転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~

夜州

第二十八話 三人への説明

 
 リザベートは気にした様子もなく、カインが戻ってきたことに嬉しそうな表情をする。
 そして、その姿に絶句するテレスティアたち。

「か、カイン様……も、もしかして、もう女性を囲って……」

 テレスティアの言葉とともに三人の冷たい視線をカインに送る。

「いや、これは……。あ、シルク! シルクは知っているよね……?」

 シルクは、少し悩んだ様子をして、それから少女の顔を見て、驚きの表情をした。

「カインくん、も、もしかして……その少女って……あの時の……?」

 シルクの言葉にカインは頷いた。

「ちょっと、シルク。二人だけずるい! 私にも教えてください」
「私も知りたいです……」

 シルクに詰め寄る二人にカインは諦めて大きなため息をつく。

「今から話すから落ち着いて。リザベートも隣に座ってくれるかな」
「うん……? なんじゃ。まあよかろう」

 カインの隣に座ったリザベートは三人に気にした様子もなく、テーブルに置かれたお菓子に手を付ける。

「相変わらず、この屋敷で出る菓子は美味いのぉ」

 ニコニコとしながらお菓子を食べるリザベートを横目にカインは口を開く。

「実はね、まぁこれを見てもらうのが一番早いんだけど……」

 カインはアイテムボックスからお面を一つテーブルに置いた。

「……これって……? どこかで見覚えが……。あっ! もしかして……」
「もしかしてあの時の……」

 テレスティアとリルターナの二人は察したようだった。

「そうそう、あのイルスティン共和国の闘技場で出てきた謎の仮面!」

 シルクは面白そうに笑みを浮かべた。

「では、隣に座っている女性はもしかして……」
「うん、そう。リザベート、一度姿を見せてくれるかな?」
「仕方ないのぉ。その三人はカインが信用してそうだしの……」

 カインの言葉にリザベートは頷き、そして魔法を呟いた。
 その瞬間、リザベートは一度光り、角を五本生やしている元の姿に戻った。

「やはりあの時の魔族の……」

 リザベートの正体を知って、テレスティアとリルターナの二人は少しだけ緊張した。
 カインは他にも何人も魔族の知り合いがおり、まったくの偏見はない。
 しかしながら、この世界ではそうではない。
 魔族の一人一人がとてつもない力を持っていて、一人によって街が滅ぼされたこともあると言い伝えられていた。

「そんなに警戒しなくてもよい。妾は特に人間を敵視しておらんしのぉ。特にカインは友達だしの」

 ケラケラを笑いながら、再度魔法を唱え、人間と変わらない姿に戻りお菓子を食べ始める。

「カイン様、どうして彼女を助けたのか教えてもらえますか……?」

 テレスティアは一度大きく深呼吸しカインに尋ねる。

「僕は魔族に何人も知り合いがいるから、最初は助けたい気持ちだけで闘技場あそこに飛び込んだんだ。それで――」

 カインはリザベートを保護し、この街へ連れてきたことを説明した。

「そして、あとから知ったことだけど、リザベートは魔族の国の皇女様でもあるみたいなんだ……」

 カインの言葉にテレスティア達三人の表情は一気に険しくなる。

「……もしかして、あの時、リザベートさんがそのままあの冒険者の手にかかっていたら……」
「うん、多分、人間と魔族は――全面戦争になるかもしれない」

 カインの言葉に三人は喉を鳴らした。
 人間対人間ではない。魔族対人間。一人で街を滅ぼせるような魔族が幾人も送り込まれたら、この王国を含め大混乱になることが容易に想像できた。
 直接手をかけたイルスティン共和国を含め、近隣諸国も攻めこまれるだろう。
 カインの行動はその場しのぎだったのだが、結果として戦争を避けられたことになる。

「わかりました。では、エスフォート王国の王族として、リザベート様を王城で正式に保護いたしましょう」

 テレスティアは立ち上がり、力強く手を握りそう宣言する。

「うん? 妾はここから動くつもりもないぞ? ここはカインの住処であろう……。その前にお主も王族なのかや?」

 首を傾げるリザベートに、三人は自己紹介していないことに気づく。

「挨拶をまだしていませんでしたね。カイン様がいるこのエスフォート王国の第三王女である、テレスティア・テラ・エスフォートでございます。そしてカイン様の婚約者・・・でもあります」
「次は私ね。同じく、この国の公爵の次女、シルク・フォン・サンタナです。そしてカイン君の婚約者でもあります」
「えっと……。隣の国、バイサス帝国の第6皇女、リルターナ・ヴァン・バイサスです。カイン様とは……」

 テレスティアは婚約者の部分を強調し、シルクは笑顔で。そしてリルターナは少しだけ緊張しながら自己紹介をしていく。
 リザベートはその自己紹介にほぅと納得し、カインを横目で見てから笑みを浮かべる。

三人・・ともカインのことを好いておるのかや。しかも二人は婚約者とは。それは妾も自己紹介しないとのぉ」

 リザベートは立ち上がり、一度咳払いをする。

「妾は〝インベスト魔皇国〟の皇女、リザベート・インベストじゃ。先見のため、この世界を旅していたのじゃがのぉ……。まぁ色々あって奴隷となり、カインに助けられて今はこうしておる」

 自己紹介を終えると席につき、またお菓子に手をつけていく。

「一応、ここでゆっくりしてもらってから、リザベートの国に送っていくつもり」
「そうじゃ、本当ならこのままカインを伴侶としてもらいたいくらいじゃがのぉ……妾にも役目があるため、一度戻ら得ねばならぬのじゃ」

 しかし、今の一言に気づかない三人ではない。

「カイン様……もしかして、また婚約者を増やすおつもりですか……?」
「カインくん、さすがにそれはね……。国際問題になるよ」
「――私もいつか……」

 三人の言葉にカインは思わず苦笑する。
 リザベートは確かに美しい少女だが、魔族であり、皇女でもある。一介の人間の貴族の意思で婚姻を結ぶなど皆無である。しかもカインにはすでに三人、いや聖女を含めると四人の婚約者がいるのだ。

 その後も三人を納得させるためにカインは必死に説明をする。
 
 カインが解放されたのは、食事の準備によってコランが呼びに来たことで、やっと説明を終えることができた。
 必死に説明する横では、無邪気にリザベートはお菓子を楽しんでいた。






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コメント

  • rain

    リザさん…
    もしかしなくても天然?(ノ´∀`*)

    5
  • Kまる

    ティファーナってさ…「あっと言う間にすぐに沸く!ティファール!」っぽくない?

    5
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