(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
勇者の晩餐・中編
「お待たせしました」
俺はそれをカウンターに置いた。正確に言えば、その甲冑を着た少年の前、といったところか。まあ、別にそんな細かいなことは言わなくていいだろう。
それを見た少年は目を丸くしていたが、その時の俺はあまり気にしなかった。
そうして、わなわなとしていた少年はゆっくりとスプーンを手に取って、そのシチューを啜る。
そして少年は――ゆっくりと俺に問いかけた。
「……なあ、マスター。この料理を作ったのは……いったい誰だ?」
「誰、って……。ここのメイドですよ。ただまあ、その人が食べたいものの味を完璧に再現出来るだけで」
言っていることは決して間違っていない。
だからこそ、聞いた人間はそれについて違和感を抱くに違いなかった。
「そんな……それだけで、信じられるはずがあるかっ!」
激昂するのにも、何か理由があるのだろうか。
机を叩いて、文句を言いたそうにしている少年。
はっきり言って、クレームはお断りだ。そう思って俺はおかえり願おうと思った。
ちょうど、その時だった。
「お客さん。そういう風に対処出来なくなって困る気持ちも解るけれど、お店の設備に八つ当たりしないでくれないかねえ。それが壊れて修理するのはこっちなんだからさ」
キッチンの向こうから、メリューさんがやってきた。
メリューさんを見てさらに少年は驚く。まあ、普通に考えればメリューさんには角が生えているから、人間じゃなくて魔物か何かと思い込む人も多くないだろう。
剣を手に取って、今にでも斬りかかりそうな目つきをする少年を見て、メリューさんは溜息を吐く。
「リーサ」
短くその名を言うと、少年の手から剣が離れた。
「な……っ!?」
「ごめんなさいねえ、こんな手荒な真似をして悪いとは思っているんだけれどさ。でも、先に手を出したのはそちらだから、それくらい理解してもらってもいいと思うのだけれど。いずれにせよ、この店はあくまで喫茶店。自由勝手にバトルなんて始めてもらっちゃ困るんだよね」
メリューさんは鋭い目つきで少年を睨み付けた。
そしてもう少年には戦意など見られなかった。
「……済まなかった。つい動揺してしまって……。だって、これは……」
「あなたの母親が作ったシチュー、そのものだったからでしょう?」
少年が言おうとした言葉に、メリューさんが続けた。
「そう、そうだ……」
「私にはお客さんが今食べたいメニューが解る。だからこそ、見えたのよ。あなたが食べたいものが……、あなたの母親が作るシチューだって」
俺はそれをカウンターに置いた。正確に言えば、その甲冑を着た少年の前、といったところか。まあ、別にそんな細かいなことは言わなくていいだろう。
それを見た少年は目を丸くしていたが、その時の俺はあまり気にしなかった。
そうして、わなわなとしていた少年はゆっくりとスプーンを手に取って、そのシチューを啜る。
そして少年は――ゆっくりと俺に問いかけた。
「……なあ、マスター。この料理を作ったのは……いったい誰だ?」
「誰、って……。ここのメイドですよ。ただまあ、その人が食べたいものの味を完璧に再現出来るだけで」
言っていることは決して間違っていない。
だからこそ、聞いた人間はそれについて違和感を抱くに違いなかった。
「そんな……それだけで、信じられるはずがあるかっ!」
激昂するのにも、何か理由があるのだろうか。
机を叩いて、文句を言いたそうにしている少年。
はっきり言って、クレームはお断りだ。そう思って俺はおかえり願おうと思った。
ちょうど、その時だった。
「お客さん。そういう風に対処出来なくなって困る気持ちも解るけれど、お店の設備に八つ当たりしないでくれないかねえ。それが壊れて修理するのはこっちなんだからさ」
キッチンの向こうから、メリューさんがやってきた。
メリューさんを見てさらに少年は驚く。まあ、普通に考えればメリューさんには角が生えているから、人間じゃなくて魔物か何かと思い込む人も多くないだろう。
剣を手に取って、今にでも斬りかかりそうな目つきをする少年を見て、メリューさんは溜息を吐く。
「リーサ」
短くその名を言うと、少年の手から剣が離れた。
「な……っ!?」
「ごめんなさいねえ、こんな手荒な真似をして悪いとは思っているんだけれどさ。でも、先に手を出したのはそちらだから、それくらい理解してもらってもいいと思うのだけれど。いずれにせよ、この店はあくまで喫茶店。自由勝手にバトルなんて始めてもらっちゃ困るんだよね」
メリューさんは鋭い目つきで少年を睨み付けた。
そしてもう少年には戦意など見られなかった。
「……済まなかった。つい動揺してしまって……。だって、これは……」
「あなたの母親が作ったシチュー、そのものだったからでしょう?」
少年が言おうとした言葉に、メリューさんが続けた。
「そう、そうだ……」
「私にはお客さんが今食べたいメニューが解る。だからこそ、見えたのよ。あなたが食べたいものが……、あなたの母親が作るシチューだって」
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