我が家の床下で築くハーレム王国
第101話ジレンマ
一人になって、トリナディアを改めて歩いて感じた事がある。
この国の広さ、国民の数。そして景色。
それらをハナティアは一人で何とかしようと頑張ってきたのだと。ゴールデンウィークの事件だったそうだ。あれは国民からの頼みを聞いて、あの場所へ向かって危険な目にあった。その時彼女は国民の為なら危険も顧みないと言っていた。
(だから俺は力になりたくて)
彼女の側にいることにした。
だけど時折思うのだ。国民の事ばかりを考えていて、果たしてハナティア自身は幸せを掴めているのかって。
「翔平!」
しばらく歩いていると、背後からハナティアの声が聞こえる。一人にして欲しいって言ったのに、何故彼女はここに来てしまったのだろうか。
「一人にして欲しいって言わなかったか?」
「一人になんて出来るわけないじゃない!」
「どうして」
「一人にしたら翔平、絶対にどこかへ行っちゃう。そんなの無視できないもん」
「別にどこにも行きはしないけど」
「だったらどうして! どうしてとなりに立つ資格がないとか言ったの?  あんな事言われたら、絶対どこかへ行ってしまうって思うに決まっているじゃない」
「でも実際そうなんだから、しょうがないだろ!」
誰よりも理解しなければならないはずの俺が、彼女が考えていることに気づかないようだと、この先長続きしないと分かっている。だからクレナティアさんの言葉が今も響き続けているんだ。
「俺、自分では気づいていなかったんだ。どれだけ周りの人に心配させているのかって。それはそうだよな、だって地上に思い残した事なんてないって思っていたんだから」
「私も翔平が本当はこんな所で暮らしたくないと思っているから、この道に進む事に決めた。それがたとえ荊でも進むべきだって」
「でもあれはハナティアにはそうしてもらいたくないんだよ。おかしな話だよな。地上に戻りたいって思っているのに、ハナティアには賛同できないなんて」
ハナティアの気持ちは正直なところ嬉しい。だけどハナティアの事を考えると、その気持ちを受け取れない。このジレンマの中で、おれはこの先どうすればいいんだ……。
「でもね私、さっきサクヤと話をして改めて考えさせられたの。私にとって何が一番な幸せで、何が一番大切なのかって」
「お前の幸せを?」
「あんな事言っておいて今更な話ではあるけど、今の私に一番必要な事って、この国に居続ける事なんだって。翔平にとっては辛い話になるかもしれないけど、この場所を手放す事はやっぱりできないのかなって」
「それがハナティアが出した幸せの答えなのか?」
「まだ分からない。どの選択が正しいとは言えないけど、もう少しだけ考え直してみる事にしたの」
「そうか……」
「ねえ翔平はどうしたいの? やっぱり地上に戻りたいの?」
「俺もそれは今は分からない。でも答えが出るまでは、ここからでたいともいわないし、ハナティアからは離れないよ」
「……ありがとう」
ハナティアが改めて出した答えに対して、俺は安堵した。本当の気持ちはどうなのかは分からないけど、彼女が考え直してくれたならそれでいい。
(じゃあ俺はどうなんだ?)
雪音や正志に会えなくていいのか? 
日常に戻らなくていいのか?
今のこの場所にいる事が俺の幸せなのか?
