我が家の床下で築くハーレム王国
第7話大型連休の予定
翌日、いつも通り大学に通っている途中で、正志と遭遇した。
「あ、野生の正志が現れた」
「誰が野生だ!」
「ボール投げないと」
「ケータイを俺に向けるな馬鹿!」
ふざけ合いながら俺と正志は登校する。高校生の時はここに雪音も混ざって、三人で馬鹿しながら登校していたっけ。
「ところでさ翔平、一つ聞きたい事があるんだけどさ」
「何だよ、俺は今育てるのに忙しいんだよ」
「さっきのまじで捕まえてたのか?」
「まあ、冗談だけどな。それでなんだよ改まって」
「お前女の子と半同棲しているって本当か?」
「ぶふっ」
いつもの光景は、たった一言で壊れる事もある事を、俺は今日学びました。俺は手に持っていたスマホを落としかけてしまう。
「な、な、何をいきなり言い出すんだよ」
「いや、何か雪音が相談してきたからさ。お前の家に女の子がいたって。しかも小学生くらいに見えたって。まさかお前、ロリコンを飛び越して誘拐犯にでもなったのか? というかそれじゃあ同棲とかのレベルじゃないぞ」
「断じて違う! 間違ってないけど違う! あとそれだと俺は元からロリコンみたいな言い方に聞こえるからやめろ!」
どんな相談の仕方をすればそんな勘違いが生まれるのだろうか。いや、あながち間違ってはいないけど、ハナティアは決して小学生ではないし、同棲もしてなければ誘拐犯でもない。
(見た目が子供なのは、間違ってないけど)
あれでも年は俺達とさほど変わらないんだぞ。
「俺はお前がいつかは犯罪者になるんじゃないかって心配していたけど、まさかこんな形でお前が……」
「まずは話を聞いてくれ! いいか、雪音が見たのは……」
このままだと本気で通報されかねないので説明をする。通行人が冷ややかな目を向ける中、俺はここまでの事を一通り説明するのであった。
「つまりロリコンなんだな、お前」
全てを聞いた正志が出した結論は、結局何一つ変わらなかったとさ。
「いや、だから何でそうなるんだよ!」
「何でって、お前それ」
「何だよ」
「いや、何でもない」
とりあえず正志も事情を理解してくれたので、変な誤解はされずに済んだ。
(まさか朝からこんな話をするなんてな……)
高校生の時まではごく普通の生活を送っていたのに、この一ヶ月間で急激に変化している。それは下手をすればいつしか二人にも影響を与えてしまうかもしれない。
(もし本当に俺がこれからトリナディアで暮らすなんて日がきたら)
その時二人はどんな反応をするのだろうか。少しだけ怖くなる。
「まあ、お前に何が起きているのか詳しくは知らないけど、無理だけはするなよ」
「分かってる」
「あと犯罪を犯すなよ」
「それだけは絶対にないから!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
話は変わるが俺は一人暮らしをしているわけだが、全ての金を親に頼っているわけではなく、最低限生活できるくらいのお金を稼ぐためにバイトをしている。主に夜間にシフトを入れてもらっているのだが、今日は何故か少しだけ早くに入る事になった。
「実は柏原君に新人の教育をしてもらおうかなって思って。少し早く入ってもらったんだよ」
「新人の教育、ですか?」
話を聞くと新人が今日から入ってきたらしい。その教育を俺に頼みたいようだった。
「そう。今日から入った新人でね。ほら、入ってきてくれ」
店長に呼ばれると扉が開かれ、誰かが入ってくる。
「前園咲夜です。初めまして、ではございませんね」
「なぁ!」
俺は思わず声を上げてしまう。
呼ばれて入ってきたのは、ハナティアのメイドのサクヤだった。名前は偽名を使っているみたいだが、元の名前に苗字を適当につけたくらいだ。
「何だ柏原君の知り合いなのか? だったら教えやすいんじゃないか」
「いや、知り合いですけど」
