我が家の床下で築くハーレム王国
第99話王たる資格
ビンタされた事がショックだったのかハナティアはしばらく言葉を発さない。それに対してクレナティアさんは、涙目になりながら言葉を紡いだ。
「さっきからあなたは私の幸せとか何だとか言っているけど、そんなの私自身が決める事なの。あなたが決める事じゃない」
「で、でもお姉ちゃんは絶対にここに戻ってきた方がいいと思ったの。だから最良の選択を選ぼうとしているの。それの何が間違っているの?!」
「だからそれが間違っているって言ってるのよ! 私がいつそんな事を言ったかしら。そもそもお父さんとお母さんの事だってあるのに、そんな事を言っている場合じゃないでしょ」
演説の途中であるのにも関わらず、ちょっとした喧嘩を始めるクレナティアさん。もう何年も会っていない姉妹の再会ではあるのに、感動も何もない。
「お父さんとお母さんの事は……私はずっと探しているもん。お姉ちゃんこそ、探すことに手伝ってくれなかったくせに」
「そ、それは……」
「ふ、二人とも一度落ち着け。今はその話をする場じゃないだろ」
「翔平?」
「ハナティア、この話は改めて後で話すとして、今俺達がやるべき事は他にあるだろ」
これ以上二人の言い争いを続けさせるわけにも行かないので、俺は二人の間に入る。クレナティアさんの乱入によって逸れてしまったが、本来の演説の目的はこれからのトリナディアの事について話す事。
集まった人達から冷ややかな視線も感じるし、今はこの話は一度置いておくべきだ。
「とりあえずクレナティアさんはこっちへ。ハナティアは仕切り直してくれ」
俺はクレナティアさんを連れて舞台から降り、その場所から一度離れる事にした。
「み、皆さん少々お見苦しいところをお見せしてしまいました。しかし私の意志は変えるつもりはないことだけお伝えしておきます。では改めて今回皆さんに集まっていただいた理由をお話しします」
離れる際に一度仕切り直したハナティアの声が聞こえる。どうやら彼女の意志はまだ変わらないつもりらしい。
「ハナティアはまだ何も分かっていないのよ……」
「分かっていない?」
「あの子があの座から降りたらきっと後悔することになる。そんなの私は見てられない」
まるで何かを知っているかのような口ぶりでクレナティアさんは言葉を漏らす。
(俺もハナティアが王女の座から降りるのは勿論反対だけど)
それが後悔に繋がるって、一体どういう意味なんだ?
■□■□■□
クレナティアさんを連れて城へと戻ってきた俺は、彼女と改めて今日の事を話す事になった。
「クレナティアさん、まさか見に来ているだなんて思いませんでしたよ」
「実の妹が演説をするって聞いたら、そんなの無視できるわけないでしょ。私はあの子の姉なんだから」
「でも以前はもう会わないとか色々と言っていましたよね」
「勿論そのつもりだったわよ今日だって。でもまさかハナティアがあんな事を言い出すなんて考えていなかったから、居ても立っても居られなくなったの」
「そうですか……」
ハナティアのあの発言には勿論俺も驚かされた。だってつい先日、一緒に国を二人で作り上げていこうと約束して来たのに、それをまんまと裏切られてしまったのだ。
(しかもあの口ぶりだと……)
ハナティアは出産と共にこの国を俺と一緒に出て行くつもりだ。そして姉であるクレナティアさんに王女の座を譲る。それが最もの選択肢だとも彼女は言っていた。
果たしてそれは本当なのだろうか。
「ねえ翔君」
「はい?」
「翔君は今幸せ?」
「え?」
以前ハナティアに尋ねられた質問がクレナティアさんから出てくる。でもその答えは決まっている。
「そんなの幸せに決まっているじゃないですか。俺はハナティアの事が好きですし、ハナティアと一緒に居られるのが何よりも幸せですから」
「その幸せにいくつもの犠牲を払っても?」
「それは……」
「やっぱり……。ハナティアはそこを見抜いていたのね」
「どういう事ですか?」
「今回の件、多分だけど根本的な原因は翔君にあると思うの」
「俺にですか」
確かに俺はこの日までに多くの犠牲を払って来た。
親友達とのしばらくの別れ。
両親との別れ。
地上での生活との別れ。
でもその犠牲の上で幸せが成り立ってきた。だからトリナディアでのこれからの生活だった、幸せを得られるはず。
「幸せって人によって感じ方はそれぞれだけど、今の私に翔君が幸せそうには見えないなぁ。そしてきっとそれは、あの子も同じように感じていると思うの」
「そんな事ないですよ。確かに辛い別れはありましたが、一生会えないわけじゃないですし、いつかは絶対に会えますから。だからそれまではどんな事があっても、俺は不幸に感じる事なんて」
「それが甘いの翔君」
「甘い? 俺がですか」
「いい? これからあなたは一国の王になるのよ。そう簡単にそのいつかは来ると思う?」
「そうは思っていませんけど」
「いや、まだどこかで思っているわね。だからあの子はそんな翔君を見抜いて、王位から、全てから引こうとしているの。あなたの本当の幸せを得るために」
「本当の……幸せ?」
今この場所で、このトリナディアで王として暮らして行くのが本当の幸せじゃないのか?
(なら俺の本当の幸せは……)
元の日常に戻る事。
「結婚とか色々言っていたけど、あなたはまだあの子の側にいる本当の資格はない。もしあの子の隣に、王として立つその気があるなら、全てを捨てる覚悟をするくらいの思いであの子にぶつかりなさい」
それが俺の本当の気持ち、なのか?
