我が家の床下で築くハーレム王国
第30話記憶の中の少女 後編
「雪音ちゃんの事に関しては、本当にごめんね。まさか同じ高校に通っていたなんて思わなかったし、また友達になっているなんて思いもしなかったの」
「じゃあ雪音は全部知ってて、今日まで俺と接していたのか?」
「うん。本人もそれを了承してくれていた。これを知ったら絶対翔平混乱すると思ったから」
だが無常にもハナティアから出てきた言葉は、その事実を肯定するものであった。俺は動揺しながらも、話を続ける。
「じゃあ雪音もあの事故の被害者なのか?」
「うん……」
「どうしてそんな大事な事を……」
信じられなかった。高校生の時に出会ったと思っていた彼女が、まさかずっと前から出会っていたなんて。
(でもそういえば)
いつしかハナティアと俺が一緒にいる事を雪音に見つかった事をサクヤに話した時、『彼女』なら大丈夫だと言っていた。
あの時は何の事なのかサッパリ分からなかったけど、今思えばそれは雪音の事を示していたのかもしれない。
「もしかして儀式を始める前にハナティアが心配していた事って、この事なのか?」
「それもある。ここは翔平にとっては嫌な思い出の場所でもあるから、もしかしたら思い出してしまう可能性があると思ったから」
「それもって事は、他にもあるのか?」
その質問にハナティアは答えない。ただでさえショックだったのに、まだこれ以上何かあるとするなら、一体何が俺を待っているのだろうか。
少しだけ怖くなる。
「さあ今日も儀式やらなきゃいけないんだなら、翔平も集中してね」
「あ、ああ」
おまけに儀式は残り三日も残っている。その間に俺はどんな事を思い出して、どんな気持ちになるのかそれは分からない。
ただ、ハナティアの言う通り、残りの三日で更に失っていた記憶を取り戻す事になろうとは思いもしなかった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ぎしき? 何それお姉ちゃん」
「うーんとね、翔平。とても大切な行事って言えば分かるかな。ほら、小学校でやる運動会と同じくらい大切な事なの」
「運動会? じゃあお母さんとかも一緒なの? だったら僕も」
「ううん。お姉ちゃんと大切な人の二人きりだから、翔平はお留守番してて」
「えー!」
思えば二十年前。翔平のお姉ちゃんが今の私と同じように儀式をする事になったのが、全てのキッカケだった。当時まだ子供だった私は、一応儀式というのがあるというのだけは知っていたけど、詳しくは知らなかった。
「翔平、お姉ちゃんの言う事も聞けないなんて、悪い子」
「うるさいよハナ。同じ年のくせに偉そうにして」
「だって私は偉いもん。お父さんとお母さんはこの国の一番偉い人なんだから」
「ハナは一番偉くないだろ? だから指図しないでよ」
「うう、翔平の分からずや!」
当時まだ私は弱い子で、翔平とよく喧嘩して、その度に泣かされて柚お姉ちゃんの所に行ってた。
そう、あの日も。
「サクヤー、柚お姉ちゃんはどこ?」
「ハナティア様、柚様は只今儀式中の為お会いできません」
「えー、そんなぁ」
数日前から柚お姉ちゃんが儀式に入っていて、会えない事をサクヤから知らされて寂しくなっていた。
「ハナちゃんハナちゃん、ちょっと来てください」
そんな時もう一人の幼馴染の雪音ちゃんが私を呼んだ。そこには翔平もいて、私にある事を伝えた。
「え? こっそり見にいくの?」
「だってハナ、お前柚姉ちゃんがどこで儀式をやっているのか知っているんだろ?」
「う、うん。そうだけど……」
「だったら、こっそり見つからないように行こうよ。なあ雪音」
「は、はい。冒険しましょうハナちゃん」
子供の頃はよく三人で冒険する事が好きだった。だからこの日も、柚姉ちゃんの儀式をこっそり見に行こうって事になって、私も渋々案内する事にした。
それが私の一番の失敗だったのかもしれない。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「はぁ……はぁ……」
六日目の早朝。私は珍しく夢にうなされ、冷や汗を流しながら目を覚ましていた。
「久しぶりに見たなあの夢……」
隣を見るとまだ翔平は夢の中。彼も見ているのだろうかあの夢を。
(やっぱり忘れないものだもんね……)
翔平と違って、あの時の事をはっきりと覚えてしまっている私は、何度か悪夢にうなされる事がある。あの事故を起こしたキッカケになったのは、ある意味で私だしそれが無ければ柚お姉ちゃんも……。
「どうしたんだハナティア、眠れないのか?」
起こしてしまったのか翔平が声をかけてくる。私はそれにすぐには反応できない。
「ハナティア?」
「私が……いなければ」
「おい、ハナティア!」
「え? しょ、翔平?」
ようやく翔平の声に反応する。
「どうしたんだよお前らしくない」
「私今何を……」
「知らないよ。それより寝なくて大丈夫なのか」