知り合いというか、メイドというか何というか……。
「よろしくお願いしますね、翔平さん」
「よ、よろしく」
ああ崩れてゆく俺の日常。
「うわ、すげえ可愛いな」
「いくつなんだろ?」
周りからガヤが聞こえてくる。まあ普通の人から見れば、サクヤはどちらかといえば美人の類に入る。それは分かるのだが、
「ところで翔平さん」
「何だよ」
「いつになったら結婚してくれるのでしょうか」
「「け、結婚?!」」
こういう不用意な発言をするのだけは本当にやめてもらいたい。これだとまるでサクヤと俺が結婚するみたいな言い方だ。
「待て待て、誰がいつお前と結婚すると言った」
「私を差し置いて他の方と結婚しようとするなんて酷いです」
「やだ浮気?」
「酷いわね」
「とりあえずサクヤはあとで覚えてろ! あと外野うるさいから!」
どうか戻ってきてほしい、俺の日常。
「国の資金を稼ぎに?」
「そんな感じです。まあ、稼げるお金もたかが知れてますけど」
「全国のアルバイターにとりあえず謝ってもらおうか」
バイト終了後の帰り道、サクヤにどういう事なのか説明を求めたところ、どうやらそういう事らしい。ただ国の資金をアルバイトで稼ごうとしているというのはどうかと思う。
「シフト見たとところ、そこそこ入っているみたいだけど、城とかハナティアとかは大丈夫なのか?」
「その辺はご心配なく。守備の方はしっかりしていますから」
「ならいいけど」
「もしかして姫様を心配してくれているんですか?」
「そ、そうじゃねえよ」
朝から正志が変な事を言うので、少し変に意識をしてしまっているから、その影響が出ているのかもしれない。
(同棲だなんて、そんな事は絶対に……)
確かに時々二人で家にいる事はあるが、それは彼女が一方的にしている事で、別に俺がどうこうとかそういう話ではないはず。
「翔平様がハナティア様を心配してくださるなんて、メイドとしてすごく嬉しいです」
「だから違うってば」
「でも私嬉しいですよ。翔平さんも少しずつですが、ハナティア様を想ってくれるようになったのですね」
「何一人で感動しているんだよお前は」
「親心というやつでしょうかね」
「いつから親になったんだよお前は」
そんな親心余計なお世話だと言ってやりたい。
「そうだサクヤ、お前これからしばらくあそこで働くなら、今日みたいな発言は絶対にやめろよ。変な誤解だけが生まれるから」
「何でですか? 間違ってはいないかと」
「あれだと周りからしたら、お前との結婚を俺が断って、他の女に乗り移ったみたいな言い方だからな! おかげで誤解を解くのに時間がかかったんだぞ」
「でもそれも面白いと私は思いますけど。それに多分、まんざらでもない気もしますけど」
「どういう意味だよそれ」
「内緒です」
ちなみにしばらく、俺はこのネタで散々バイト先でからかわれる事になるのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
サクヤが俺と同じバイトを始めた事により、ほぼ毎日のように地下の誰かと接するようになっていた。
実はというと、何度か勝手に人の部屋に誰かが上がりこんでいる事が多くて、少し困っている。しかもそのタイミングが、夜とか朝とかなら尚更だ。
だが今日はそれを更に上回る事態が発生した。
「平ちゃん、遊びに来たよー」
「お邪魔します」
今日家を訪ねてきたのは、キャロルとハナティア。
「お邪魔ー」
「お、お邪魔します」
更に正志と雪音。
「って、おい! なんで二人が来てるんだよ」
そう、俺の家に地下の二人と地上の二人が俺の家で遭遇。
「いやぁ、お前が同棲生活をいかに楽しんでいるか気になってな。まさか二股しているとは思ってなかったけど」
「ろ、ロリコンのうえに浮気者なんて、私翔平君を見損ないました」
「ま、待て! 二人とも勘違いするのはやめてくれ!」
「平ちゃん、この二人誰?」
