我が家の床下で築くハーレム王国
第87話彼女が感じた不安と違和感
ダンボールなどの冗談は程々にして、俺とハナティアは二人きりで温泉に入る事に。やはり平日なだけあってお客さんもさほど多くないのか、誰かが入ってくる気配もないしある意味でラッキーだったのかもしれない。
「ふぅ、やっぱり温泉は気持ちいい」
「すっかりお前も気に入ったんだな、温泉」
「うん。だって癒しだもん」
七月の温泉旅行以来すっかり温泉を気に入ってしまったのか、ハナティアがそんな感想をもらす。まさか彼女がこんなにも日本の温泉を気に入ってもらえるとは思っていなかったけど、日本人としては少し嬉しい。
「温泉、トリナディアにも作れないかな」
「かなり難しいと思うぞ。まず掘りあてるところから始めないと駄目だし」
「そこは翔平が気合で何とか」
「できないよ?」
確かに温泉施設がトリナディアにあったらそれはそれで楽しいかもしれないが、なにぶん掘り当てる所から始めないといけないし、かなりの時間を必要とする作業になるだろう。
「でもあと一回くらい地上の温泉入りたかったなぁ」
「明日も入ればいいだろ?」
「それはそうなんだけど。ほら、温泉は他にもあるしできれば巡ってみたかったなって」
「ああ、そういう事か」
それは俺もしてみたかったかもしれない。何せ日本には温泉で有名な地なんていくらでもある。熱海でも草津でも、人生で一度は行ってみたい気持ちはある。
「それが出来るとしたら、全部が終わってからだな」
「その時は連れて行ってくれるの?」
「勿論だ。好きなだけ連れて行ってやるし、それにこれから生まれてくる子供にも見せたいだろ?」
「うん……。そうだね」
子供という言葉を聞いて、少しだけ元気をなくすハナティア。
「どうした?」
「ちょっとこの前の事を思い出しちゃってね。ほら、私が子供を産めば死ぬかもしれないって話」
「それは乗り越えようって約束しただろ」
「うん、そうなんだけどね。でももし仮に、私が死んだらこの子は私の顔も見ないまま生きていくのかなって考えたら、寂しくなっちゃって。それにそれだと、約束も果たせなくなるでしょ」
「何でそんな事言うんだよ」
「だって私のお姉ちゃんが、この国から出て行った本当の理由ってそれなんでしょ? そんな話聞いたら、不安になるに決まっているじゃない」
鼻の下まで体を沈めて、ブクブクするハナティア。
(そっか、あれから何事もなかったかのように過ごしてきたけど)
ハナティアはずっと不安になっていたんだ。この先の未来の事を。
「不安なら俺が絶対にそうさせないよ。約束する」
「具体的に何か考えとかあるの?」
「今はない。だけどこの先で絶対に見つけてみせる」
「私はそれを信じていいの?」
「信じていいとかじゃなくて、信じろ。俺がお前の側にずっといるから」
「……ありがとう」
「それにお前を支えるのは俺だけじゃない。サクヤやキャロル、ミウやフウカ、そしてお前の姉ちゃんだって力になってくれる。だから一人で抱え込むな」
俺が彼女にかけられる言葉はこれが精一杯だった。
具体的にどうすればハナティアを助けられるかなんて、そんなの今すぐに分かるわけもない。でもそれを見つけ出す事ならこの先時間をかけてでもできる。
(絶対に俺はハナティアを)
この手から手放す事なんてできない。
■□■□■□
三十分ほど温泉を堪能して夕食を食べた後、俺とハナティアは部屋へと戻ってきていた。
「美味しかったねご飯」
「確かに美味しかったけど、いくらなんでもお前は食べ過ぎだったんじゃないか?」
「いいの。あんなに美味しいものもう食べられないと思うし」
「だけど食べ過ぎたら、太……」
「何か言った?」
「何でもないです」
ちなみに夕食はバイキング形式だった。その為かハナティアはこれでもかというくらい食べていた。
「さてとご飯も食べたし風呂も入ったし、そろそろ寝るか」
「え? もう寝るの?」
「明日は朝から色々回るしな。早めに寝た方が明日が楽だろ?」
「うーん、そうだけど」
折角の二人きりの夜なんだから、と言いたそうな顔をするハナティア。気持ちはわからなくもないけど、俺もまだこういうのに不慣れなんだから仕方がない。
「私はまだ寝たくないかな」
「寝れないのか?」
「ううん、そうじゃないの。ただ」
何故か視線を部屋の窓に向けるハナティア。
「外に何かあるのか?」
「やっぱりいいや。私も寝る」
何がいいのか分からないが、ハナティアは自分のベッドに潜り込んでしまう。
「何だよ急に……」
結局ハナティアが何をしようとしていたのか分からないが、明日も朝早いし今日はこの辺で寝る事にしよう。
(おやすみない)
■□■□■□
それに気づいたのは、夕食を食べている途中だった。誰かに監視されているような視線、翔平は何も気がついていなかったけど私はそこはかとない違和感を感じていた。
(駄目だ、やっぱり気になって寝れない)
部屋の明かりが消えてから数時間後。布団に入ったものの眠れなかった私は、一度部屋をこっそり抜け出した。
時間は深夜の二時。
皆が寝静まっているはずのこの時間。部屋を出て、ホテルの廊下に入った私は、その違和感の正体をようやく知る事になる。
「やっぱりずっと付いてきていたのね。コソコソ隠れているなんてあなたらしくないじゃない」