「多分大丈夫。それに寝ちゃうと……」
またあの夢を見そうで怖い。
「じゃあ雪音は全部知ってて、今日まで俺と接していたのか?」
「うん。本人もそれを了承してくれていた。これを知ったら絶対翔平混乱すると思ったから」
だが無常にもハナティアから出てきた言葉は、その事実を肯定するものであった。俺は動揺しながらも、話を続ける。
「じゃあ雪音もあの事故の被害者なのか?」
「うん……」
「どうしてそんな大事な事を……」
信じられなかった。高校生の時に出会ったと思っていた彼女が、まさかずっと前から出会っていたなんて。
(でもそういえば)
いつしかハナティアと俺が一緒にいる事を雪音に見つかった事をサクヤに話した時、『彼女』なら大丈夫だと言っていた。
あの時は何の事なのかサッパリ分からなかったけど、今思えばそれは雪音の事を示していたのかもしれない。
「もしかして儀式を始める前にハナティアが心配していた事って、この事なのか?」
「それもある。ここは翔平にとっては嫌な思い出の場所でもあるから、もしかしたら思い出してしまう可能性があると思ったから」
「それもって事は、他にもあるのか?」
その質問にハナティアは答えない。ただでさえショックだったのに、まだこれ以上何かあるとするなら、一体何が俺を待っているのだろうか。
少しだけ怖くなる。
「さあ今日も儀式やらなきゃいけないんだなら、翔平も集中してね」
「あ、ああ」
おまけに儀式は残り三日も残っている。その間に俺はどんな事を思い出して、どんな気持ちになるのかそれは分からない。
ただ、ハナティアの言う通り、残りの三日で更に失っていた記憶を取り戻す事になろうとは思いもしなかった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ぎしき? 何それお姉ちゃん」
「うーんとね、翔平。とても大切な行事って言えば分かるかな。ほら、小学校でやる運動会と同じくらい大切な事なの」
「運動会? じゃあお母さんとかも一緒なの? だったら僕も」
「ううん。お姉ちゃんと大切な人の二人きりだから、翔平はお留守番してて」
「えー!」
思えば二十年前。翔平のお姉ちゃんが今の私と同じように儀式をする事になったのが、全てのキッカケだった。当時まだ子供だった私は、一応儀式というのがあるというのだけは知っていたけど、詳しくは知らなかった。
「翔平、お姉ちゃんの言う事も聞けないなんて、悪い子」
「うるさいよハナ。同じ年のくせに偉そうにして」
「だって私は偉いもん。お父さんとお母さんはこの国の一番偉い人なんだから」
「ハナは一番偉くないだろ? だから指図しないでよ」
「うう、翔平の分からずや!」
当時まだ私は弱い子で、翔平とよく喧嘩して、その度に泣かされて柚お姉ちゃんの所に行ってた。
そう、あの日も。
「サクヤー、柚お姉ちゃんはどこ?」
「ハナティア様、柚様は只今儀式中の為お会いできません」
「えー、そんなぁ」
数日前から柚お姉ちゃんが儀式に入っていて、会えない事をサクヤから知らされて寂しくなっていた。
「ハナちゃんハナちゃん、ちょっと来てください」
そんな時もう一人の幼馴染の雪音ちゃんが私を呼んだ。そこには翔平もいて、私にある事を伝えた。
「え? こっそり見にいくの?」
「だってハナ、お前柚姉ちゃんがどこで儀式をやっているのか知っているんだろ?」
「う、うん。そうだけど……」
「だったら、こっそり見つからないように行こうよ。なあ雪音」
「は、はい。冒険しましょうハナちゃん」
子供の頃はよく三人で冒険する事が好きだった。だからこの日も、柚姉ちゃんの儀式をこっそり見に行こうって事になって、私も渋々案内する事にした。
それが私の一番の失敗だったのかもしれない。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「はぁ……はぁ……」
六日目の早朝。私は珍しく夢にうなされ、冷や汗を流しながら目を覚ましていた。
「久しぶりに見たなあの夢……」
隣を見るとまだ翔平は夢の中。彼も見ているのだろうかあの夢を。
(やっぱり忘れないものだもんね……)
翔平と違って、あの時の事をはっきりと覚えてしまっている私は、何度か悪夢にうなされる事がある。あの事故を起こしたキッカケになったのは、ある意味で私だしそれが無ければ柚お姉ちゃんも……。
「どうしたんだハナティア、眠れないのか?」
起こしてしまったのか翔平が声をかけてくる。私はそれにすぐには反応できない。
「ハナティア?」
「私が……いなければ」
「おい、ハナティア!」
「え? しょ、翔平?」
ようやく翔平の声に反応する。
「どうしたんだよお前らしくない」
「私今何を……」
「知らないよ。それより寝なくて大丈夫なのか」
「多分大丈夫。それに寝ちゃうと……」
またあの夢を見そうで怖い。
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