「女の子もいるけど、まさか浮気しているの?」
「待てハナティア、まず俺とお前は付き合ってすらいないからな。これ以上話をややこしくしないでくれ」
こういうのを修羅場と呼ぶのだろうか。いやなんか違う気がする。
「そうだよ。平ちゃんは私の物だからねー。変態だけど」
「キャロル、お前もだ! あとどさくさに紛れて変態いうな!」
(何このカオスな状況)
俺はこの日天罰でも下ったのかとさえ思ってしまったのであった。
それから約一時間後。
「翔平から聞いていたけど、本当に俺達と年かわらないのか?」
「うん。翔平と一緒」
「じゃ、じゃあ翔平君はロリコンとかではないのですね」
「俺は最初からそう言ってるけどな」
「でも平ちゃんはこの前、ハナちゃんと」
「お前は黙ってろ、キャロル」
とりあえず二人の誤解を解き、何とかカオスな状況は避けられた。その後も話が合うのか、俺も含めて五人はそれなりに意思疎通ができ、なかなか有意義な時間を過ごせている。
「私ちょっと外出てくる」
だけどその途中でハナティアが一人席を外した。少し気になった俺は、その後を追う。
「どうした? 気分でも悪くなったのか」
「別にそうじゃないわよ。ただ、外の空気が吸いたかったの」
「俺と二人の時はそのキャラなんだな」
「こっちが本当の私だからね」
家から少し離れた所まで散歩してきたので、近くの公園のベンチに二人で腰をかける。
「あれが翔平の親友?」
「ああ。高校からの親友だよ」
「いい人みたいだけど、彼女の方は……」
「ん? 雪音がどうかしたか?」
「あ、ううん。別に何でもない」
「何だよ、気になるな」
あからさますぎるというか、分かりやすいというべきか、どうもハナティアの雪音に対する接し方が変だった。
それは先日も同様にあった事なので、俺の中には疑問だけが増えていくだけだった。別に向こうは悪気はないのだろうけど、逆に俺はそれが引っかかる。
「ところでさ翔平、そろそろ地上だと大型連休じゃないの?」
そんな俺の疑念を無視するかのように、ハナティアは話をすり替えた。彼女の言う大型連休というのは恐らくゴールデンウィークの事を示しているのだろう。
「ゴールデンウィークの事か? 確かにもうすぐだけど、どうして」
「その休みを使って、翔平には私達の国に来てある事をしてもらいたいんだけどいい?」
「内容によるけど、別に構わないよ。ただ、正志達との約束もあるから、程々にしてくれよな」
「勿論。下手な事はしないから、心配しないで」
「何かはするんだな」
とりあえず約束だけはし、俺達は家へと戻る事にした。
「折角の休みなんだから、無駄になるような事はよしてくれよ」
「大丈夫だって」
「フラグにしか聞こえないんだけどなぁ……」
だがそのゴールデンウィークに、まさかあんな目に合わされるなんて、この時は思ってもいなかった。
■□■□■□
「お、帰ってきたか二人とも」
「遅かったですよ二人とも」
「悪いな。ちょっと外の空気を吸いたくてさ」
「今丁度ゴールデンウィークの予定を話していたんだよ。ほら、翔平こことかいいんじゃないか?」
しばらく散歩した後に家へ戻ると、正志がパンフレットみたいなものを俺に見せてくる。大学生になって初めての大型連休なのだから、ウキウキする気持ちは分からなくもないが、その他の二人の気持ちも考えてもらいたい。
「あ、ちなみに私とハナちゃんも一緒に行くからね、平ちゃん」
そんな心配は無用だった。
「え? いいのか正志、この二人も連れて行くの」
「折角知り合えたんだからいいだろ? それともお前は、そこのハナティアちゃんと二人きりにでもなりたいのか?」
「ば、馬鹿言うな!」
ゴールデンウィーク、この五人で過ごして本当に大丈夫なのかと、俺は少しだけ不安になる。頭の二日間はハナティアと二人きりになる予定ではいるけど、その他を五人で過ごすなんて想像ができない。
(本当に……大丈夫だよな?)
