我が家の床下で築くハーレム王国

りょう

第22話女の子らしさ

 そしてやって来た週末。俺は早朝からトリナディアへとやって来て、到着するなりサクヤにある部屋に案内されていた。

「なんでそんなに固くなっているんですか? もっと力を抜いていいんですよ?」

「あのな、分からないかもしれないけど普通こういうシチュエーションって、男からしたらドキドキするものなんだよ」

「そういうものなんですか?」

「そういうものなんだよ」

 同じ部屋で一晩ならともかく、一日一緒にいるなんて普通は男とでも女でも緊張してしまうもの。それが分からないサクヤはもしかして、

「サクヤってまさか男と無縁すぎて、そういう経験が」

「し、失礼なこと言わないでくださいよ! 私だってそれくらいの経験は……」

「ないんだな」

「た、ただ縁がなかっただけなんです!」

 ムキになるあたりやはり図星だったらしい。まあサクヤも見た目は若いけど、それなりの歳行っているしそういうの考えるよな。

「翔平様、今ものすごく失礼な事考えませんでしたか?」

「か、考えてないよ。もうアラフォーなんじゃないかなんて」

「私はこれでもまだ三十代です!」

 そんなやり取りをしながら、ハナティアの部屋へと到着。

(ここで丸一日、か)

 やはり緊張は解けない。女子と一日二人きりなんて成人男子からしたら、それはもう色々考えてしまうわけで。

 果たしてハナティアはどう思っているのか少し気になるところだけど。

「ふわぁ、おはよう翔平」

「って、まだ寝てたのかよ。てっきり起きてるのかと思ったよ」

「それではお二人共、ごゆっくりと」

「え?今から始まるの?」

 もうハナティアは起きていて、この後来るものだと思っていたから、布団から突然出てきたので驚いた。しかもそれを見るなりサクヤは部屋を出て行くし。

「翔平、眠い……」

「まあ、まだ朝早いからな」

「もう少し寝かせて」

「いや、それだと俺朝から来た意味ないから」

「えぇ、もっと寝たいのに」

「その気持ちは分かるけどさ」

 何せまだ朝七時を回ったばかり。俺ですら眠いと感じるくらいだから、当然の反応をするのも分かる。けど、次いつ起きるかも分からないのでここは我慢してもらう。

「別に何かしろって訳じゃないんだから、一日寝ようよ」

「サクヤに怒られるかもしれないぞ」

「うっ、それは嫌だけど」

「じゃあ我慢だな」

「仕方ないか……」

 やれやれと体を起こすハナティア。計画の当事者がこの体たらくなのはどうかと思うが、もうこういうのも慣れた。

「でも本当にやる事ないよな。二人で丸一日部屋で過ごせって言われてもさ」

「でしょ? 昔からやっている事みたいなんだけど、これは本当に退屈なんだって」

「昔から? ハナティアの両親の事か?」

「まあ、うん。だから長続きしないとかあるみたいなんだけど」

「愛が冷めるって事か? なんかヤケにリアルだな」

「どの辺りがリアルなのか分からないけどその通り。だから皆悩んでいるのよね」

 そんなリアルの悩みを打ち明けるハナティア。歴代って事は、昔からこの計画は存在しているらしい。でも代々こうしてうまくいっているから、ハナティアが今ここにいるのも事実。

(いや、そうでもないか)

 この計画の魂胆って子供を増やして国の繁栄をさせるって事だから、後継ぎはいるものの根本は解決出来ていない。それを果たして俺なんかでできるのか、やはり不安になってくる。

「このまま何もしないで一日過ごすのも暇だから、何かするか?」

「何かって何を?」

「一応時間をつぶすためのアイテムは持ってきておいたんだよ」

 持ってきておいたバックから、俺は時間を潰せるようにトランプなど二人でも遊べるような物を取り出す。

「二人でトランプ、なんか地味な絵になりそう」

「子供だから丁度いいだろ?」

「子供じゃないわよ!」

 それから二時間後。

「はいこれで俺の勝ち」

「ああもう! 翔平強すぎ」

「ハナティアが分かりやすすぎるんだよ」

 未だに俺の不敗記録が続いていた。二人でやっているからというのもあるのだけれど、ハナティアは俺が当たりを引こうとすると、それを拒まんと色々としてくる。それが却って怪しくなり、ここまで不敗という記録を打ち出している。

「やっぱり二人でやる物じゃないわよ、トランプ」

「うん、俺も思った」

 こんな時まで二人で遊ぶようなものじゃないよな、これ。

 ■□■□■□
「ハナティアは何か暇つぶしのアイテムはないのか?」

「ここ私の部屋だけど、見ての通り特に何も置いてないの」

「寂しい部屋だな」

「余計なお世話よ」

 今更ながらハナティアの部屋は本当に何も置いていない事に気がついた。あるとしたら今座ってる机とテーブル、そしてベッド。あとは基本的な家具とかで、テレビは置いていない。一見豪華そうに見える部屋だが、どうも寂しさを感じずにはいられなかった。

「もっとハナティアも女の子らしい事してもいいんじゃないのか? 部屋にぬいぐるみとか置いたりさ」

「それは私が女の子じゃないって言いたいのかしら?」

「この部屋だけ見たらそう思われるよ」

 ハナティアにそういうのを求めるのは難しいかもしれないけど、俺はそういうのがあってもいいかなとは思う。とはいえ、今は何もない事には変わりないので、持ってきた将棋で遊ぶ事に。

「なあハナティア、お前今日始めたばかりなんだよな?」

「うん」

「何でそんなに強いんだよ」

「先の先の手まで考えているからじゃない?」

 今度は逆にハナティアが謎の才能を発揮。もしかして元から頭がいいからなのか、全く歯が立たない。しかもさっきルールを教えたばかりという事実。

「もしかしてハナティアって、頭がいいのか?」

「姫になるにあたって、色々な勉強をしているから最低でも翔平よりは頭いいかな」

「うるせぇ。頭悪くて悪かったな」

「さっきのお返しよ」

 何度やっても勝てないので、今度は俺が意地になってしまい、気がつけばサクヤが昼飯を運んできていた。

「お二人共何をしているんですか」

「サクヤ、助けて〜」

「まだまだ負けられない!」

 昼食。食べる場所はやはりハナティアの部屋。

「お二人共午前中ずっと遊んでいたんですか?」

「やる事がなかったんだよ。丸一日同じ部屋で何かをするって言ったら、やっぱり遊びとかだろ?」

「確かにやる事がないから仕方ないってのは分かりますけど、お二人にはもっとですね」

 その後サクヤは、ここでは決して言えないようなあれやこれを語り出した。昼飯の間ずっとサクヤは色々言っていたのだが、そこは自主規制という事で。

「分かりましたか? 二人とも」

「は、はい」

「わ、私絶対そういう事しないからね!」

「ハナティア様、そういう事とはどういう事でしょうか」

「ば、馬鹿。言えるわけないでしょ!」

 長い一日はまだまだ続く。

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