我が家の床下で築くハーレム王国
第74話未来へ繋がる力
二人でトリナディアへ帰ると、俺達の帰りを待っていたのか全員が出迎えてくれた。
「ハナティア様!」
姿を見つけるなり真っ先に飛びついてきたのは、サクヤだった。ハナティアはそれを受け止めて、そしてすぐに……。
「サクヤ……ごめんなさい、私心配をかけて」
「謝る必要なんてありません! 私の方こそハナティア様にずっと隠し事をしていて……」
「いいの。私の事を想って黙っていたんだよね? でも私もう決めたの」
「……え?」
「私、そんな可能性なんて元からなかったと思わせるくらいに元気に生き抜いてみせる。それがこのトリナディア王国の姫として……ううん、母親としての使命だと思うから」
「ハナティア様……うぅ、うわぁぁん」
よほど黙っていた事が辛かったのか、サクヤが声を出して泣いた。彼女は多分、ハナティアの前のクレナティアさんの代からずっと悩み続けていたんだと今になって思う。でもクレナティアさんは自分でそれに気づいて、それを訴えたから王家から勘当されたんだろう。
(サクヤはそれをずっと引きずっていて……)
ハナティアももしかしたら離れる事になるかもしれないと思っていたから、それが怖かったんだと思う。
「詳しい事情は知らないけど、うまくいったんだな」
「無事に見つかってよかったです、本当に」
そんな事を考えながら二人を眺めていると、正志と雪音がこちらにやって来て声をかけてきた。
「二人にも苦労かけたな」
「何を今更。でもこうして戻ってこれたって事は、もう決まったんだな」
「ああ。決めたよ」
「決めたって、もしかして翔平君……」
「俺は夏休みを最後に、地上から離れてトリナディアでハナティアと一緒に暮らすよ。俺とハナティアはこれから結婚して、家族になる」
「そうか」
「寂しく……なりますね……」
俺の言葉を聞いて、雪音が泣き出してしまう。正志は至って冷静だが、恐らく彼も動揺はしていると思う。何故なら俺も二人と同じ気持ちなのだから。
「私達……もう三人で一緒にいられないんですね」
「雪音、正志、今まで一緒にいてくれてありがとうな」
「馬鹿野郎、そういう言葉は夏休みの最後にとっておけよ」
九月。俺達には少し早い別れの季節がすぐそこまで迫ってきていた。
「ねえサクヤ」
「はい」
「今日までずっと私を守ってきてくれてありがとう。でも私も昔よりも強くなったの。だから私、乗り越えてみせるよ」
「怖くはないんですか?」
「ちょっとは怖いよ。でも、私は一人じゃないから」
「そう……ですよね」
ハナティアが言う通り俺達は一人じゃない。支え合えばきっとどんな困難だって乗り越えられる。そしてそれはきっと、未来へ繋がる力になる。
「翔平、いざとなったら俺達も力になれる事を忘れるなよ」
「分かってるよ。何かあったら二人の力も頼らせてもらう」
「その言葉、絶対に忘れないでくださいね」
こうして俺の物語は、また新たなスタートを切ろうとしている。
■□■□■□
一夜明けて。
目を覚ますと目の前にはハナティアではなく……雪音が眠っていた。寝返りを打って反対を向くと、ハナティアが眠っている。狭い布団に俺とハナティアと雪音が眠っているというとてもカオスな状態になっていた。
(えっと、なんだこの状況)
昨晩の事を思い出してみる。確かハナティアが一緒に寝たいというので、一緒に寝る事にした。だが何故かそこに雪音まで乱入してきて……うん、思い出しても意味が分からない。
「んんっ……翔平?」
「悪い、起こしちゃったか?」
あまりにカオスな状況に言葉を失っていると、ハナティアが目を擦りながらこちらを見ている。
「ううん、そろそろ起きようと思っていたからいいの。それより……翔平の隣で寝ているのって……」
俺の隣で寝ている人物に気づいたのか、鬼の形相でこちらを見てくるハナティア。えっと、朝からめちゃくちゃ怖いです。
「え、えっとハナティア、さん? 昨日の事はお忘れで」
「まさか私が寝ている間に雪音と……」
「とりあえず話を聞こうか、な?」
「問答無用!」
「何でぇぇ」
この後雪音にも怒られる羽目になったのは、言うまでもない。