これ以上フラグ立つのはやめてほしいんだけど。
「あ、野生の正志が現れた」
「誰が野生だ!」
「ボール投げないと」
「ケータイを俺に向けるな馬鹿!」
ふざけ合いながら俺と正志は登校する。高校生の時はここに雪音も混ざって、三人で馬鹿しながら登校していたっけ。
「ところでさ翔平、一つ聞きたい事があるんだけどさ」
「何だよ、俺は今育てるのに忙しいんだよ」
「さっきのまじで捕まえてたのか?」
「まあ、冗談だけどな。それでなんだよ改まって」
「お前女の子と半同棲しているって本当か?」
「ぶふっ」
いつもの光景は、たった一言で壊れる事もある事を、俺は今日学びました。俺は手に持っていたスマホを落としかけてしまう。
「な、な、何をいきなり言い出すんだよ」
「いや、何か雪音が相談してきたからさ。お前の家に女の子がいたって。しかも小学生くらいに見えたって。まさかお前、ロリコンを飛び越して誘拐犯にでもなったのか? というかそれじゃあ同棲とかのレベルじゃないぞ」
「断じて違う! 間違ってないけど違う! あとそれだと俺は元からロリコンみたいな言い方に聞こえるからやめろ!」
どんな相談の仕方をすればそんな勘違いが生まれるのだろうか。いや、あながち間違ってはいないけど、ハナティアは決して小学生ではないし、同棲もしてなければ誘拐犯でもない。
(見た目が子供なのは、間違ってないけど)
あれでも年は俺達とさほど変わらないんだぞ。
「俺はお前がいつかは犯罪者になるんじゃないかって心配していたけど、まさかこんな形でお前が……」
「まずは話を聞いてくれ! いいか、雪音が見たのは……」
このままだと本気で通報されかねないので説明をする。通行人が冷ややかな目を向ける中、俺はここまでの事を一通り説明するのであった。
「つまりロリコンなんだな、お前」
全てを聞いた正志が出した結論は、結局何一つ変わらなかったとさ。
「いや、だから何でそうなるんだよ!」
「何でって、お前それ」
「何だよ」
「いや、何でもない」
とりあえず正志も事情を理解してくれたので、変な誤解はされずに済んだ。
(まさか朝からこんな話をするなんてな……)
高校生の時まではごく普通の生活を送っていたのに、この一ヶ月間で急激に変化している。それは下手をすればいつしか二人にも影響を与えてしまうかもしれない。
(もし本当に俺がこれからトリナディアで暮らすなんて日がきたら)
その時二人はどんな反応をするのだろうか。少しだけ怖くなる。
「まあ、お前に何が起きているのか詳しくは知らないけど、無理だけはするなよ」
「分かってる」
「あと犯罪を犯すなよ」
「それだけは絶対にないから!」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
話は変わるが俺は一人暮らしをしているわけだが、全ての金を親に頼っているわけではなく、最低限生活できるくらいのお金を稼ぐためにバイトをしている。主に夜間にシフトを入れてもらっているのだが、今日は何故か少しだけ早くに入る事になった。
「実は柏原君に新人の教育をしてもらおうかなって思って。少し早く入ってもらったんだよ」
「新人の教育、ですか?」
話を聞くと新人が今日から入ってきたらしい。その教育を俺に頼みたいようだった。
「そう。今日から入った新人でね。ほら、入ってきてくれ」
店長に呼ばれると扉が開かれ、誰かが入ってくる。
「前園咲夜です。初めまして、ではございませんね」
「なぁ!」
俺は思わず声を上げてしまう。
呼ばれて入ってきたのは、ハナティアのメイドのサクヤだった。名前は偽名を使っているみたいだが、元の名前に苗字を適当につけたくらいだ。
「何だ柏原君の知り合いなのか? だったら教えやすいんじゃないか」
「いや、知り合いですけど」
知り合いというか、メイドというか何というか……。
「よろしくお願いしますね、翔平さん」
「よ、よろしく」
ああ崩れてゆく俺の日常。
