AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

04-07 フェニ その05



 パンパカパーン パンパンパン パンパカパーン!!

 このたび、祈念者の中に自由民と交際を前提とした関係を結んだ方が出ましたー!
 これを祝しまして運営は、今回限りの特別なイベントを開催することを決定しました!

 ──えーというわけで、まずはその前段階であるチーム分けを行います。
 えっと、はい、分かっています、規準がありますので。

 皆さまの眼前に突如浮かんだUI、そこに恨み辛みがある名前を一人書きましょう。
 特に、恋愛関係がいいですね……コイツはリア充だ、みたいな奴ならなおのこと!

 まあ、具体的な特徴とかでも構いません。
 該当する方を選びます……そう、適当に!

 チームが二つ、そして選考基準。
 これでだいたいお察しでしょうし、発表しちゃいましょう──ズバリ、リア充の撲滅がコンセプト!

 そうですね……運営の方々の嫉みや妬み、憎悪が集まった結果プログラムされていたイベントだと思ってくれれば構いませんので。

 あーっと、第二陣の方には第一陣の方に今回限りで追いつけるようにバフを施しますので、勝つ可能性がありますよ。

 だから、先輩後輩とか気にしないで名前を書いちゃってくれても構いませんからね。
 同じチームに居なければ、やりたい放題できますでしょうし。

 ちなみに、最初に言った幸せ者だけは強制的にチームA……つまりリア充チームに参加してもらいますよ。

 そして、チームB……非リアチームがその人物を見つけだして倒した時、豪華な報酬を用意していることをお知らせします!

 詳細は公式ホームページに、この放送が終了後に掲載します。
 ……名前募集はここで打ち切りますが、ご安心を──イベントは明日スタート!

 急? いやいや、それこそがイベント!
 非リアの非リアによる非リアのための撲滅イベント、出会いの機会がある社会に参加している方が悪い!

 というわけで明日に向け、楽しみに待っておけよ新品共ー!!

  □   ◆   □   ◆   □

 どもぉ、どもぉぉ、どもぉぉぉとエコーが入るアナウンスを聞きながら、俺はわなわなと震えていた。

 せっかくフェニとの交流(意味深)をしたと思いきや、水を差すように鳴り響いたその声だ……{感情}が無ければ、【憤怒】して何かやらかしていたかもしれない。

「ご主人……今のは、いったい」

「ん? あー、あれはアナウンスだ。たしかこっちの奴らは『神託』とか呼ぶらしいな。けど、あれは祈念者専用の回線とかそんなのらしいが……なるほど、指輪のお蔭か」

「どういうことだろうか?」

 首を傾げ、指輪を見つめ……それから先ほどのことを思いだしてくれたのか、再び顔を紅潮させてくれたフェニに答える。

 彼女が祈念者と同じようにアナウンスが聞けていたのも、指輪に組み込まれていたスキルの影響だろう。

「(システム:限定)ってのが有るだろう? それは祈念者が使える全システムの内、一部が使えるようになったって証だ。その中に、さっきのアレを聞けるようになるって効果もあったってわけ」

「なるほど……ご主人たちは、あのような声に苛まれているのか」

「いやまあ、そうなんだがな。うん、とりあえずあれが全部じゃない。ずっと前に、とても親切な女神様が出ていたこともあったし」

 たぶんだが、『やらせ』だろうな。
 時々固有の単語もあったから、レイさんみたいな方が読んでいた可能性が高い……読まされている感がある部分あったし。

「祈念者か……ご主人とレン様、そしてグー殿の知識からある程度考察はしていたが、やはりまだまだ知らないことが多い」

「ああ、分かっている。改めて、フェニ……というか眷族たちには説明しておいた方がいいかもな。ちょっと聞いてくれ──」

 というわけで、自分の口で祈念者やAFOについて話してみる。
 口にすることで言語化されて、これまでとは違う考えに至る場合もあるし。

「──とまあ、こんな感じだ。正直、心情ぐらいしか足せなかったな」

「いや、ご主人のそのときそのときの気持ちが知れる。それは……とてもよいことだ! もしそのとき、我がいればと思ってしまう」

「たぶん独りで……いや、そうだな。闘技大会のときはリョクに頼ったし、今度はフェニに頼ることにしようか。ミントは……うん、人化できるようになってからだけど」

 同様に、グーやスーもいっしょに居られるようなナニカが必要だな。
 俺の読書フィクション知識をフル回転すれば、どうにかなりそうな気もするし。

「フェニ、それより明日……この世界だともう少し後のことだが、の方が先だ。アナウンスが聞けた以上、指輪を付けたままだとフェニもイベントに巻き込まれる」

「……外したくはない」

「分かっているって。俺も……その、さすがにあれだけ感情を揺さぶられた物をすぐに外されたくはない。どうせなら、フェニといっしょにすべてを相手取った方が勝てる見込みが有りそうだ。ああ、俺がちゃんと守るぞ」

 もし、ダメでも召喚すればいいだけだが。
 最悪の未来はフェニが蘇生できなくなることだが、不死鳥の蘇生スキルの可能性は俺自身で調べてあるので問題なかろう。

「ご、ご主人……」

「ん? どうした、そんなに嬉しそうに。普通のことだし、てっきり守られなくともご褒美とか言うと思ったんだがな」

「……我とて女、ということらしい。先ほどは止められたから抱き着くのは諦めるが……こう、何かしてもらいたくなってな」

「何かねぇ……じゃあそうだ、こういうのはどうだ?」

 飛翔スキルを最低限のエネルギーで発動させ、ほんの少しだけ宙に浮く。
 その状態でポンッとフェニの頭に掌を載せると、ただひたすら撫でる。

「俺の世界だと二コポだのナデポだの、よく分からない風習があるが……そのせいで、やり方だけは知っているからな。す、好き者同士のアレやコレはまだ難しいけど、これぐらいならどうにかできそうだ」

「ご主人……やはり抱き締めたくなる」

「──本当お願いします、これで勘弁してくださいこの通りです」

 なぜか感情表現を体で示したいフェニを相手に、ただひたすら宥めるだけの俺。
 ……撫でるのを止めればきっと終わったんだろうが、俺もわりと楽しんでいました。


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