そんな朝のちょっとした(?)トラブルがありながらも、昨日の事は何もなかったかのように一日が始まった。
「そういえばハナティア、この前言っていた演説の内容考えたのか?」
「うーん、それがなかなかいいのが思いつかなくて」
「こういう時は雪音に聞いてみるのがいいかもな。こう見えて高校時代演劇部の脚本をやっていた位だし」
「い、いきなり私に振らないでくださいよ。それに脚本と演説の内容を考えるのは、全く違うもので」
「お願いします、雪音先生」
「せ、先生?!」
皆それぞれ昨日は元気がなかったのだが、一日寝て頭の中がスッキリしたのか、すっかり元気になっていた。俺もその中の一人なのだが、まだ少しだけ昨日の事を引きずっていたりする。
(夏休みも残り二週間とちょっと。三人で居られる時間も残りわずかか)
昨日二人には改めて俺の決断を話したのだが、その時もやはり雪音は涙を流していた。
当たり前だったこの時間もあと二週間もすれば失われてしまう。高校生の頃からずっと一緒だった三人の時間が、もうすぐ失われる。そう考えると、やはり寂しさを隠す事はできなかった。
「どうかされましたか、翔平様」
そんな事を考えていると、サクヤが声をかけてくる。サクヤも昨日結構泣いていたのだが、今日はその面影も見えない。
(やっぱり強いんだな)
「ちょっとな。サクヤはもう平気なのか?」
「はい。お陰様で」
「何というかそういうところ羨ましいよ」
「羨ましい、ですか」
「俺はまだ少しだけ昨日の事引きずっているんだよ」
「それはハナティア様の事ですか?」
「いいや。正志と雪音の事。夏休みが明けた後のことが心配でさ」
俺がいなくなった後、二人は普段通り大学へ通学する。そこに自分がいないと考えると、寂しいというか心配になる。
「二人だけでこの先、大丈夫かな」
「心配なら少しだけそれを和らげる方法を教えますよ」
「そんな方法があるのか?」
「まだ詳しくは話せませんが、翔平様がトリナディアに移住してから話します」
「なんだよ気になるな」
勿体振るくらいの方法って一体なんなのか気になるな。
「ハナティア様!」
姿を見つけるなり真っ先に飛びついてきたのは、サクヤだった。ハナティアはそれを受け止めて、そしてすぐに……。
「サクヤ……ごめんなさい、私心配をかけて」
「謝る必要なんてありません! 私の方こそハナティア様にずっと隠し事をしていて……」
「いいの。私の事を想って黙っていたんだよね? でも私もう決めたの」
「……え?」
「私、そんな可能性なんて元からなかったと思わせるくらいに元気に生き抜いてみせる。それがこのトリナディア王国の姫として……ううん、母親としての使命だと思うから」
「ハナティア様……うぅ、うわぁぁん」
よほど黙っていた事が辛かったのか、サクヤが声を出して泣いた。彼女は多分、ハナティアの前のクレナティアさんの代からずっと悩み続けていたんだと今になって思う。でもクレナティアさんは自分でそれに気づいて、それを訴えたから王家から勘当されたんだろう。
(サクヤはそれをずっと引きずっていて……)
ハナティアももしかしたら離れる事になるかもしれないと思っていたから、それが怖かったんだと思う。
「詳しい事情は知らないけど、うまくいったんだな」
「無事に見つかってよかったです、本当に」
そんな事を考えながら二人を眺めていると、正志と雪音がこちらにやって来て声をかけてきた。
「二人にも苦労かけたな」
「何を今更。でもこうして戻ってこれたって事は、もう決まったんだな」
「ああ。決めたよ」
「決めたって、もしかして翔平君……」
「俺は夏休みを最後に、地上から離れてトリナディアでハナティアと一緒に暮らすよ。俺とハナティアはこれから結婚して、家族になる」
「そうか」
「寂しく……なりますね……」
俺の言葉を聞いて、雪音が泣き出してしまう。正志は至って冷静だが、恐らく彼も動揺はしていると思う。何故なら俺も二人と同じ気持ちなのだから。
「私達……もう三人で一緒にいられないんですね」
「雪音、正志、今まで一緒にいてくれてありがとうな」
「馬鹿野郎、そういう言葉は夏休みの最後にとっておけよ」
