(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
食わず嫌いを何とかしよう・結
ガパオライスを持っていったところ、姉の方はまた怪訝そうな表情を浮かべた。
「……まさか対策出来ずに手詰まりで、前と同じものを持ってきました、なんて言わないわよね? だったらその場で帰るわよ」
「御心配なく。きちんと対策されております」
たぶん。メリューさんがきちんとやっていれば、の話だけれど。そんなこと言ったらそれこそ逆鱗に触れてしまうので、言えるはずが無かったが。
それを聞いた女性は、不安な顔を浮かべたまま、恐る恐るスプーンで掬って、それを口に入れた。
目を丸くして驚いたのは、それから少ししてのことだった。
「う、美味い! 何よ、この美味しさっ‼︎ こんな美味しい食べ物があるなんてっ‼︎」
「だから言ったじゃない、姉さん。こんな美味しい料理を食べられないなんて、好き嫌いが多い人は大変だねって」
どうやら普段から姉はこんな感じで言われているらしい。……しかし、姉も姉でそれを矯正しようとは思わなかったのだろうか? まあ、案外好き嫌いをきちんと一人で治す人はあまり居ないと聞いたことがあるし、そういうものなのかもしれないけれど。
それはそれとして。
姉はこの料理が食べられるものだと解ってから、がつがつと食べている。何というか、口調から何から男らしい。もしかしたら姉だから頼られる女性にでもなりたかったのだろうか。それにしては好き嫌いが多いようだけれど。
まあ、食事を無事に楽しく食べられるようになったのならば、それはそれで有難いことだ。もし、あれでも食べられなくて金は払わないなどと言いだしたらどうしようか、とヒヤヒヤしていたところだったし。
少しして。
姉と妹がほぼ同時に食べ終えて、
「ごちそうさまでした!」
飛びっきりの笑顔で手を合わせていた。
そのタイミングで俺はコーヒーを二人に差し出す。可能性のことを考えて砂糖とミルクを気持ち多めに渡す。あの姉のことだ。もしかしたら甘党かもしれない。
そんなことを思っていたら案の定姉は砂糖を何と五つも入れた。ちょっと待て、さすがに溶けないぞ。最悪角砂糖を噛み砕くレベルの量だぞ、それって。
そんなことを考えていたら、やっぱり飲んだ時に溶けきらなかった角砂糖が口の中に入り込んだのかガリガリと角砂糖を噛み砕く音が聞こえた。
対して妹の方は二つという常識的な値を選択し、少しミルクを注いでスプーンで掻き回していた。姉の行動を見て、照れ臭そうに笑みを浮かべると、
「すいません、いつもこうなんです。決して、ここのコーヒーが美味しくないとか、そういうことではありませんから」
知っていますよ、だってあなたたち初回じゃないですか。初回でここのコーヒーの味を知ることが出来るってそれなりのレアケースだし。
そんなことを言うことはなく、ただいつものように笑みを浮かべて頷いていると、
「よし! コーヒーも飲んだし、そろそろ次の街に向かうか! ありがとうな、コーヒー。美味かったぜ!」
ほんとうにコーヒーの味を味わったのか解らないが、彼女なりにコーヒーを味わったのならば、それはそれでいいことだ。
「え、ちょっと……、姉さん、待ってよ! まだ私がコーヒーを飲み終わっていないのに……!」
そして、妹の方も大急ぎでコーヒーを飲み干すと、ぴったりのお金を置いてそのまま店を出て行った。もちろん、最後に忘れ物チェックもしていって。
「……なんだか、騒がしい客だったなあ」
まるで台風が何かのようだった、そんな二人の客を見送りながら、俺は誰にも聞こえないくらい小さな声でそう言ったのだった。
「……まさか対策出来ずに手詰まりで、前と同じものを持ってきました、なんて言わないわよね? だったらその場で帰るわよ」
「御心配なく。きちんと対策されております」
たぶん。メリューさんがきちんとやっていれば、の話だけれど。そんなこと言ったらそれこそ逆鱗に触れてしまうので、言えるはずが無かったが。
それを聞いた女性は、不安な顔を浮かべたまま、恐る恐るスプーンで掬って、それを口に入れた。
目を丸くして驚いたのは、それから少ししてのことだった。
「う、美味い! 何よ、この美味しさっ‼︎ こんな美味しい食べ物があるなんてっ‼︎」
「だから言ったじゃない、姉さん。こんな美味しい料理を食べられないなんて、好き嫌いが多い人は大変だねって」
どうやら普段から姉はこんな感じで言われているらしい。……しかし、姉も姉でそれを矯正しようとは思わなかったのだろうか? まあ、案外好き嫌いをきちんと一人で治す人はあまり居ないと聞いたことがあるし、そういうものなのかもしれないけれど。
それはそれとして。
姉はこの料理が食べられるものだと解ってから、がつがつと食べている。何というか、口調から何から男らしい。もしかしたら姉だから頼られる女性にでもなりたかったのだろうか。それにしては好き嫌いが多いようだけれど。
まあ、食事を無事に楽しく食べられるようになったのならば、それはそれで有難いことだ。もし、あれでも食べられなくて金は払わないなどと言いだしたらどうしようか、とヒヤヒヤしていたところだったし。
少しして。
姉と妹がほぼ同時に食べ終えて、
「ごちそうさまでした!」
飛びっきりの笑顔で手を合わせていた。
そのタイミングで俺はコーヒーを二人に差し出す。可能性のことを考えて砂糖とミルクを気持ち多めに渡す。あの姉のことだ。もしかしたら甘党かもしれない。
そんなことを思っていたら案の定姉は砂糖を何と五つも入れた。ちょっと待て、さすがに溶けないぞ。最悪角砂糖を噛み砕くレベルの量だぞ、それって。
そんなことを考えていたら、やっぱり飲んだ時に溶けきらなかった角砂糖が口の中に入り込んだのかガリガリと角砂糖を噛み砕く音が聞こえた。
対して妹の方は二つという常識的な値を選択し、少しミルクを注いでスプーンで掻き回していた。姉の行動を見て、照れ臭そうに笑みを浮かべると、
「すいません、いつもこうなんです。決して、ここのコーヒーが美味しくないとか、そういうことではありませんから」
知っていますよ、だってあなたたち初回じゃないですか。初回でここのコーヒーの味を知ることが出来るってそれなりのレアケースだし。
そんなことを言うことはなく、ただいつものように笑みを浮かべて頷いていると、
「よし! コーヒーも飲んだし、そろそろ次の街に向かうか! ありがとうな、コーヒー。美味かったぜ!」
ほんとうにコーヒーの味を味わったのか解らないが、彼女なりにコーヒーを味わったのならば、それはそれでいいことだ。
「え、ちょっと……、姉さん、待ってよ! まだ私がコーヒーを飲み終わっていないのに……!」
そして、妹の方も大急ぎでコーヒーを飲み干すと、ぴったりのお金を置いてそのまま店を出て行った。もちろん、最後に忘れ物チェックもしていって。
「……なんだか、騒がしい客だったなあ」
まるで台風が何かのようだった、そんな二人の客を見送りながら、俺は誰にも聞こえないくらい小さな声でそう言ったのだった。
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