(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
するするさらりと美味しいものを・前編
「……最近暑いと思わない?」
はじまりはミルシア女王陛下の、この一言だった。
確かにもう夏だからな、なんてことを言おうとしたけれど、よく考えたら『季節』という概念はあの世界にあるんだろうか。あまり考えたことは無かったが、そう言うということは、季節という概念自体はあるのだろう。
「でも、それはしかたないことだと思いますけどね? だからほら、みんな涼みにきたり冷たいものを食べたりするんだと思いますよ」
「ほっほっほ、その通りじゃよ。姫君さん」
ヒリュウさんは暑いから、というよりかは完全に習慣付けられてしまっているからだろうけれど。
「うーん、そんなものかしらね。まあとにかく! 最近私の国も暑くなってきて参っちゃってるのよねー。意外と湿気っててさ、あの国って。あなたは知っているかもしれないけれど。だから、やる気が出なくなることがあるのよ。でも、それを何とか乗り切らないといけないのがリーダーとしての務めで……」
「……何が言いたいんです?」
「もう! 話を切らないでもらえるかしら! ……簡単に言えば、私の食生活ってたとえ気候が暑くなってこようが変わらないってこと。要するに金にものを言わせた贅沢品だらけってことね」
ここで食っているものも金にものを言わせているような気がしないでもないが。
「要は、暑い時でもしっかり食べられるものが食べたいんだろう?」
そう言って厨房から姿を出したのはメリューさんだった。
ドラゴンメイド喫茶『ボルケイノ』の総料理人でありメイドである彼女はどんな料理だって作ることが出来る。だからたまにこんな感じに無茶振りをされるわけだが……。
「ええ、その通りよ。……作ってくれるわね? メリュー」
「もちろん」
ミルシア女王陛下の言葉に頷いて、笑みを湛えるメリューさん。
「料理人はお客さんを喜ばせることを生き甲斐としていますから」
そう言ってメリューさんは踵を返すと、厨房へと消えていった。
◇◇◇
「……どうすんですか、メリューさん」
僕は少し遅れて厨房に向かい、メリューさんに言った。
メリューさんは僕の発言を予想していたのか、不気味な笑みを浮かべながら、
「あら、何のことかしら?」
「何のことかしら、じゃないですよ。ミルシア女王陛下の『無茶振り』の話です」
「ああ、それのことか」
さも俺が言った言葉が『当たり前』のような話をしていたような体で、メリューさんはゆっくりと頷いた。
「それなら簡単だよ。夏に食べたい、するすると、さらさらと食べられるものだ。それならベストなものがある。必要な物を、必要な時に、必要なだけ用意できるぞ」
なんかどこかの企業で聞いたことがあるような、そんな話を聞きながら俺はとにかく納得せざるを得なかった。メリューさんが何を考えているかはさっぱり分からなかったけれど、いずれにせよ、メリューさんが何か考えている時は大抵成功する。そういうものだ。
はじまりはミルシア女王陛下の、この一言だった。
確かにもう夏だからな、なんてことを言おうとしたけれど、よく考えたら『季節』という概念はあの世界にあるんだろうか。あまり考えたことは無かったが、そう言うということは、季節という概念自体はあるのだろう。
「でも、それはしかたないことだと思いますけどね? だからほら、みんな涼みにきたり冷たいものを食べたりするんだと思いますよ」
「ほっほっほ、その通りじゃよ。姫君さん」
ヒリュウさんは暑いから、というよりかは完全に習慣付けられてしまっているからだろうけれど。
「うーん、そんなものかしらね。まあとにかく! 最近私の国も暑くなってきて参っちゃってるのよねー。意外と湿気っててさ、あの国って。あなたは知っているかもしれないけれど。だから、やる気が出なくなることがあるのよ。でも、それを何とか乗り切らないといけないのがリーダーとしての務めで……」
「……何が言いたいんです?」
「もう! 話を切らないでもらえるかしら! ……簡単に言えば、私の食生活ってたとえ気候が暑くなってこようが変わらないってこと。要するに金にものを言わせた贅沢品だらけってことね」
ここで食っているものも金にものを言わせているような気がしないでもないが。
「要は、暑い時でもしっかり食べられるものが食べたいんだろう?」
そう言って厨房から姿を出したのはメリューさんだった。
ドラゴンメイド喫茶『ボルケイノ』の総料理人でありメイドである彼女はどんな料理だって作ることが出来る。だからたまにこんな感じに無茶振りをされるわけだが……。
「ええ、その通りよ。……作ってくれるわね? メリュー」
「もちろん」
ミルシア女王陛下の言葉に頷いて、笑みを湛えるメリューさん。
「料理人はお客さんを喜ばせることを生き甲斐としていますから」
そう言ってメリューさんは踵を返すと、厨房へと消えていった。
◇◇◇
「……どうすんですか、メリューさん」
僕は少し遅れて厨房に向かい、メリューさんに言った。
メリューさんは僕の発言を予想していたのか、不気味な笑みを浮かべながら、
「あら、何のことかしら?」
「何のことかしら、じゃないですよ。ミルシア女王陛下の『無茶振り』の話です」
「ああ、それのことか」
さも俺が言った言葉が『当たり前』のような話をしていたような体で、メリューさんはゆっくりと頷いた。
「それなら簡単だよ。夏に食べたい、するすると、さらさらと食べられるものだ。それならベストなものがある。必要な物を、必要な時に、必要なだけ用意できるぞ」
なんかどこかの企業で聞いたことがあるような、そんな話を聞きながら俺はとにかく納得せざるを得なかった。メリューさんが何を考えているかはさっぱり分からなかったけれど、いずれにせよ、メリューさんが何か考えている時は大抵成功する。そういうものだ。
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