コマンド見えるようになったので、ハーレム作ります!

片山樹

桜田南の行動は謎である その3

 さて、問題だ。
友達が突然、『先生は悪魔だ』というホラを吹いたとしよう。普段の俺ならば、「あっそ」という如何にも下らない冗談をこいつは言っているのだろうという結論を下して適当にあしらうのだが、今回はそうはいかなかった。
そしてそんな状況も生まれて初めてだったのでどんな対応をしていいのかちっとも思い浮かばなかった。逆にこんな状況を体験してことがある奴は是非是非、教えにきてもらいものだ。

『お、お主……。とっても嫌な予感がするのじゃ。もしかしたら……』
 レイシスが息を呑む。

『どうしたんだ? どういうわけだ?』

『どういうわけもこういうわけも下手したら手遅れかもしれん……』

『はぁ? どういうことだよ? 』

『それは後々、話す。今はそれよりも大切な用ができたのじゃ。そやつとの会話を一時中断し、保健室に行くのじゃ。そこに秘密がある』

『はぁ? それだけじゃ意味が……』

 電話線が切れたみたいにレイシスとのチャネリングが切れた。

あぁー。どういうわけか。
はっきりしてこねぇー。
でも多分だが、強制イベント来なしてしまった連鎖現象でイベントが発生したっぽいな。

さてさて、保健室に行けか。
少しだけだるい気もするが、仕方ない。

だけどもしかしたらの為さ。
飯だけは食っていこう。
俺はそう思い、ババっとおかずやご飯を口の中に入れて、お茶で流し込んだ。
全く……楽しい昼休みじゃねぇーよ。
まじで。
俺が一番好きなランチタイムを奪うなんて。
鬼畜だぜ。
俺は保健室へと駆け出した。
席に座っている阿弥陀から「ちょっ、まだ話が終わってねぇ~ぞ!」と言われたが、お構いなしに俺は駆けた。

 飯を食ったばかりということで胃の調子がめちゃくちゃ悪い。だが、レイシスが急かすので走るしか無かった。
レイシスは俺の影に潜む吸血鬼だ。
もっと詳しくいうと俺の血を吸った眷属だ。

どこぞの物語と似ているかもしれないけど、別にそんなものではない。
うちの吸血鬼は別にドーナツが好きでも無ければ、甘党では無い。
甘党では無いと言いすぎかもしれないけれど、プリンは食べるけどさ、寧ろレイシスは辛党だ。ハバネロ君とか余裕で食ってるし。

『よしっ、じゃあ……入るぞ』

『ちょい! 待つのじゃ! 私も……影から出て戦う』

 戦う? はて、それはどういうことだろう。
戦闘なんてそんなものはRPGの世界じゃあるまいし、ありえるわけないですし。
それに学校にテロリストが居て〜とかいう展開も実際はありえないしですし。
でも、もしも本当に戦闘というものがあったらどうする?
今まで俺はコマンドがあったけどさ。

もしもだよ。

もしも……。コマンドに戦うというものがあったら……どうする?

影からレイシスがにょこにょこと竹の子みたいに出てきた。

「なんじゃ?」
 いや、別になんとも思ってないです。
もしも普通の人が見たら、地面から人が出てきたと思ってビックリするだろうなと思ってました。さっき、嘘つきました。
すいません!

「では、気を取り直して。開けるぞ!」

 そう言って、保健室のドアをレイシスが開けた瞬間だった。

 俺の耳にブーブーという警戒音がなり始めた。

『緊急ミッション発生!? 緊急ミッション発生!?』

俺の耳にアナウンスが流れ始める。
そして視界上に無数の『緊急ミッション』という文字が現れる。

「どうやら……これはやはり……まずかったの」
 レイシスが諦め気味に呟いた。

「ええっ? あの……意味がわかんないんだけど!?」

『【緊急ミッション!?】
1:桜田南を守れ!
2:桜田南を守れ!
3:桜田南を守れ!
4:桜田南を守れ!
(全て一緒に見えて実はルートが分かれています。慎重に選んでください)』

 おいおい……一つに絞ってくれよ。
ルートが分かれていると言われてもわかんねぇーよ。

『2:桜田南を守れ! YES / NO 』

なるほど。『に』という言葉に反応したわけだ。色々と仕組みが分かってきた。
あついと言ったらダメなゲームと一緒ってわけか。

『YES!』

そうすると視界一杯にあった文字が少しずつ消えて、見えるようになった。

そして今の状況が理解できた。

 ベットの上ですやすやと寝ている桜田南の姿。

そして桜田南の髪を触る化学教師の姿があることに。

どうやら……この教師は生徒に手を出しているらしい。このクソ教師が!?

俺だって、女の子の髪とか触りてぇーよ!

そんな怒りを胸に俺は言った。

「おい! やめろ!」と。

 昔見たヒーローみたいでカッコイイと思ったのも束の間、俺は奴の手から放出されたシャドーボール的なモノを受けた。

まじでいででででせでてででで。

胸が……胸が焼ける。

じゅわぁ〜ぁ〜ぁ〜とと肉が焼ける音がする。
熱い熱い熱い熱い。


「お、お主! お主! 大丈夫か? しっかりせい!」

 レイシスが俺に声をかける。

クッソ……レイシスを守るとイッタノニ。

俺はナサケナイ。
ナサケナイ。ナサケナイ。ナサケナイ。

宮城茜に振られた時みたいだ。

ジレンマかよ。くだらねぇー。

ナサケナイ。ナサケナイ。

カッコワルイ。カッコワルイ。

だけど……守りたい。

助けたい。そう思ったんだ。

俺は……思ったんだ。

どんなにボロボロになっても立ち上がると。

ドンナにボロボロにナッテモ。
フラレタシテモ。
オレハモウイチド……宮城茜に認めて貰うまでは立ち上がり続けると決めてんだよ!!

 焼き爛れた肉が復活していく。
元の姿に戻っていく。

これがどうやら……チャネリングのお陰か、有り難い。

 俺は弱い。
それは分かってる。
それに敵は変な魔術的なものを使ってくるし。
本当にどうしようもない状態だ。

今もバンバンと黒い塊が来るけど、それをレイシスが全て打ち返してくれている。
でも……何れ体力の限界が来る。

それにレイシスが押されている。
これは極めてピンチだ。

ったく……どうすりゃいいんだよ。

俺は力が無い。

それなら頭を使って敵を撃つしか無い。

だけど……どうやって?

そ、そう思えば……。

【スキル】という表示ボタンを選択すると[Unknown]があった。

これで……どうにかなるかは分からない。

だけど……もう、これしかないだろ。

まじ……やっちまえよ!

「Unknownーーーー!!!! 発動!」

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