九月。俺達には少し早い別れの季節がすぐそこまで迫ってきていた。
「ねえサクヤ」
「はい」
「今日までずっと私を守ってきてくれてありがとう。でも私も昔よりも強くなったの。だから私、乗り越えてみせるよ」
「怖くはないんですか?」
「ちょっとは怖いよ。でも、私は一人じゃないから」
「そう……ですよね」
ハナティアが言う通り俺達は一人じゃない。支え合えばきっとどんな困難だって乗り越えられる。そしてそれはきっと、未来へ繋がる力になる。
「翔平、いざとなったら俺達も力になれる事を忘れるなよ」
「分かってるよ。何かあったら二人の力も頼らせてもらう」
「その言葉、絶対に忘れないでくださいね」
こうして俺の物語は、また新たなスタートを切ろうとしている。
■□■□■□
一夜明けて。
目を覚ますと目の前にはハナティアではなく……雪音が眠っていた。寝返りを打って反対を向くと、ハナティアが眠っている。狭い布団に俺とハナティアと雪音が眠っているというとてもカオスな状態になっていた。
(えっと、なんだこの状況)
昨晩の事を思い出してみる。確かハナティアが一緒に寝たいというので、一緒に寝る事にした。だが何故かそこに雪音まで乱入してきて……うん、思い出しても意味が分からない。
「んんっ……翔平?」
「悪い、起こしちゃったか?」
あまりにカオスな状況に言葉を失っていると、ハナティアが目を擦りながらこちらを見ている。
「ううん、そろそろ起きようと思っていたからいいの。それより……翔平の隣で寝ているのって……」
俺の隣で寝ている人物に気づいたのか、鬼の形相でこちらを見てくるハナティア。えっと、朝からめちゃくちゃ怖いです。
「え、えっとハナティア、さん? 昨日の事はお忘れで」
「まさか私が寝ている間に雪音と……」
「とりあえず話を聞こうか、な?」
「問答無用!」
「何でぇぇ」
この後雪音にも怒られる羽目になったのは、言うまでもない。
そんな朝のちょっとした(?)トラブルがありながらも、昨日の事は何もなかったかのように一日が始まった。
「そういえばハナティア、この前言っていた演説の内容考えたのか?」
「うーん、それがなかなかいいのが思いつかなくて」
「こういう時は雪音に聞いてみるのがいいかもな。こう見えて高校時代演劇部の脚本をやっていた位だし」
「い、いきなり私に振らないでくださいよ。それに脚本と演説の内容を考えるのは、全く違うもので」
「お願いします、雪音先生」
「せ、先生?!」
皆それぞれ昨日は元気がなかったのだが、一日寝て頭の中がスッキリしたのか、すっかり元気になっていた。俺もその中の一人なのだが、まだ少しだけ昨日の事を引きずっていたりする。
(夏休みも残り二週間とちょっと。三人で居られる時間も残りわずかか)
昨日二人には改めて俺の決断を話したのだが、その時もやはり雪音は涙を流していた。
当たり前だったこの時間もあと二週間もすれば失われてしまう。高校生の頃からずっと一緒だった三人の時間が、もうすぐ失われる。そう考えると、やはり寂しさを隠す事はできなかった。
「どうかされましたか、翔平様」
そんな事を考えていると、サクヤが声をかけてくる。サクヤも昨日結構泣いていたのだが、今日はその面影も見えない。
(やっぱり強いんだな)
「ちょっとな。サクヤはもう平気なのか?」
「はい。お陰様で」
「何というかそういうところ羨ましいよ」
「羨ましい、ですか」
「俺はまだ少しだけ昨日の事引きずっているんだよ」
「それはハナティア様の事ですか?」
「いいや。正志と雪音の事。夏休みが明けた後のことが心配でさ」
俺がいなくなった後、二人は普段通り大学へ通学する。そこに自分がいないと考えると、寂しいというか心配になる。
「二人だけでこの先、大丈夫かな」
「心配なら少しだけそれを和らげる方法を教えますよ」
「そんな方法があるのか?」
「まだ詳しくは話せませんが、翔平様がトリナディアに移住してから話します」
「なんだよ気になるな」
勿体振るくらいの方法って一体なんなのか気になるな。
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