コマンド見えるようになったので、ハーレム作ります!

片山樹

最悪の朝

 もう、9月というのに蝉の元気な鳴き声が聞こえ、最悪の朝が始まった。
それは、そうだ。だって、昨日学園のアイドルの『白銀の女神』こと、宮城茜に振られたのだからしょうがない。だけど、元々これぐらいは承知の上だったはずだ。
自分が学園のアイドルと付き合えないことぐらい――

「おにぃー! 中、入るよー!」
部屋をノックもされず、可愛らしい声がしたと思ったら俺の部屋に美少女が入ってきた。
っていうか、今この子俺の事を「おにぃー」と呼んだよな。
いや、まさかな。

「あ、やっぱりー。おにぃー、起きてる! さっきから全く返事無いから心配してたんだよ」

そう言って、その美少女は俺の腕に自分の腕を巻き付けた。
その表情はとても嬉しそうだ。
ってか、この子誰? この子が俺を「おにぃ」と呼んでいるのは間違いないとして、普通に考えて(普通では全くありえないけど)この美少女は俺の妹として、OK?
いや、もしくは妹に準ずる何か。後輩とか? しかし、こんな美少女が後輩にいたとしても俺の知りあいにこんな子はいなかった。
相手も自分に対して、何故か好意的なものは持っていると思うので直接聞いた方が早そうだ。

「えっとーーあの貴方は誰ですか?」
すると、彼女は不思議そうな顔をして俺を見つめこう言った。

「もうぉぉぉーー困るよ。おにぃ、私だよ。柚葉ゆずは! おにぃの妹じゃん! 私の名前を忘れるなんて、おにぃは本当に困ったひとだねぇ~」
柚葉――そうか。この子の名前は柚葉というのか。
とりあえず、これで一安心――ってなるわけないだろ!
寧ろ、謎が深まるばかりだ! ごらぁぁ。

あ、なるほど分かったぞ。
これは夢だな。そうだ、そうに決まっている。
茜に振られたことをきっかけに変な夢を見ているのだろう。
とりあえず、夢からさめようか。
でも、その前に夢ならば自分の妹に少しはちょっかいを出すのもいいかもしれないな。
なにせ、これは俺の夢なのだから――。

そして俺は柚葉と名乗る自称、自分の妹が巻き付けてきた腕を自分の方に手繰り寄せた。
妙に生々しいような、温かい気もするが問題ない。
柚葉の顔に自分の顔を少しずつ近づけ、甘い甘い――

「ゆずはぁぁーー れいーー ご飯の準備ができたから早くきなさいぃーー」
母親の声だ。本当にいいところなのに、もったいない。

「おにぃ、意外と積極的なんだね。もしかして、近親相姦とか好きなの?」
さっきまでのデレデレ柚葉ではなく、俺を侮蔑するような目をしながら彼女が言った。

「えぇぇ……これ、夢じゃねぇーの?」

「何寝ぼけたこと、言ってるの? 今は現実よ」
柚葉は呆れた顔をして、そう言った。

「え、ほんとに? ちょっと、殴ってみて」

「ほんとにいいのね。あとから、何か言っても知らない――」

ぐびゅゅゅゅゅ――。

「いててぇぇぇぇぇぇ」
頬を思い切り、グーパンチで殴られ床に倒れこんでしまった。
殴るなら、最後まで言ってから殴れよな。
こっちにも少しは心の準備も必要なんだぞ。

「だ、大丈夫? だけどこれ、おにぃが悪いんだからね」
そう言って、柚葉は部屋を出て行った。
柚葉が部屋から出ていくと、部屋に残ったのは小学生の入学祝いとして買ってもらった学習机と本棚に収容された小説や漫画、それと自分がさっきまで寝ていたベットだけだ。
どうやら、昨日との違いは部屋には何も無いようだ。

「それにしてもいてえぇぇぇーー。だけど、分かったことがある。これは間違いなく、現実だ」

だけど、どうして俺に妹が?
そんな疑問を胸に俺も部屋を後にした。

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