AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
03-09 眷族特訓 その02
命令、そう言われて緊張感が背筋を走る。
現実だとその後、当たり障りの内容に思えることを伝えられ、それを達成している間に何かしらのイジメの準備を整えていた。
さすがに会ったばかりのコイツ──ノイズ男がそんなことを言うとは思えないけど……条件反射とは怖いモノで、多少引き籠もって時間が経っていても体は正直だ。
「そう固くならないでほしいな。私は別に、パシリにするわけでもイジメッ子になりたいわけでもないんだ……少しだけ辛いことに、理由を付けたいだけなんだ」
「……理由?」
「どんなことだって、私に命令されたから仕方なく……ってね。君たちは覚悟を決めて私の配下に加わってくれた、なら背負う責は私に来る。そしてこれから与える命令も、すべて私が悪いからこそ、君たちがやるんだ」
「ねぇ、いちおう訊いておきたいわ。それってもしかして、私たちに何か罪悪感を感じさせるようなことをさせようってことよね?」
命令、背負う責、悪い……いろいろと言葉は変えているが、全部が薄っぺらい。
何度もそれ以上にキツイ言葉を訊いていたからこそ分かる──
辛いこと、それはノイズ男の中での話でしかないことを。
そう考えた私は、新しくできた可愛い妹分のオブリちゃんに視線を向ける。
「オブリちゃん。あなたはこの男のことをどう思ってる?」
「うーん……お兄ちゃん、かな?」
「お、お兄っ!?」
「だって、ノイズのお兄ちゃんはわたしを助けてくれたもん。だから、お兄ちゃんはとってもいい人だよ」
うっ、純粋な笑顔が尊い……。
私に向けられたものではないけど、その余波がこっちにも。
ノイズ男もなんだかそのノイズがブレブレだし、きっと動揺していると思う。
「お、お兄……ゴホンオホンッ! と、とにかく! じゃあさっそくチュートリアルに相応しい場所へ移動するよ!」
誤魔化しているのがよく分かる反応で、ノイズ男は強く地面を踏み付ける。
本当だったら、それはただの照れ隠しだって分かるけど……ここはゲームの世界で、魔法というシステムが存在する場所だ。
「「──えっ?」」
「さぁ、二人を招待しよう!」
なんだか羞恥心全開なのを隠しているが、隠せずに叫んで誤魔化している。
……なんてことを思う暇はなく、私たちの足元には魔法陣のようなモノが描かれ少しずつ輝いていく。
「ようこそ、私の世界へ! 誰もできないもう一つのチュートリアルを、天魔の迷宮で行おうじゃないか!」
「ちょ、ダンジョンってな──!」
何! と言いたかった。
しかしもう時すでに遅し──私たちの視界は真っ白になっている。
◆ □ ◆ □ ◆
「──に…………って、ここどこ!?」
「うわーーー、スッゴーーーい!」
そこは草原だった。
どこまでも続くその場所は、ついさっきまで居た『始まりの草原』とは違い、周りに誰一人として祈念者が居ない。
「[マップ]……は、圏外? ちょっと、これってどういうことなの?」
「ここは運営が知らない場所なんだよ。だからこそ、私が君たちに何をしようとそれを知られることは決してない」
「……なら、さっきのも本当はこっちでやればよかったんじゃないの?」
「…………あっ」
ノイズ男は抜けているみたいだ。
だけど、力自体は間違いなく本物だろう。
「ま、まあ、隔離はしていたから問題ないからね。君たちが気にすることは、そこじゃないから気にしなくていいよ」
「お兄ちゃん、何をするの?」
「うぐっ……わ、私の魔力で魔物を召喚して君たちが倒す。それを何度か繰り返せば、それだけでレベルが一気に上がる。何をするにも、まずはそれに見合うだけの動きができないとダメだからさ」
「……いきなりレイドボスとか、そんなハードな無理ゲーじゃないわよね?」
無理ゲー、システム的に討伐が不可能な敵などのことだ。
ネットの情報によると、この世界では絶対ということがないので倒せない魔物は存在しないみたいだけど……単純に勝てない相手に敗北するのは当然のことでしかない。
「安心してくれていいよ。君たちに与えた力には、獲得した経験値を増やす効果が与えられているからね。たとえるなら……全部の相手がフ°ラチナキングみたいなものだよ」
「それ、『経験値アップ極大』とかそういうのじゃないわよね?」
「もちろん。そんな四倍程度で済む能力だったなら、私は君たちを救うことを諦めていたさ。その力があったからこそ、私はレベルという力を手に入れて君たちを救う選択を選べたとも言える──それだけ強力なのさ」
それだけ言わせるスキルっていったい……起きた時に[ステータス]で確認してみたのだが、なぜかそれっぽい部分だけ文字化けがひどくて確認できなかった。
そういったことも含めて、私はノイズ男を問い詰めていたのだ。
オブリちゃんが起きたので肝心の質問は途中で終わってしまったため、まだその全貌は暴けずにいる。
「お兄ちゃん、[ステータス]を見ても分からないよ?」
「──君たちに与えたのは救う力と耐える力だ。どういう力を欲しがったのかは自分自身がよく分かるはず、この世界は可能性が力を与えてくれる……名前に囚われず、望む力だけを意識して使っていくんだよ」
抜けていても、やっぱり真面目な部分は引き締めているようだ。
心にスッと入ってくるような言葉は、自然と理解を促す。
すべてができるという謳い文句であれば、相反する行動がぶつかったとき、勝敗を決めるのはいったい何なのか。
なんとなく、その答えを教えられた気がする……本当になんとなく、そう感じた。
◆ □ ◆ □ ◆
ティンスが把握しているステータス
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ステータス
名前:ティンス(女)
種族:(魔族/吸血鬼種Lv2)
職業:(戦士Lv4)・(料理士Lv1)
状態異常:(日光弱体)
L[能力値六割低下]
HP:200
MP:200
AP:200
ATK:20/-8/
VIT:20/-8/
AGI:20/-8/
DEX:20/-8/
LUC:40
BP:5→0
スキルリスト
武術
(剣術Lv2:職業)(盾術Lv1)(格闘術Lv1)
魔法
(闇魔法Lv2:職業)(血魔法Lv1:種族)
(回復魔法Lv1)(呪魔法Lv1)(生活魔法Lv1)
身体
(飛行Lv1:種族)(身体強化Lv1)(瞑想Lv1)
(駆足Lv1)(跳揚Lv1)(体内魔力操作Lv1)
(日光弱体Lv-:種族)
技能
(料理Lv2:職業)(鑑定Lv1)(隠蔽Lv1)
(機械術Lv1)(調教Lv1)
特殊
(戦士の心得Lv4:職業)(料理の心得Lv1:職業)
(吸血Lv1:種族)
NEW
【■■:■■Lv-】
祝福
(■■■■)
SP:40
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祝福の欄を読者の皆さまは分かっていると思いますので、【■■:■■】の右側はそれに関する伏字だと理解していただければすぐに中身は分かられるかと。
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