でも俺の本当の幸せは、何よりもハナティアの側にいる事が……。
■□■□■□
演説から二日が経ち、九月も間も無く終わりかけたこの日、俺の部屋には来客が来ていた。
「すごい久しぶりだねダーリン!」
「しばらく会ってなかったのに、相変わらずなんだなミルは」
やって来ていたのはミルだった。何と言うか久しぶりに会ったというのに、いつもと変わらないところを見ると、何かすごく落ち着く。
「あとダーリンとか言ってるけど、俺とハナティアは結婚するんだから」
「あ、そうだったね。でも私にとってはダーリンはダーリンなの」
「ハナティアに怒られても知らないぞ」
そのハナティアはと言うと、朝からサクヤとどこかへ出かけている。俺は行かなくていいと言う事で、留守番をしていた時にミルが訪ねてきたのだ。
「そういえばこの前のハナちゃんの演説聞いたんだけれど、あれって本当なの?」
「少なくともあの時はハナティアは本気だったみたいだよ。今は少しだけ考え直すって言っていたけど」
「ダーリンはやっぱり賛成なの?」
「いや、反対していたよ。俺の気持ちはともかくとして、ハナティア自身は本当にそれでいいのかって」
「そうなんだ。でも私はハナちゃんの気持ちはすごく分かるし、賛成しているんだけど」
「ミルは賛成なのか? ハナティアが王女をやめる事を」
「だってハナちゃんは王女で居続けたらきっと不幸になるよ」
「何で言い切れるんだよ」
むしろこの国にいる事が彼女の幸せだと俺は考えているが、どうやらミルの考えはそうではないらしい。
「ねえダーリン、ハナちゃんのお姉さんが勘当された理由って聞いてる?」
「正確な話は知らないけど、クレナティアさんは子供を産む事に反対したんでしょ?」
「そう。ハナちゃんの家の血には呪いの血が流れているからね。子供を産んだら命を落とす事になる呪い。でもさダーリン、それを知っているならおかしな事に気が付かない?」
「おかしな事?」
俺は頭の中で一度ここまでの情報を整理する。そしてそこから不幸の事を含めて考えた末に出した結論は……。
「その呪いが本当なら、どうしてハナティアのお母さんは今も生きているんだ?」
クレナティアさんですら恐れているその呪い。乗り越えられるかも分からないそれを、偶然として果たして片付けられるのだろうか。
(それに……)
この話をハナティアは最近まで知らなかった。それは何故か。
「ハナちゃんはこの国にこのまま居続けたら、知らなくていい話まで知ってしまう事になる。それなら知らないままどこかでダーリンと二人で暮らした方がいい、私はそう思うの」
俺はまたしても知ってはいけない話を知ってしまったのかもしれない。
この国の広さ、国民の数。そして景色。
それらをハナティアは一人で何とかしようと頑張ってきたのだと。ゴールデンウィークの事件だったそうだ。あれは国民からの頼みを聞いて、あの場所へ向かって危険な目にあった。その時彼女は国民の為なら危険も顧みないと言っていた。
(だから俺は力になりたくて)
彼女の側にいることにした。
だけど時折思うのだ。国民の事ばかりを考えていて、果たしてハナティア自身は幸せを掴めているのかって。
「翔平!」
しばらく歩いていると、背後からハナティアの声が聞こえる。一人にして欲しいって言ったのに、何故彼女はここに来てしまったのだろうか。
「一人にして欲しいって言わなかったか?」
「一人になんて出来るわけないじゃない!」
「どうして」
「一人にしたら翔平、絶対にどこかへ行っちゃう。そんなの無視できないもん」
「別にどこにも行きはしないけど」
「だったらどうして! どうしてとなりに立つ資格がないとか言ったの?  あんな事言われたら、絶対どこかへ行ってしまうって思うに決まっているじゃない」
「でも実際そうなんだから、しょうがないだろ!」
誰よりも理解しなければならないはずの俺が、彼女が考えていることに気づかないようだと、この先長続きしないと分かっている。だからクレナティアさんの言葉が今も響き続けているんだ。
「俺、自分では気づいていなかったんだ。どれだけ周りの人に心配させているのかって。それはそうだよな、だって地上に思い残した事なんてないって思っていたんだから」
「私も翔平が本当はこんな所で暮らしたくないと思っているから、この道に進む事に決めた。それがたとえ荊でも進むべきだって」
「でもあれはハナティアにはそうしてもらいたくないんだよ。おかしな話だよな。地上に戻りたいって思っているのに、ハナティアには賛同できないなんて」
ハナティアの気持ちは正直なところ嬉しい。だけどハナティアの事を考えると、その気持ちを受け取れない。このジレンマの中で、おれはこの先どうすればいいんだ……。
「でもね私、さっきサクヤと話をして改めて考えさせられたの。私にとって何が一番な幸せで、何が一番大切なのかって」
「お前の幸せを?」
「あんな事言っておいて今更な話ではあるけど、今の私に一番必要な事って、この国に居続ける事なんだって。翔平にとっては辛い話になるかもしれないけど、この場所を手放す事はやっぱりできないのかなって」
「それがハナティアが出した幸せの答えなのか?」
「まだ分からない。どの選択が正しいとは言えないけど、もう少しだけ考え直してみる事にしたの」
「そうか……」
「ねえ翔平はどうしたいの? やっぱり地上に戻りたいの?」
「俺もそれは今は分からない。でも答えが出るまでは、ここからでたいともいわないし、ハナティアからは離れないよ」
「……ありがとう」
ハナティアが改めて出した答えに対して、俺は安堵した。本当の気持ちはどうなのかは分からないけど、彼女が考え直してくれたならそれでいい。
(じゃあ俺はどうなんだ?)
