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山田 武

02-38 ダンジョン作製 その02



 第四世界 名称未設定

 転職した『世界創造士』の補正もあって、制御にひどい手間をかけることもなく新たな世界の創造に成功した。
 また、維持に必要な魔力も少し減ったので余裕を持った魔力運用が可能になる。

「まあ、これで迷宮を運用するのに同じくらいの魔力を使ったら意味ないけどな」

 一度やってみないと、ヘルプにも機能が記されない。
 これまでの体験から、やったシステムであればちゃんと載ることは把握している。

 なので、魔力を使うかどうかすら分かっていないのが現状なんだけどな。

「迷宮を始めるなら、まずはスターターキットを用意しなきゃ始まらないか」

 と、いうわけで特別に“時空庫ストレージ”の中へ仕舞っていた『ダンジョンコア』を取りだす。
 何が起こるか分からないので、とりあえず魔力を放出しない入れ物(by【生産神】)の中に入れて持ち運ぶ。

「場所は……中央でいいか」

 まあ、中央も何も、あとで自在に調整で可能なんだが。
 地面と接しないように、魔力が干渉しないようにの二つを意識しての配置であった。

 魔力を吸われる可能性を考慮し、魔力回復のポーション(品質:S)を数本用意してから、コアに触れる。

「……強制的な介入は無し、触れた途端に君はダンジョンマスターだ! なんて展開にはならなくてよさそうだ」

 もう一度、何か不備が無いかどうかを確認して、魔力をゆっくりと注いでいく。

 すると、UIが突然眼前に表示され──


     !   !   !

       ERROR
 この場所では、ダンジョンが設営不可能
 九立方メートル以上の部屋が必要です

     !   !   !


 まあ、警告文だな。
 迷宮にそんな縛りがあったのか……たしかに考えてみれば、この最初の場所がコアを一時とはいえ設置する場所になる。

 そこがとてつもなく狭い場所で、誰も侵入できないなんてことであれば、少々攻略者に制限が設けられてしまうだろう。
 絶対に攻略できない、なんて謳い文句が実現しては困る存在が居るのかもしれない。

「つまり、小部屋が必要ってことか……」

 具現魔法でパッと創れれば良かったが、魔力が尽きれば消滅する可能性があるのでそちらは断念した。
 代わりに自然消滅をしない、土属性の魔法だけで設置場所を準備していく。

「生産……なのかな? あっ、うんできた」

 ただ小部屋を造ろうとせず、芸術性を求めてみる。
 すると脳裏に、シンプルな部屋のデザインが思い浮かぶ。

「本当、パソコンの編集画面みたいだな」

 意識の大半をそちらに向け、自分のイメージがその部屋を彩る想像を行う。
 すると、どうすればそれができるのかが自然と理解でき、体が勝手に現実に反映していくのが微かな意識で理解できる。

「さすが【生産神】……何でもありだな」

 生産活動時、意識して創りたい物を願うとそのイメージが浮かぶ。
 自分で作れない、だが必要としている物を作るときなどにはとても便利な力だ。



 そんなこんなで部屋が完成した。
 コアを設置する台座はもちろんのこと、壁はその器などに鮮やかな絵が刻まれている。
 デザイン? ……まあ、気にするなよ。

「次は魔力を注ぐ……足りるよな?」

 幸いにして、聖・魔武具創造よりも少ない魔力で作業は進められた。
 手を載せたコアは、少しずつ無色から有色へ変わっていく。


     ・   ・   ・

      COMPLETE
 一定量の魔力が充填されたことを確認
 これより、『名称未設定』を起動します

     ・   ・   ・


 赤から順に七色を、そして白と黒の輝きを経て万色にコアの色が染まっていった。
 やがて激しく点滅すると、一度この部屋を包むような光が視界を奪う。

《こちら、ダンジョン運営プログラム。コアに登録を行った者を導く存在です》

 アナウンスのような、頭に過ぎる声。
 とても無機質な、感情ゼロの機械チックなボイスで働きかけてくる。

《コアと初めて接触した者の場合、自動的にこのサポートが行われます。どのような者でも管理できるよう、触れた状態で思念を籠めれば意図は伝わります》

 まあ、創作物だと人ではない者が迷宮を管理している場合があるからな。
 強制的に知識を流し込まされるような鬼畜プログラムじゃなかっただけ、今は感謝しておくべきなのだろう。

