AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

03-11 眷族特訓 その04



 ノイズのお兄ちゃんが魔物を呼んだ。
 なんだか悪役っぽいけど、わたしたちが強くなるためには必要なことなんだって。

 数はわたしとお姉ちゃんの分で二体、そう教えてくれた。

「えっと──“鑑定”!」

 お兄ちゃんから借りたスキルは、上級鑑定スキル……金色のお姉ちゃんが教えてくれたことだけど、鑑定スキルを含めて、『視る』スキルはとっても大事みたい。

 よく分からないけど、『万象を見通すことができれば、望む因果を導ける』って教えてくれたんだ。

 だからお兄ちゃんのスキルの中で、一番分かりやすい上級鑑定スキルを借りた。

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 名前:無し
 種族:人形Lv20[迷宮魔物]
 活動:地上 反応:受動 強さ:格上
 属性:× 耐性:×

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 わたしが使っている普通の鑑定スキルよりも、いろんなことが分かった。

 他にも、わたしたちが使っているみたいなステータスに切り替えることができるみたいだけど……そっちはちょっとしか見れない。

 そのことをお兄ちゃんに訊いてみると──

「鑑定にしたんだね。普通に魔物を見るだけなら上級鑑定だけでもいいんだけど、もっと細かい情報が知りたいなら、他にも看破系のスキルが必要になるんだよ。だから、今はまだ難しいんじゃないかな?」

 だって……もう一回調べてみたら、たしかにお兄ちゃんは看破のスキルをいくつか持っていた。

 だけど、借りれるのは一つだけ……あんまり強くできないな。

「お兄ちゃん、鑑定スキルのレベルを上げるにはどうすればいいの? やっぱりずっと使わないとダメかな?」

「鑑定はとにかくいろんなモノに使うことも大切だけど、視れないモノを視ようとすることが、鑑定スキルの本質だからね」

「?」

「知りたい、そう思うことが大切なんだよ。どんなに分からないことでも、その想いがあればきっと視れる──端的に言えば、分からない情報を知れた時、鑑定スキルはより早く成長していくってことさ」

 そう言ってお兄ちゃんは指を鳴らした。
 するとわたしが鑑定を使った人形に、とっても黒いナニカが吸い込まれていく。

「可能な限り強力な隠蔽を施したよ。鑑定をしてみて」

「う、うん──“鑑定”!」

 言われた通りもう一回人形を視たけど、お兄ちゃんが隠しているからか、真っ黒に塗り潰されて分からなかった。

 ほんの少しだけ、隙間から視えることもあるんだけど、そこも『?』になっている。

「二重の隠蔽だよ。まったく視えないようにする隠蔽と、どういった内容かが分からない隠蔽。少し難易度が高いけど……鑑定を自分に使ってごらん」

「──ッ! もう上がってるよ!」

 お兄ちゃんのお蔭で、もう鑑定のスキルがレベルMAXになっていた。
 すぐに進化させようと思ったんだけど……お兄ちゃんがそれを止めてくる。

「スキルポイントはどれくらいあるかな?」

「えっと……あんまりないみたい」

 具体的な数を教えると、お兄ちゃんは何やらぶつぶつと呟く。

「……まあ、こうするかな? オブリちゃんには少し、手伝ってもらうよ」

「うん、なんでもやるよ!」

「なら、少し手を繋いでくれるかな?」

「えっ、いいの?」

 男の子と手を繋ぐのは、好きな人とじゃないとダメだってパパが言ってたけど……お兄ちゃんはわたしのことが好きなのかな?

 ちょっと分からなくて戸惑っていると、離れた場所に居たティンスお姉ちゃんがこっちに駆け寄ってくる。

「ちょ、ちょっと、オブリちゃんに何をする気なのよ!」

「何って……手を繋ぐだけだよ?」

「そ、それがダメなんじゃない! いい、オブリちゃん。男の人と手を繋ぐのは、本当に好きな人だけにするのよ」

「……お兄ちゃんは、わたしが嫌い?」

 お兄ちゃんと、いっしょにお姉ちゃんが突然胸を押さえて苦しそうな顔になる。

「「うっ!」」

「ど、どうしたの!?」

「……オブリちゃんのことは好きだよ。だけどね、好きか嫌いかで判別できない関係もあることを覚えておいてね」
「オブリちゃん、そういう訊き方を他の所でしちゃダメよ。いい、お姉ちゃんとの約束」

 二人とも、大きく深呼吸して落ち着いてからこう言ってくる。
 よく分からないけれど、きっと大切なことなんだろうから覚えておかないと……。

 少しだけ早く元の状態に戻ったお兄ちゃんは、わたしの前で傅いて手を差しだす。
 なんだか物語の王子様みたいで、わたしもお姫様みたいな気分になっちゃう。

「さぁ、オブリちゃん。どうか私めの手を握り返してください……説明をするなら、これはちょっとだけお得なことをするために必要なことなのさ」

「うん、分かった」

 言われた通り、ゆっくりと手を載せる。
 するとお兄ちゃんの掌がほんわりと温かくなっていき、それがわたしの方へじんわりと伝わってきた。

 全然嫌な感じはないし、逆にもっと温かくなりたいって思える。

 だけど、いつの間にかその温もりが失われたと思ったら、お兄ちゃんの手はわたしから離されていた。

「あっ……」

「オブリちゃん、どうかしたの? 何かされたならすぐにこのノイズをぶん殴るけど」

「それを本人の前で言うのかい!? いちおう私は、君たちの上司なんだよ?」

「上司が間違った判断をしたなら、それを正すのが部下の役目って教わったもの。だからダメなロリコン上司を正常にするため、私は悲しみの拳を振るうのよ」

 ティンスお姉ちゃんの声にハッとして、自分がボーっとしていたことに気づく。
 とっても温かくて、ずっと微睡んで痛くなる夢みたいな時間だったなぁ。


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 レベル0でのスキル習得とは、外部習得したもの(装備品やアイテムによる一時付与)のようなもの……使い続けることで、スキル習得のリストに無かったスキルが出てくるという感じ

 ただし、装備スキルには装備固有のスキルがあるため、すべてが習得可能になるわけではない……聖武具・魔武具の大半はすべてが装備固有のスキルである

 あくまでスキルリストに出るだけであり、適正云々が変化するわけではない

 なお、スキル会得券は前に説明した通り定価にするか、スキルを習得させるもの
 しかし、結晶は使用者にスキルをレベル1で付与することができる……そのため非常に高額で取引される(ブラックな所で)


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