(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
魔女学校からの刺客・1
ドラゴンメイド喫茶、ボルケイノ。
その入り口は様々な世界の様々な場所に繋がっており、それを介して様々な世界のキャラクターが登場する、とても不思議な喫茶店だ。
そして俺はそのドラゴンメイド喫茶で雇われマスターをしている。別に大変かといわれるとそうでもなくて、ただ暇をしている日が最近多いわけだけれど。
「ねえ、ケイタ。今日は誰も来ないね。ヒリュウさんも朝イチに来てもう帰っちゃったし……」
カウンターには俺のほかにリーサが居た。リーサはいつもほかのお客さんの注文を聞いたり(注文といってもメニューは一種類しかないから大半はクレーム処理になるが)、メニューを運んだりといろいろ行う。ウェイトレス的ななにかだ。
リーサは掃除をしていた。誰も来ないから、何もやることがない。そうリーサは言っていた。だったら今日くらい休みを取ればよかったのに、と思ったがリーサ曰く「普段掃除出来ていないところも出来るからちょうどいい」とのこと。
なんというか、女心は解らない。
カランコロン、と鈴の音が鳴ったのはちょうどその時だった。
ドアが開き、入ってきたのは三角帽を被った黒いローブの女性だった。
「……いらっしゃいませ」
俺はいつもの営業スマイルで声をかける。
カウンターに腰かけた女性は、リーサを見るや否や声をかけた。
「もしやあなた……リーサではありませんか?」
それを聞いたリーサは目を丸くして、黒いローブの女性に訊ねる。
「まさか……、アルフィア先生?」
先生? その言葉を聞いて、俺は首を傾げる。
そしてアルフィアと呼ばれた女性は三角帽を外した。
クリーム色の長い髪だった。白磁のような肌で、目鼻立ちしているその顔は、モデルか何かと言われても造作ないだろう。
そのアルフィアはリーサに目線を合わせ、
「長らく探していましたが、まさかここに居たとは。……探しましたよ、世界最高の魔女、ミカサ・エルフェイザの最後の弟子。あなたがミカサ・エルフェイザの弟子になると言って魔女学校を飛び出て、もうどれくらい経過していたでしょうか。ほんとうに弟子になったときは驚きましたが」
それを聞いてリーサは頷きつつ、
「別にそれがどうしたというのですか。もう、あの魔女学校と私は縁を切ったはず。だから、別にあなたがやってくる必要は……。まさか、私を魔女学校に連れ戻そうと思っているとか?」
それを聞いてアルフィアはこくりと頷いた。
「……ええ、その通りですよ。あなたをここから出して、学校へ帰還させる。そのために私はここにやってきたのです」
「いやです! 何でそんなことを。それはつまり、魔女学校からの人材流出を阻止するために、あなたたちが適当に考えただけのことでしょう!」
「……そうね。それは言えます。ですが、一度でいいのです。もどってはいただけないでしょうか」
「戻ったら、二度と私は外の世界に出ることは出来ない。……そうよね?」
「……、」
その言葉に、アルフィアは何も言わなかった。
それを傍で見ていたメリューさんは、俺に声をかける。それもとても小さい声で。ひそひそ声と言ってもいいくらいのトーンだった。
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