「うわ、すげえ可愛いな」
「いくつなんだろ?」
周りからガヤが聞こえてくる。まあ普通の人から見れば、サクヤはどちらかといえば美人の類に入る。それは分かるのだが、
「ところで翔平さん」
「何だよ」
「いつになったら結婚してくれるのでしょうか」
「「け、結婚?!」」
こういう不用意な発言をするのだけは本当にやめてもらいたい。これだとまるでサクヤと俺が結婚するみたいな言い方だ。
「待て待て、誰がいつお前と結婚すると言った」
「私を差し置いて他の方と結婚しようとするなんて酷いです」
「やだ浮気?」
「酷いわね」
「とりあえずサクヤはあとで覚えてろ! あと外野うるさいから!」
どうか戻ってきてほしい、俺の日常。
「国の資金を稼ぎに?」
「そんな感じです。まあ、稼げるお金もたかが知れてますけど」
「全国のアルバイターにとりあえず謝ってもらおうか」
バイト終了後の帰り道、サクヤにどういう事なのか説明を求めたところ、どうやらそういう事らしい。ただ国の資金をアルバイトで稼ごうとしているというのはどうかと思う。
「シフト見たとところ、そこそこ入っているみたいだけど、城とかハナティアとかは大丈夫なのか?」
「その辺はご心配なく。守備の方はしっかりしていますから」
「ならいいけど」
「もしかして姫様を心配してくれているんですか?」
「そ、そうじゃねえよ」
朝から正志が変な事を言うので、少し変に意識をしてしまっているから、その影響が出ているのかもしれない。
(同棲だなんて、そんな事は絶対に……)
確かに時々二人で家にいる事はあるが、それは彼女が一方的にしている事で、別に俺がどうこうとかそういう話ではないはず。
「翔平様がハナティア様を心配してくださるなんて、メイドとしてすごく嬉しいです」
「だから違うってば」
「でも私嬉しいですよ。翔平さんも少しずつですが、ハナティア様を想ってくれるようになったのですね」
「何一人で感動しているんだよお前は」
「親心というやつでしょうかね」
「いつから親になったんだよお前は」
そんな親心余計なお世話だと言ってやりたい。
「そうだサクヤ、お前これからしばらくあそこで働くなら、今日みたいな発言は絶対にやめろよ。変な誤解だけが生まれるから」
「何でですか? 間違ってはいないかと」
「あれだと周りからしたら、お前との結婚を俺が断って、他の女に乗り移ったみたいな言い方だからな! おかげで誤解を解くのに時間がかかったんだぞ」
「でもそれも面白いと私は思いますけど。それに多分、まんざらでもない気もしますけど」
「どういう意味だよそれ」
「内緒です」
ちなみにしばらく、俺はこのネタで散々バイト先でからかわれる事になるのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
サクヤが俺と同じバイトを始めた事により、ほぼ毎日のように地下の誰かと接するようになっていた。
実はというと、何度か勝手に人の部屋に誰かが上がりこんでいる事が多くて、少し困っている。しかもそのタイミングが、夜とか朝とかなら尚更だ。
だが今日はそれを更に上回る事態が発生した。
「平ちゃん、遊びに来たよー」
「お邪魔します」
今日家を訪ねてきたのは、キャロルとハナティア。
「お邪魔ー」
「お、お邪魔します」
更に正志と雪音。
「って、おい! なんで二人が来てるんだよ」
そう、俺の家に地下の二人と地上の二人が俺の家で遭遇。
「いやぁ、お前が同棲生活をいかに楽しんでいるか気になってな。まさか二股しているとは思ってなかったけど」
「ろ、ロリコンのうえに浮気者なんて、私翔平君を見損ないました」
「ま、待て! 二人とも勘違いするのはやめてくれ!」
「平ちゃん、この二人誰?」
「女の子もいるけど、まさか浮気しているの?」
「待てハナティア、まず俺とお前は付き合ってすらいないからな。これ以上話をややこしくしないでくれ」
こういうのを修羅場と呼ぶのだろうか。いやなんか違う気がする。