「さっきからあなたは私の幸せとか何だとか言っているけど、そんなの私自身が決める事なの。あなたが決める事じゃない」
「で、でもお姉ちゃんは絶対にここに戻ってきた方がいいと思ったの。だから最良の選択を選ぼうとしているの。それの何が間違っているの?!」
「だからそれが間違っているって言ってるのよ! 私がいつそんな事を言ったかしら。そもそもお父さんとお母さんの事だってあるのに、そんな事を言っている場合じゃないでしょ」
演説の途中であるのにも関わらず、ちょっとした喧嘩を始めるクレナティアさん。もう何年も会っていない姉妹の再会ではあるのに、感動も何もない。
「お父さんとお母さんの事は……私はずっと探しているもん。お姉ちゃんこそ、探すことに手伝ってくれなかったくせに」
「そ、それは……」
「ふ、二人とも一度落ち着け。今はその話をする場じゃないだろ」
「翔平?」
「ハナティア、この話は改めて後で話すとして、今俺達がやるべき事は他にあるだろ」
これ以上二人の言い争いを続けさせるわけにも行かないので、俺は二人の間に入る。クレナティアさんの乱入によって逸れてしまったが、本来の演説の目的はこれからのトリナディアの事について話す事。
集まった人達から冷ややかな視線も感じるし、今はこの話は一度置いておくべきだ。
「とりあえずクレナティアさんはこっちへ。ハナティアは仕切り直してくれ」
俺はクレナティアさんを連れて舞台から降り、その場所から一度離れる事にした。
「み、皆さん少々お見苦しいところをお見せしてしまいました。しかし私の意志は変えるつもりはないことだけお伝えしておきます。では改めて今回皆さんに集まっていただいた理由をお話しします」
離れる際に一度仕切り直したハナティアの声が聞こえる。どうやら彼女の意志はまだ変わらないつもりらしい。
「ハナティアはまだ何も分かっていないのよ……」
「分かっていない?」
「あの子があの座から降りたらきっと後悔することになる。そんなの私は見てられない」
まるで何かを知っているかのような口ぶりでクレナティアさんは言葉を漏らす。
(俺もハナティアが王女の座から降りるのは勿論反対だけど)
それが後悔に繋がるって、一体どういう意味なんだ?
■□■□■□
クレナティアさんを連れて城へと戻ってきた俺は、彼女と改めて今日の事を話す事になった。
「クレナティアさん、まさか見に来ているだなんて思いませんでしたよ」
「実の妹が演説をするって聞いたら、そんなの無視できるわけないでしょ。私はあの子の姉なんだから」
「でも以前はもう会わないとか色々と言っていましたよね」
「勿論そのつもりだったわよ今日だって。でもまさかハナティアがあんな事を言い出すなんて考えていなかったから、居ても立っても居られなくなったの」
「そうですか……」
ハナティアのあの発言には勿論俺も驚かされた。だってつい先日、一緒に国を二人で作り上げていこうと約束して来たのに、それをまんまと裏切られてしまったのだ。
(しかもあの口ぶりだと……)
ハナティアは出産と共にこの国を俺と一緒に出て行くつもりだ。そして姉であるクレナティアさんに王女の座を譲る。それが最もの選択肢だとも彼女は言っていた。
果たしてそれは本当なのだろうか。
「ねえ翔君」
「はい?」
「翔君は今幸せ?」
「え?」
以前ハナティアに尋ねられた質問がクレナティアさんから出てくる。でもその答えは決まっている。
「そんなの幸せに決まっているじゃないですか。俺はハナティアの事が好きですし、ハナティアと一緒に居られるのが何よりも幸せですから」
「その幸せにいくつもの犠牲を払っても?」
「それは……」
「やっぱり……。ハナティアはそこを見抜いていたのね」
「どういう事ですか?」
「今回の件、多分だけど根本的な原因は翔君にあると思うの」
「俺にですか」
確かに俺はこの日までに多くの犠牲を払って来た。
親友達とのしばらくの別れ。
両親との別れ。
地上での生活との別れ。
でもその犠牲の上で幸せが成り立ってきた。だからトリナディアでのこれからの生活だった、幸せを得られるはず。
「幸せって人によって感じ方はそれぞれだけど、今の私に翔君が幸せそうには見えないなぁ。そしてきっとそれは、あの子も同じように感じていると思うの」
「そんな事ないですよ。確かに辛い別れはありましたが、一生会えないわけじゃないですし、いつかは絶対に会えますから。だからそれまではどんな事があっても、俺は不幸に感じる事なんて」
「それが甘いの翔君」
「甘い? 俺がですか」
「いい? これからあなたは一国の王になるのよ。そう簡単にそのいつかは来ると思う?」
「そうは思っていませんけど」
「いや、まだどこかで思っているわね。だからあの子はそんな翔君を見抜いて、王位から、全てから引こうとしているの。あなたの本当の幸せを得るために」
「本当の……幸せ?」
今この場所で、このトリナディアで王として暮らして行くのが本当の幸せじゃないのか?
(なら俺の本当の幸せは……)
元の日常に戻る事。
「結婚とか色々言っていたけど、あなたはまだあの子の側にいる本当の資格はない。もしあの子の隣に、王として立つその気があるなら、全てを捨てる覚悟をするくらいの思いであの子にぶつかりなさい」
それが俺の本当の気持ち、なのか?
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