転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~
第四話 リルターナのネックレス
説教の終わったカインたちは夕食の時間となり、生徒たちを含めホールに集まった。
そして、全員揃ってから食事をする場所へと従者が案内をする。
扉を開けるとーー。
一列に並んだ料理が多数並び、丸いテーブルを囲むように椅子が配置されている。
前世の知識を活かしたルーラの意見であろう、ビュッフェスタイルになっていた。確かに若い生徒たちにとっては好きな物を取り分けられ、満足できる。
サラダから肉料理、デザートまで色とりどりの料理が並んでいる。
「――すごい……」
「本当……どれも美味しそう」
従者が入室した生徒や教師をテーブルに案内する。
カインと同じテーブルには、やはりテレスティア、シルク、リルターナが同じ席となった。
そして、全員が座った事を確認すると、従者が食前のドリンクを配っていく。そしてアレクが立ち上がった。
「皆さん、ようこそドリントルへ。領主も一応おりますが、今日は一生徒として考えていただければと思います。皆さんも驚いたと思われたでしょうが、皆さんが好きな料理を取れるようにこのようなスタイルにしております。ご自分で食べたい物をお好きなように取っていただければと思います。それでは乾杯」
「「「「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」」」」」
生徒たちには果実ジュース、教師たちにはワインが配られている。
しかも王都でも貴重で、入手は予約待ちと言われているガラス細工のグラスが並べられ、一つ一つの食器も洗練された物である。
平民もいるが、大手の商会の子息などであり、今回参加した生徒たちの殆どは貴族の子息である。
乾杯して飲んだドリンクよりも、そのグラスに見惚れている令嬢も多かった。
そして、生徒たちは並べられた色とりどりの料理を見て、思うがまま皿に乗せて自分のテーブルに持ち帰る。
カインも皆を促し一緒に好きな物を取り分けていく。
「本当にどれも美味しそうで悩んでしまいますわ……」
「本当だね、こんなに食事が並ぶなんて王城のパーティーくらいじゃない?」
「帝国でもこのような食事スタイルは初めてです」
テレスティアたち三人も楽しそうに好きな料理を取り分けてもらう。
料理の後ろにはメイドが待機しており、欲しい物を告げると綺麗に取り分けてくれるのだ。
「美味しい……出来立てのように温かいし」
他のテーブルからも「美味しい」との声が上がる。
教師たちも出されたワインに舌鼓を打ち、気持ちよく食事を楽しんでいる。
メイドたちも食べ終わって、再度料理を貰いにいく間に空いた皿を下げていく。
カインがふと目をやると、ローラも皿を下げるなどの仕事をしており、思わず頬を緩ませる。
食事と会話を楽しんでいたが、女生徒たちが一番喜んでいたのはデザートであった。
ケーキとフルーツが多岐に渡り並んでいる。ひとつひとつは小さくカットされている。
ドリントルに保管されている砂糖を十分に使っているのだろう。
(ルーラの入れ知恵だな……僕ならこんなに出せないし)
カインは隅で待機しているルーラと視線が合うと、それに気づいてかにこりと笑みを浮かべた。
しかもこっそりと親指を立てて「どうよ?」と言っているようだった。
思わずカインは苦笑するが、テレスティアたちも喜んでいる様子なので軽く頷いた。
食事も済み、教師から次の日の説明が終わると、生徒たち各自部屋に戻っていく。
この後は浴場だとアレクから説明がされ、男女に別れメイドが案内し、使い方を説明していく。
そして浴場でも驚きの声が上がる。
カインとルーラの前世の趣向が取り入れられた浴場である。
半端な物ではなかった。切りそろえられたタイルが敷かれ、広々とした洗い場、湯船と。そして露天風呂まで用意されている。
それを最初見たときは、アレクから「本当に……頼むから自重してくれ」と言われた程だった。
湯船に浸かった後は、各自自由となっており、充てがわれた部屋でゆっくりする生徒や、早々に床につく者、好きにしている。
教師たちはまだ飲み足りないようで、アレクが対応をして別室で飲み直す事になっていた。
アレクも学園の卒業生であり、今回同行した教師にも知り合いがおり、昔話に花を咲かせていた。
そしてカインの寝室でテレスティアたち三人も寛いでいる。
ダルメシアが紅茶を用意し、「ごゆっくりとお寛ぎください」といい部屋を退出する。
「まさか、研修の最初からこんな事になるなんて、後が思いやられるわ」
「本当だよね。去年までは宿だって言ってたし。まさか城に泊まるなんて……ね?」
「まさか、城まで建てているなんて誰も思わないよね……」
「本当は宿の予定だったんだよ。こんな事になるなんて僕も知らなかったし……」
宿に泊まる予定とアレクから聞かされていたが、カインもまさかこんな歓待を用意しているとは思ってもいなかった。
ため息をつき紅茶を口にする。
「もう、卒業したらすぐにでも結婚式をあげて、ここに移り住みたいですわ……ねえカイン様?」
「うん、ここに住むなら卒業したら直ぐにでもいいよ」
陽気に言うテレスティアとシルクだが、リルターナの顔色は少し暗い。
「……一番先に知り合ったのは私なのに……」
小声で言うリルターナであったが、カインの耳には届いていた。
「リル、どうしたの? 具合が悪い? 顔色が少し暗いけど……」
カインの言葉にリルターナはネックレスの石を握りしめ首を横に振る
しかし握りしめているネックレスの石に気づき、シルクが声をかける。
「そういえば、リル、可愛いネックレスしてるよね。いつも一緒のだし。お風呂でも外さなかったくらい大事にしてるんだね。ちょっと見せてよ」
「こ、これは……」
握りしめいた手を緩めると、髪の色と似合っている蒼色の石が見える。
「綺麗な石……いつもしているから大事にしているんだね」
「……うん」
「もしかして……リルの好きな人から貰ったとか?」
シルクの何気ない言葉に、リルターナの顔は一気に赤くなっていく。
恋話と聞けば、テレスティアもシルクも一気に盛り上がる。
「リル、そんな人がいたのですね」
「ねぇねぇ、どんな人なの? 教えてよ」
リルターナは、最初嫌々であったが、貰った時の事を少しずつ話し出す。
とある街に視察に行った時に、市場でばったり少年と知り合った事。そしてその時にお互いのネックレスを選びあった事。
話が進むにつれ、盛り上がるテレスティアとシルクを他所に、カインは顔を引きつらせていく。
(なんか聞き覚えが……、しかもあのネックレス……何故か見覚えがある。どこでだろう……)
ふとカインは自分がしているネックレスの石を掴む。
(あれ……もしかしてさっきの話って……)
思わず自分のネックレスの石を見下ろす。そして自分の過去を思い出していく。
記憶のピースが一つ一つ埋まっていく。
「そんな素敵な人と会ってたのね。それでそれで……その人とは……」
盛り上がる二人と裏腹に、リルターナの顔色は一気に暗くなる。
その顔色を察してか、二人はトーンダウンし「ごめん」と伝えた。
そこにカインは、真面目な顔でリルターナに話しかけた。
「――――リル、もしかして……ラメスタの市場で会った……あの時のリル……?」
カインの言葉に、リルターナは真っ赤になった顔でカインを見つめ――――無言で頷いた。
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