 言われるがままにコアに触れると、いつも【思考詠唱】をしているときのように魔力を籠めて意思を念じてみる。
 ……もちろん、いちいち取り繕った演戯などはやらないでおくけど。

《始めまして。えっと、名前とかは持っているのか? 呼ぶたびにダンジョン運営プログラムと呼ぶのは面倒なんだが……》

《思うままに。登録者をサポートするこの身には、本来名は必要とならないものです。どうぞ、呼びやすいように》

《そうか? なら、そうだな……『レン』と呼ばせてもらおう》

 ちなみに、連携のレンである。
 サポートとをしてもらうのだから、持ちつ持たれつの関係でありたいのだ。

《名称変更。以降、このダンジョン運営プログラムのことはレンとお呼びください》

《ああ、よろしく頼むな、レン》

《はい。共によりよりダンジョンを運営するため、改善に励みましょう》





 それからレンによる、迷宮講座が始まる。
 伝えられた情報はその都度ヘルプ機能に記されていくので、なんだかシステムが解放されているみたいで楽しく聴けた。

 そうしてずっと話を聞いて……纏めた情報がこんな感じだ──

---------------------------------------------------------
・迷宮は、何をするにもDP──ダンジョンポイント──の消費が必要
 使いたくなければ自力で何とかする

・DPはコアにエネルギーを籠めるか、迷宮内に存在する者から徴収をすることで増加することが可能
 ただし、迷宮産の魔物や迷宮主が認証した保護対象からは徴収することができない

・【迷宮主】に就いている場合、すべてのコアを破壊されるとデスペナを受けたうえで職業の剥奪が行われる(自由民の場合は死ぬ)
 条件を満たした時、【迷宮主】を介してコアに新機能が追加される
---------------------------------------------------------

 とまあ、こんな感じである。
 創作物によくあるテンプレな迷宮、そんな感想を抱けるシステムだ。

 問題は剥奪に関するところだな。
 せっかく一度も死んでいないこの身、安全なこの世界で命を続かせていかなければ。

《説明は以上です。続いて、実際に迷宮ダンジョンの拡張を行いましょう》

 えっ、迷宮になってる?
 質疑応答の間に、いろいろと摺り合わせが済んだからだよ。
 他にも『コア』なんかも変えてもらったぞ。

《DPを使う必要はあるのか?》

《いいえ。どのような方法でも構いません》

《なら、魔法で広げるが……いいか?》

《はい。しかし、迷宮化させる場合はDPの消費があります。維持にもDPが必要となりますので、むやみに拡張してよいことばかりというわけではありません》

 というお言葉を頂いたので、バランスよく迷宮を広げることにした。

 大地魔法と岩魔法で、まず小部屋と同化させるように巨大な洞窟を生成する。
 もちろんだだっ広い空洞を作るわけではななく、入り組んだラビリンス仕様にした。 

《魔力を注げば、DPに変換できるんだったよな?》

《変換率は高くありませんが、それでも増やすこと自体は可能です》

《それで充分だ》

 次に洞窟の外で作業を始めた。
 樹魔法を使って大量の樹木を生やして、森林のような場所を作り上げる。
 同時に幻霧魔法の“迷いの霧ロストフォグ”を発動し、森内で方向感覚が狂うようにしておく。

 樹木の管理や霧の維持は、DPを支払えば迷宮側で行ってくれるそうだ。
 なのでさらに広く、草原も樹魔法で生みだし──とりあえずの作業を終了した。

《とりあえず、ですか?》

《改良の余地はどこにだってあるだろ。一度魔力を回復させてから、もう少し天然の仕掛けを施す予定だ》

《……まずは、チュートリアルを終えてからにしてもらえないでしょうか?》

 あっ、はい。
 だいぶ消費してしまった魔力は、スーの中でヌクヌクと回復することで戻る。
 その間、ゆっくりと寝るだけ……Zzz。


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