AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

03-25 散策 後篇



 第四世界──もっとも新しき世界なんて言うと、なんかカッコイイよな。

 第三と第四はほぼ同じタイミングだし、特に深い説明があるわけでもない。
 第四世界に与えられた名は『迷宮都市』、【迷宮主ダンジョンマスター】としての力を振るった地だ。

「ここだけの話、ティンスたちと闘うときに使った闘技場があるだろう? あれをDPで購入する時に都市を造っちゃおっかなーって思ったんだぞ」

 世界の誕生は第三とほぼ同じだが、名前である迷宮都市の誕生はわりと最近である。
 都市の構成なんて、俺がどれだけ真面目にやっても無理なんだからさ。

「なのでここ、【生産神】の力で理想を現実化できるレベルまで落として、それを迷宮核ダンジョンコアであるレンに迷宮の一部として創ってもらいました……本当、便利だよな」

 解析能力を持っているうえ、人間みたいに脳というしがらみがないからか、解析系のスキルを持つ奴以上に情報処理が上手い。

 俺の場合、動作に関しては並列で行うことができるが、思考は加速させるだけで分けて思考することはできない……いやまあ、現実じゃあ意識的な加速もできないんだけどさ。

「なお、都市と言う割に誰も来ていない。なぜなら、まだオープンしていないからだ。迷宮もまだ『天魔迷宮』だけだし、それで都市というのは……ちょっとな」

 モブにだってプライドがあるのですわ。
 貴族の責務も使命も無いが、やはり都市の製作者としての意地は持ち合わせている。

「──なので都市の説明は、いずれオープンした後にでも。急ではあるが、ここで説明は終了しまーす」

  ◆   □   ◆   □   ◆

「……さて、行くか」

 そうしてやることを終わらせた俺は、俺が築き上げた迷宮を訪れた。
 迷宮内では魔法を使わずとも、権限を行使することで瞬間移動が可能だ。

 なので現在位置──最深部だろうと、俺だけはすぐに行くことができる。

 そして、やってきた最深部。
 そこで俺は、唖然とした表情を浮かべた。

「……なあ、レンさんや」

《いかがされましたか、主様マイマスター

「なんだかこう、俺にはレンさんが少し大きくなったように見えるんですけど……もしかして、成長期ですかね?」

《気のせいでは?》

 本来は無機物である迷宮核のレンだが、初期と比べて人間味が溢れてきた気がする。
 軽いジョークにも付き合ってくれるし、心なしか親愛を感じられるし。

《主様。気・の・せ・い、でございます》

「そ、そうか……」

《それよりも。言語を用いた会話より、直接意思の伝達を求めます》

「あっ、ああ。すぐにそっちに行く」

 レンとのコミュニケーションは、言葉を交わさずとも迷宮核本体に思念を籠めることで行うことができる。

 そしてレンは、モブの拙い話よりもそちらの方をお気に召しているようだ。
 なので宝珠のように輝く核の下へ向かい、手を載せて意思を籠める。

《これでいいか? まあ、俺も伝えたいことが伝わった方が楽だからいいけど》

《ありがとうございます。では、さっそくご報告を始めたいと思います》

《ああ、ちゃんと訊かせてくれ──まだまだ完成しないと思っていた迷宮都市が、人以外すべて揃っていた理由を》

 ……そう、俺の想定ではもう少しDPを溜めてから実行するはずだった。
 だが実際、迷宮都市はほぼ完成状態……それらはすべてレンの独断である。

《理解しております……ですが、その前に一つ訊いてほしいことがございます。私を解析してほしいのです》

《ん? まあ、レンがそういうならそれでも構わないが──[解析]》

 言われる、というより伝えられるがままに[解析]機能を実行。
 すると迷宮核がポワッと輝き、核に関する情報を開示していく。

《えっと……ん、(自我ノ蕾)? なにそれ、初めて知ったスキルだな》

《はい。突如眷族ネットワークとも言うべき回路に現れたスキル。私はそれをダウンロードし、より高度な知能を得ました》

《眷族ネットワーク……の意味はなんとなく分かるからいいか。で、そのスキルに自我の発露に最適な効果かあったわけか。となると開発者はアイツだな……》

 問う必要はない、なので声は漏らさず己の頭の中で意見は留めておく。

 しかし、問うべきことは他にもあった。
 なのでそちらに話題を切り替える。

《──固有スキル【智慧】か……これ、いったいどうやって取った?》

《端的に申せば、創りだしました》

《創る? スキルって、創ろうと思えば創れるものなのか?》

《いえ──主様の[能力共有]でスキルを一時的に共有し、それを解析。習得したものをDP消費によって強化・統合し……創造に至りました。解析に特化した能力となります》

 つまり、迷宮の力が無ければできなかったこと……というわけだ。
 別にDPの運用はレンに任せているので、そこに関して不満などはない。

《悪影響とかは無いんだな? 言うじゃないか、強過ぎる力って相応の代償が要るとかそういうの》

《問題ありません。推測ではありますが、そういった事象は本人に馴染まぬ力を……分不相応なナニカを突如与えられた場合にのみ、発露するものかと》

《もともと[解析]とか、迷宮運営をしていたレンなら大丈夫、ってことか?》

《そうありたい……いえ、そうします。主様に相応しい、そして【智慧】の行使者足りえる存在で在り続けます》

 俺とは違って、ずいぶんと高い志を持ってくれた迷宮核。
 自我が芽生えると、ここまで大きく変化するものなんだろうか?

 ……いや、だからこそ俺は武具たちにそれが発露することを求めたのだろう。

《そうか。なら、そうだなあ……レン、フェニとミントが求める条件を満たした場所に、迷宮を改築してみてくれないか? 効率だけじゃなく、アイツらを思いやった迷宮に》

《……畏まりました。やってみましょう》

 意思を持つ彼女たちの居る『天魔迷宮』の中だけは、まだ手を付けないでいた。
 だが今のレンなら……最高の迷宮に仕上げられるだろうな。


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ステータス
名前:レン(-)
種族:【迷宮核Lv3】
職業:なし

DP:3000/∞

スキル NEW
(迷宮機能):遮断・強化
(自我ノ蕾:レン)【智慧】

祝福
[眷軍強化]
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