「気づいていたんだね、ハナちゃん」
「ふぅ、やっぱり温泉は気持ちいい」
「すっかりお前も気に入ったんだな、温泉」
「うん。だって癒しだもん」
七月の温泉旅行以来すっかり温泉を気に入ってしまったのか、ハナティアがそんな感想をもらす。まさか彼女がこんなにも日本の温泉を気に入ってもらえるとは思っていなかったけど、日本人としては少し嬉しい。
「温泉、トリナディアにも作れないかな」
「かなり難しいと思うぞ。まず掘りあてるところから始めないと駄目だし」
「そこは翔平が気合で何とか」
「できないよ?」
確かに温泉施設がトリナディアにあったらそれはそれで楽しいかもしれないが、なにぶん掘り当てる所から始めないといけないし、かなりの時間を必要とする作業になるだろう。
「でもあと一回くらい地上の温泉入りたかったなぁ」
「明日も入ればいいだろ?」
「それはそうなんだけど。ほら、温泉は他にもあるしできれば巡ってみたかったなって」
「ああ、そういう事か」
それは俺もしてみたかったかもしれない。何せ日本には温泉で有名な地なんていくらでもある。熱海でも草津でも、人生で一度は行ってみたい気持ちはある。
「それが出来るとしたら、全部が終わってからだな」
「その時は連れて行ってくれるの?」
「勿論だ。好きなだけ連れて行ってやるし、それにこれから生まれてくる子供にも見せたいだろ?」
「うん……。そうだね」
子供という言葉を聞いて、少しだけ元気をなくすハナティア。
「どうした?」
「ちょっとこの前の事を思い出しちゃってね。ほら、私が子供を産めば死ぬかもしれないって話」
「それは乗り越えようって約束しただろ」
「うん、そうなんだけどね。でももし仮に、私が死んだらこの子は私の顔も見ないまま生きていくのかなって考えたら、寂しくなっちゃって。それにそれだと、約束も果たせなくなるでしょ」
「何でそんな事言うんだよ」
「だって私のお姉ちゃんが、この国から出て行った本当の理由ってそれなんでしょ? そんな話聞いたら、不安になるに決まっているじゃない」
鼻の下まで体を沈めて、ブクブクするハナティア。
(そっか、あれから何事もなかったかのように過ごしてきたけど)
ハナティアはずっと不安になっていたんだ。この先の未来の事を。
「不安なら俺が絶対にそうさせないよ。約束する」
「具体的に何か考えとかあるの?」
「今はない。だけどこの先で絶対に見つけてみせる」
「私はそれを信じていいの?」
「信じていいとかじゃなくて、信じろ。俺がお前の側にずっといるから」
「……ありがとう」
「それにお前を支えるのは俺だけじゃない。サクヤやキャロル、ミウやフウカ、そしてお前の姉ちゃんだって力になってくれる。だから一人で抱え込むな」
俺が彼女にかけられる言葉はこれが精一杯だった。
具体的にどうすればハナティアを助けられるかなんて、そんなの今すぐに分かるわけもない。でもそれを見つけ出す事ならこの先時間をかけてでもできる。
(絶対に俺はハナティアを)
この手から手放す事なんてできない。
■□■□■□
三十分ほど温泉を堪能して夕食を食べた後、俺とハナティアは部屋へと戻ってきていた。
「美味しかったねご飯」
「確かに美味しかったけど、いくらなんでもお前は食べ過ぎだったんじゃないか?」
「いいの。あんなに美味しいものもう食べられないと思うし」
「だけど食べ過ぎたら、太……」
「何か言った?」
「何でもないです」
ちなみに夕食はバイキング形式だった。その為かハナティアはこれでもかというくらい食べていた。
「さてとご飯も食べたし風呂も入ったし、そろそろ寝るか」
「え? もう寝るの?」
「明日は朝から色々回るしな。早めに寝た方が明日が楽だろ?」
「うーん、そうだけど」
折角の二人きりの夜なんだから、と言いたそうな顔をするハナティア。気持ちはわからなくもないけど、俺もまだこういうのに不慣れなんだから仕方がない。
「私はまだ寝たくないかな」
「寝れないのか?」
「ううん、そうじゃないの。ただ」
何故か視線を部屋の窓に向けるハナティア。
「外に何かあるのか?」
「やっぱりいいや。私も寝る」
何がいいのか分からないが、ハナティアは自分のベッドに潜り込んでしまう。
「何だよ急に……」
結局ハナティアが何をしようとしていたのか分からないが、明日も朝早いし今日はこの辺で寝る事にしよう。
(おやすみない)
■□■□■□
それに気づいたのは、夕食を食べている途中だった。誰かに監視されているような視線、翔平は何も気がついていなかったけど私はそこはかとない違和感を感じていた。
(駄目だ、やっぱり気になって寝れない)
部屋の明かりが消えてから数時間後。布団に入ったものの眠れなかった私は、一度部屋をこっそり抜け出した。
時間は深夜の二時。
皆が寝静まっているはずのこの時間。部屋を出て、ホテルの廊下に入った私は、その違和感の正体をようやく知る事になる。
「やっぱりずっと付いてきていたのね。コソコソ隠れているなんてあなたらしくないじゃない」
「気づいていたんだね、ハナちゃん」
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