「そうだよ。平ちゃんは私の物だからねー。変態だけど」
「キャロル、お前もだ! あとどさくさに紛れて変態いうな!」
(何このカオスな状況)
俺はこの日天罰でも下ったのかとさえ思ってしまったのであった。
それから約一時間後。
「翔平から聞いていたけど、本当に俺達と年かわらないのか?」
「うん。翔平と一緒」
「じゃ、じゃあ翔平君はロリコンとかではないのですね」
「俺は最初からそう言ってるけどな」
「でも平ちゃんはこの前、ハナちゃんと」
「お前は黙ってろ、キャロル」
とりあえず二人の誤解を解き、何とかカオスな状況は避けられた。その後も話が合うのか、俺も含めて五人はそれなりに意思疎通ができ、なかなか有意義な時間を過ごせている。
「私ちょっと外出てくる」
だけどその途中でハナティアが一人席を外した。少し気になった俺は、その後を追う。
「どうした? 気分でも悪くなったのか」
「別にそうじゃないわよ。ただ、外の空気が吸いたかったの」
「俺と二人の時はそのキャラなんだな」
「こっちが本当の私だからね」
家から少し離れた所まで散歩してきたので、近くの公園のベンチに二人で腰をかける。
「あれが翔平の親友?」
「ああ。高校からの親友だよ」
「いい人みたいだけど、彼女の方は……」
「ん? 雪音がどうかしたか?」
「あ、ううん。別に何でもない」
「何だよ、気になるな」
あからさますぎるというか、分かりやすいというべきか、どうもハナティアの雪音に対する接し方が変だった。
それは先日も同様にあった事なので、俺の中には疑問だけが増えていくだけだった。別に向こうは悪気はないのだろうけど、逆に俺はそれが引っかかる。
「ところでさ翔平、そろそろ地上だと大型連休じゃないの?」
そんな俺の疑念を無視するかのように、ハナティアは話をすり替えた。彼女の言う大型連休というのは恐らくゴールデンウィークの事を示しているのだろう。
「ゴールデンウィークの事か? 確かにもうすぐだけど、どうして」
「その休みを使って、翔平には私達の国に来てある事をしてもらいたいんだけどいい?」
「内容によるけど、別に構わないよ。ただ、正志達との約束もあるから、程々にしてくれよな」
「勿論。下手な事はしないから、心配しないで」
「何かはするんだな」
とりあえず約束だけはし、俺達は家へと戻る事にした。
「折角の休みなんだから、無駄になるような事はよしてくれよ」
「大丈夫だって」
「フラグにしか聞こえないんだけどなぁ……」
だがそのゴールデンウィークに、まさかあんな目に合わされるなんて、この時は思ってもいなかった。
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「お、帰ってきたか二人とも」
「遅かったですよ二人とも」
「悪いな。ちょっと外の空気を吸いたくてさ」
「今丁度ゴールデンウィークの予定を話していたんだよ。ほら、翔平こことかいいんじゃないか?」
しばらく散歩した後に家へ戻ると、正志がパンフレットみたいなものを俺に見せてくる。大学生になって初めての大型連休なのだから、ウキウキする気持ちは分からなくもないが、その他の二人の気持ちも考えてもらいたい。
「あ、ちなみに私とハナちゃんも一緒に行くからね、平ちゃん」
そんな心配は無用だった。
「え? いいのか正志、この二人も連れて行くの」
「折角知り合えたんだからいいだろ? それともお前は、そこのハナティアちゃんと二人きりにでもなりたいのか?」
「ば、馬鹿言うな!」
ゴールデンウィーク、この五人で過ごして本当に大丈夫なのかと、俺は少しだけ不安になる。頭の二日間はハナティアと二人きりになる予定ではいるけど、その他を五人で過ごすなんて想像ができない。
(本当に……大丈夫だよな?)
これ以上フラグ立つのはやめてほしいんだけど。
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