魔法を施していく。

 攻撃魔法の威力を上げるため、補助として掛けられた支援魔法。
 時間制限があるものの、攻撃魔法の使い手には一切のリスクの無いというものだ。

 そして、二つ目の合図が起きる。

「今よ、ぶっ飛ばしなさい!!」

『──────ッ!』

 自分たちが準備していた魔法を、いっせいに解放する。
 色とりどりの光を放ったそれらは、勢いよく非リアグループの下へ飛んでいく。

「──“炎爆弾フレイムボム”!」

「──“氷爆弾アイスボム”!」

 先ほどまで会話をしていた男たちもまた、準備していた魔法を放つ。
 彼らが使うのは、条件を満たした者のみが使える魔法。

 攻撃魔法のグループに属するだけあり、彼らはその条件──特定の職業への就職──を満たすことで、高火力を誇る『爆弾魔法』を発動させることができた。

 その魔法の威力は凄まじく、着弾した場所から半径二十メートルは炎か氷に覆い尽くされるほどだ。

 ──だが、それ以上の力を振るう者がこの場所にはいた。

「そろそろいいかしら──『解放』!」

 卵らしきアイテムを片手に握り締め、アルカは魔法を一気に発動する。
 解き放たれたそれらは、一つひとつが着弾した場所からあらゆるものを吹き飛ばす。

「どうよ、これが私の力! ふんっ、あいつもこれで恐れおののくかしら……」

 誇らしげに胸を張るアルカ。
 周りの者たちは、反らない……反れないある部位に感じるモノがあり、誰も目を合わせることができない。

 そうして目を逸らした祈念者は、とある光景を目にすることに。
 紅蓮のような赤髪の美女、クースフェニが一発の魔法を解き放つ瞬間だった。

「ご主人のため、加減したうえでそれなりの被害を及ぼす魔法を撃たなければ……これぐらいならばいいだろうか──“火球ファイアーボール”」

 放たれたのは初歩中の初歩である、ほんの小さな火の玉──“火球”。
 ゆらりとゆらりと飛んでいった魔法、誰も意に介さずそのまま着弾。

「……うむ、やりすぎたか?」

 爆轟が鳴り響く。
 もっとも広範囲に大ダメージを及ぼしたその魔法は、中に居た存在すべてを呑み込み消し去った。

 その結果を事前に予測できたのはごく僅かな人々のみ、発動の瞬間まで隠蔽された魔力量から予想できた通りの火力である。

「──加減したのだが」

『あれでかよ!』

 大衆の声は、残念ながら本人に届くことはなかった。
 ほんの1%の魔力──不死鳥である彼女にとって、それは取るに足らない魔法なのだ。


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