AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
04-13 撲滅イベント 前哨戦その05
「何をやっているんだ、集まって」
『…………』
合流した所、何やらこそこそと話し合っている様子だった。
残念ながら、凡人には読唇術などという高等技術は与えられていない……取ろうかな?
そんなことを考えていると、彼女たちはこちらへ近づいてきた。
「──いろいろと、訊きたいことが、ありますが……よろしい、ですよね?」
「……は、はい」
わざわざ区切られた発言に、そしてまったく笑っていないノロジーの目に……ただただ俺は、頷くことしかできない。
そして行われるのは、無数に用意された質問への回答だった。
結局、主に訊かれたのは『模倣者』の由来である、能力のコピーに関することだった。
なので──彼女たちのスキルや職業の力を有効的に使える方法で話を逸らしておく。
四人とも──あのアルカも──力を得ることには貪欲なのか、話してしまえばそちらに注力してくれたので良かった。
実際、その方法とはレンとグーによって演算されたものなので、ほぼ間違いなく正しく使うことができる。
ゆえに反抗的なアルカですら、一理あると感じたのか話だけはちゃんと聞いていた。
……もちろんその後、詳細な部分について訊かれはしたけど。
なお、一番訊ねてきたのはノロジーだ。
彼女の固有魔法【化学魔法】は、彼女自身が持て余していたもののようだし。
俺は二人の眷族のアイデア──具現魔法の習得を伝えた。
曰く、俺には理屈がさっぱりだが、それで実験機材を創ると良いんだとか。
それを訊き、かなり目を輝かせていた。
ただ、その輝きにやや狂気が混じっていたというか……うん、狂科学者のようでこの場に居る者たちがやや引いていたよ。
◆ □ ◆ □ ◆
──そして、俺はユウの師匠になった。
「……えっ、なんで?」
そう訊いた俺はおかしくないと思う。
なぜ、どうして……Why?
頭の中で思考を重ねても、その答えはまったく出てこない。
そりゃそうだ、普通怒らせた相手がそんなことを提案することなどないのだから。
凡人はそういう、イベントっぽいの経験したことないんです。
「さっきの話を聞いて、確信したんだ。僕を強くしてくれるのは師匠だけだって!」
「……誰が師匠だ、誰が。というか、そこまでのことはしてないからな。せいぜい俺でもできたことを言っただけじゃないか」
「そう、それだよ師匠!」
まったく直す気のないユウによると、常識が無いからこそやっていることが良い結果を生みだしているんだとか。
……この時点でツッコみたかったが、それはとりあえずおいておく。
俺からユウに教えたのは、無詠唱スキルの習得方法や剣術の派生スキルについてだ。
それと【生産神】の力で作りし、一つだけ魔法をストックできる剣を見せていた。
「無詠唱スキルはまだ公開されたたしかな情報なんかないし、それは剣術スキルも同じ。だってみんな、SPが足りなくなっちゃってね、全然上げられないんだもん」
「……そういうものか?」
「強い敵を倒すには強いスキルと武技が必要で、それを得るにはより多くのSPが必要。SPを得るには強い敵を倒すのが必要で……グルグル回っているんだよ」
祈念者たちにとって武技とは、SP消費で得るものだ。
俺は無料で得られる初期の武技、あと模倣した武技だけで満足していた。
なのでSPはスキルを習得するために使うだけ、おまけに使うポイントが少なすぎて上位のスキルを得れば得るほど、ポイントが増える──まさに逆インフレ状態だ(適当)。
「──というわけで、師匠お願いします!」
「全然繋がってないし、俺にメリットが感じられない。それともあれか、永遠の忠誠でも誓ってくれるのか?」
「…………」
「あの、全員でドン引きするのはさすがに止めてくれない? 中身、そんなにメンタル強くないんで」
精神に干渉する魔法には強い体だが、そういう反応には耐えられないのです。
最近の女の子には、弱者の脆さと危うさに気づける心遣いが欠けていると思う。
俺の反応が本当に傷ついている分かってくれたのか、セイラがオロオロとする……が、アルカとノロジーが何か言っている。
「なあ、ユウ……あれ、なんて言ってるか分かるか?」
「うーん、たぶん師匠のあれは演技だから騙されないように、とかだと思うよ。けど、本当に落ち込んでいるよね?」
「師匠言うな。けど、ユウはそういうの分かるのか?」
「……ちょっとね」
現実関係のことだったのかもしれない。
これは俺の訊き方が悪かった、すぐに頭を下げて詫びる。
「悪い、プライバシーとかあるもんな」
「ううん、気にしないで。師匠になってくれるなら許すから」
「そっか、それなら……って、言うと思うか普通? お断りだって言っているだろうに」
「ぶー、残念だなぁ……チッ」
舌打ち、舌打ちしたよコイツ……。
俺が悪いと言いたいんだろうが、まだ言っていない理由もいくつかある。
「というかだな。俺が師匠になったとして、お前は俺に何を求めるんだ?」
「えっ? それは……その、強くなるイベント的なものを……」
「独りで勝手に強くなったヤツが、誰かにその方法を教えたって同じことだろう。俺はお前のために割く時間なんて無いんだから、今やり方を口伝してしまえばそれで終わりだ」
「教えてくれるの?」
俺の強くなった経緯、どういう感じだったか……チュートリアルをする前に散歩をしたら、難易度の高い場所で体をイジメてから焼肉パーティーをするんだっけ?
「……無理だな。ユウ、そういうことだから俺にできることはない。さっきの知識もいずれ誰かが見つけることだ、俺じゃなくてもいいはずだろう?」
「うぐっ……け、けど!」
「なんで俺なんだ? 自分で言った方が精神的にマシだから言うけど、俺が師匠になっても何もできない無能だからな。なんとなく、始まったばかりのイベントだがお前のことも理解した──だからこそ、止めておけ」
コイツ、ユウは力を欲している。
それはプレイヤーなら当然とも言える欲だし、眷族にしたティンスとオブリだって抱いていたものだ。
だが、ユウのは少し違う気がした。
純粋に力を求めているというより……その副次結果、俺を師とすることで何かを成し得ようとしているような。
なんてことを考え、断ろうとしているのが分かったのだろうか……いつの間にか、ユウは俺に頭を下げていた。
「お願いします、師匠になってください!」
「……理由とか、あるの?」
「お願いします、師匠になってください!」
「えっ、これずっと続くパターン?」
それを他の女子たちに確認する……が、なぜか誰も目を合わせてくれない。
逆に、さっさと認めろみたいな感じの空気が辺りに漂っている。
「……だ、ダメだ!」
「お願いします、師匠になってください!」
「…………だ、ダメなんだよ!」
この後、結局折れるわけだが……そりゃそうだ、進まないんだから。
RPGとか違って、ここはVRMMO……譲歩という手段を取ることができた。
自分に都合のいい条件を出したので、それで勘弁してもらうことにしよう。
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