雪音や正志に会えなくていいのか? 
日常に戻らなくていいのか?
今のこの場所にいる事が俺の幸せなのか?
でも俺の本当の幸せは、何よりもハナティアの側にいる事が……。
■□■□■□
演説から二日が経ち、九月も間も無く終わりかけたこの日、俺の部屋には来客が来ていた。
「すごい久しぶりだねダーリン!」
「しばらく会ってなかったのに、相変わらずなんだなミルは」
やって来ていたのはミルだった。何と言うか久しぶりに会ったというのに、いつもと変わらないところを見ると、何かすごく落ち着く。
「あとダーリンとか言ってるけど、俺とハナティアは結婚するんだから」
「あ、そうだったね。でも私にとってはダーリンはダーリンなの」
「ハナティアに怒られても知らないぞ」
そのハナティアはと言うと、朝からサクヤとどこかへ出かけている。俺は行かなくていいと言う事で、留守番をしていた時にミルが訪ねてきたのだ。
「そういえばこの前のハナちゃんの演説聞いたんだけれど、あれって本当なの?」
「少なくともあの時はハナティアは本気だったみたいだよ。今は少しだけ考え直すって言っていたけど」
「ダーリンはやっぱり賛成なの?」
「いや、反対していたよ。俺の気持ちはともかくとして、ハナティア自身は本当にそれでいいのかって」
「そうなんだ。でも私はハナちゃんの気持ちはすごく分かるし、賛成しているんだけど」
「ミルは賛成なのか? ハナティアが王女をやめる事を」
「だってハナちゃんは王女で居続けたらきっと不幸になるよ」
「何で言い切れるんだよ」
むしろこの国にいる事が彼女の幸せだと俺は考えているが、どうやらミルの考えはそうではないらしい。
「ねえダーリン、ハナちゃんのお姉さんが勘当された理由って聞いてる?」
「正確な話は知らないけど、クレナティアさんは子供を産む事に反対したんでしょ?」
「そう。ハナちゃんの家の血には呪いの血が流れているからね。子供を産んだら命を落とす事になる呪い。でもさダーリン、それを知っているならおかしな事に気が付かない?」
「おかしな事?」
俺は頭の中で一度ここまでの情報を整理する。そしてそこから不幸の事を含めて考えた末に出した結論は……。
「その呪いが本当なら、どうしてハナティアのお母さんは今も生きているんだ?」
クレナティアさんですら恐れているその呪い。乗り越えられるかも分からないそれを、偶然として果たして片付けられるのだろうか。
(それに……)
この話をハナティアは最近まで知らなかった。それは何故か。
「ハナちゃんはこの国にこのまま居続けたら、知らなくていい話まで知ってしまう事になる。それなら知らないままどこかでダーリンと二人で暮らした方がいい、私はそう思うの」
俺はまたしても知ってはいけない話を知ってしまったのかもしれない。
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